大統領室が、今度は『米韓首脳会談で、外国為替関連での協力について議論する』と発表しました。大統領室は通貨スワップについても、『中央銀行の仕事なので首脳会談で決まるものではないが、首脳同士で話した後、中央銀行が締結することもある』と話し、そうなる可能性もあると示唆しました。ソース記事は東亜日報となります。いままで韓国銀行(中央銀行)は、通貨スワップが必要な状況ではないというスタンスでした。また、もし締結できても、為替レートの安定には大きな影響はない、とも。今回の大統領室側の発言は、直接的に言及してはいないものの、いままでの中央銀行側のスタンスとはかなり差があります。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。
<<・・大統領室は16日、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の国連総会参加を契機に開かれる韓米首脳会談で、通貨スワップについて議論がなされる可能性について「共通関心事であるため、自然な議論があると予想する」と明らかにした。チェサンモク大統領経済首席秘書官は16日のブリーフィングで、「今回の韓米首脳会談で、通話スワップが議論されるか、または締結される可能性はあるのか」という質問に、「首脳会談でどのように議論されるかは、首脳同士で会ってみなければわからない事案」と答えた・・
・・続いて「ただ、5月の韓米首脳会談で、外国為替市場と関連して緊密に協議することで首脳間で言葉を交わし、財務長官会談もあったので、共通の関心事である」とし、議論する可能性を示唆した。ただし、大統領室は、通貨スワップが正式な議題として採択されたわけではないとした。関係者は「そんな議論は中央銀行で行うものとだ」としながらも「でも、首脳同士で包括的議論をして、中央銀行同士で後で行うこともできる」と可能性をあけておいた。また、この日、ユン大統領の米国・カナダ訪問について、セールス外交、先端産業のサプライチェーン強化、科学技術と未来成長産業の協力基盤構築などに集中していると明らかにした(東亜日報)・・>>
今回の会談で、インフレ抑止法による電気車補助金、半導体応対関連法による中国への投資関連(支援金を回収するという内容もあり、サムスンなどか含まれる可能性が提起されています)などでも、相応の議論を行うと言われています。実際に議題になるかどうかはわかりませんが、バイデン政権としてはインフレ抑止法はかなりの成果とされています。ユン大統領に、『もちろん協議しますとも』以上の話が引き出せるのでしょうか。しかも、そこに米韓通貨スワップまで、『言うべきこと』が増えたわけです。米国からすると、いまは金利を相次いで引き上げるなど、いわゆる緊縮モードに入っているので、これといった利点が無いのもあります。
それに先も書きましたが、今回の発言は、いままでの中央銀行側の発言とは路線が違います。以下、時事ジャーナルの記事ですが、つい先月(8月25日)にも、同じ発言がありました。米韓通貨スワップで為替レート対応は思ったほど影響がなく、なにより、そこまでする理由がないというのです。一部のメディアはこの発言を『できないのではなく、しないでいるだけ』としましたが、また一部のメディアは、『本当はできないだけではないのか』と指摘したりしました。以下、同紙から引用してみます。
<<・・李昌鏞(イ・チャンヨン)韓国銀行総裁は、韓米通貨スワップ締結では、現在の通貨安の流れを変えることはできないという立場を出した。李総裁は25日、韓銀金融通貨委員会定例会の直後に開かれた記者懇談会で、「そういう措置が必要だという話もあるが、米国との常時通貨スワップをしている英国、ユーロ圏、カナダともに、全部通貨価値が安くなっている」とし、「流動性や信用に対する備えにはなるかもしれないが、現在の状況では、米韓通貨スワップでウォン・ドル為替レートに対応するのは容易ではない」と話した。
イ総裁はまた、最近の為替レート上昇(※韓国側の表現で『通貨安』のことです)が、1997年や2008年のような水準ではないと、線を引いた。彼は「最近の為替レートが変動する現象で、まるで外国為替市場の流動性、信用度、外国為替保有高が、1997年、2008年のようになるのではないかという懸念も出ているようだ。しかし、我が国の為替レートだけが動いているわけではない。他の主要な通貨の為替レートも同じく動いている状況」と付け加えた。また、李総裁は外国為替保有高も問題がないという立場を明らかにした。彼は「国際通貨基金(IMF)流動性基準だと外貨保有高がまだ少ないという指摘もあるが、私こそがIMFから来た(※勤務していた)」とし、「韓国の外貨保有高は世界9位であり、外国為替保有が大きい国に、そのような基準は大して意味がない」とも言った(時事ジャーナル)・・>>
G9(?)だから問題ない、と話したわけですが、それから約3週間後、米韓首脳会談の議題として同じ件が出てきたわけです。これは、中央銀行側の発言がどうとかより、大統領室側と中央銀行側の事前調整ができていないという意味ではないでしょうか。どうせ会談内容が詳しく公開されることはないだろうし、どんな話が行き来するかは分かりません。
しかし、どんな話し合いがあったとしても、説得力を発揮できるのでしょうか。国連総会とほぼ同じタイミングで、連邦公開市場委員会(FOMC)が予定されています。その場で、米国連邦準備制度理事会(FRB)は、またもや0.75%の金利引き上げを行うと予想されています。さて、ユン大統領、各議題において、今度こそ具体的な成果が得られるのでしょうか。5月の米韓首脳会談では、それっぽい話はいろいろあったものの(外国為替関連の協力もそうで、協議する必要性に同意した、という内容だけです)、具体的なものはありませんでしたが。
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