尹錫悦大統領、NYTとインタビュー・・「日本とはグランドバーゲン」「前政権のように、米中の間で曖昧な態度は取らない」「ペロシ議長と会わなかったのは、中国は関係ない」など

尹錫悦大統領が、国連総会の前にニューヨーク・タイムズとインタビューしました。その内容が、「日本とはグランドバーゲン」「前政権のように、米中の間で曖昧な態度は取らない」「ペロシ議長と会わなかったのは、中国は関係ない」などですが(朝鮮日報など多くのメディアが報じています)・・少なくとも現状において、これをそのまま受け入れる人がどれぐらいいるのでしょうか。また、北朝鮮に対する大幅な支援を『非核化の前』に与える、いわゆる『大胆な構想』についてですが、また同じ趣旨を話しました。以下、気になる部分を<<~>>で引用してみます。

<<・・ユン大統領は金正恩(キムジョンウン)北朝鮮国務委員長に向けて「非核化を選択すれば、経済的に明るい未来が待っていることを知ってほしい」、北朝鮮が非核化をすれば「経済的支援」を受けることができると話した。『先に非核化して、その後に対北朝鮮制裁を解除する』という枠組みにこだわらないという意味である(※日米側とは違う路線で、文在寅大統領も同じ主張をしていました)。 光復節演説などを通じて明らかにした「大胆な構想」で提案した内容の延長線だ・・

 

・・大胆な構想は、北朝鮮が実質的に非核化に乗り出す場合、段階別に北朝鮮の経済と民生を画期的に改善するというユン大統領の対北政策で、大規模食糧支援とインフラ支援、港湾・空港の現代化、病院・医療インフラの現代化などが 骨子だ(以下、朝鮮日報)・・>>。 延長線もなにも、初めて発表してからも大統領室などから『支援は制裁から免除できる』『非核化のための会談に応じるなら、対北制裁の解除に乗り出す』など、同じ趣旨の話はすでに出ていました。日米北ともにこれといって反応がなかったのでもうやめたのかと思いましたが、また出てきたわけです。次は日本関連の内容を見てみます。

<<・・尹大統領は対日関係については、「未来志向的に解いていかなければならないと考えている」とし「グランドバーゲン方式」で解決するという意志を明らかにした。書く分野においてのすべての懸案事項を一括妥結するということだ。尹大統領は大統領選挙のときも「すべての案件を、全部一つのテーブルの上に置いて、グランドバーゲンをする方式でアプローチしていく」と話したことがある・・>>。 これ、すでに前提が成立しなくなっていることに、ユン大統領は気づいていないようです。なぜそうなるのか、引用の途中ですがちょっと書いてみます。

 

前にも紹介したことがありますが、このグランドバーゲンの話が初めて出てきたのは去年6月29日、ちょうど、大統領選挙に出馬すると公式発表した日です。当日のハンギョレ新聞はこのグランドバーゲンについて、「具体的には言及しなかったが、安全保障で日本と足並みをそろえ、その対価として、他の案件で多少の利を得ようとする構想だと解釈できる」と分析しました。個人的に、これがもっとも的確な分析だったと思っています。また、これを名分に、米国に『日本を動かしてほしい』と求めることも想定していたのでしょう。拙著『尹錫悦大統領の仮面 (扶桑社新書)』でもブログでも、私はこの動きを『用北』と表現したりしました(北朝鮮からしても寝耳に水でしょうけど)。すなわち、北朝鮮問題において日米と違う路線を言い出した時点で、グランドバーゲンは成立しなくなるわけです。次、中国関連では、このように話しました。

<<・・尹大統領は、前政権は米中の間で曖昧な態度を見せたとしながら、もう態度を明らかにするとした。彼は「米中の間で、私たちは明確な立場を持って国際社会での自由と平和繁栄を追求する」とし、「チップ4予備会談に参加する予定であり、皆に必要で合理的なことだと思う」と話した。日米韓安保協力についても「北核問題に対応して北東アジアの平和を守るための防御体系」とし「北東アジアの安保と平和を守るために必要なことなら、やらない理由がないと思う」とした。米国主導のグローバルサプライチェーン再編、日米韓安保協力は、いずれも中国と意見が合わない部分だ。だが、尹大統領は「(ある国が)力によるいかなる現象の変更を試みるとするとき、それについては国際社会が連帯して阻止しなければならない」とした。中国を気にせず、米国との同盟をさらに強化するということだ・・>>

 

16日に中国のNo3と面談したことを気にしているのでしょうか。なんか、これまで紹介してきた内容とは、異世界転生な感じがします。「ペロシ議長と会わなかったのは、中国を気にしてのことではないのか」という指摘に対しては、「それはない」、「休暇が予定されており、休暇のためペロシ議長と会えないと、すでに両国間で了解していた」と話した、とのことですが・・さて、どうでしょうか。同じ頃(現地時間16日)、バイデン大統領は米国CBSのインタビュー番組に出演し、「中国による台湾の有事の際には、米軍が台湾を守るだろう」と話しました。前にも同じ趣旨を言ったことがありますが、その後に「政策に変更はない」という発表があり、一部からは大統領のミスだったと、また一部からは発言から火消しまですべて事前に用意されていたものだとも報じられました。SBSは、「この日の発言が、今度こそ中国・台湾に関する米国の政策が変わった可能性を示唆するものか注目されます」と報じています。事実上、もう変わっているようなものではありますが

 

ちょうど一つ前のエントリーでも取り上げましたが、国連総会の米韓首脳会談(?)でユン大統領が議題にすると言われているのは、インフレ抑止法の修正(一つの国だけ例外にするわけにもいかないので、結構大きな修正が必要だと指摘されています)、半導体関連で中国への投資を許可してもらうこと、バイオ産業関連での米国の政策変更、通貨スワップの締結などです。インフレ抑止法と半導体関連は、どう見ても、『中国が言いたがっていることを、米国の同盟国が首脳会談で言う』というとんでもないシチュエーションになります。前にも書いたことがありますが、まず非公開に話し合って、なにか発表できそうになったら両方の合意のもとに発表するものでしょう、こういうのは。

ユン政権は、いきなり長官が国会で『WTOにもっていく』と話すことから始めました。さて、次に中国側の人と会ったとき、ユン政権は今回のインタビューと同じことが言えるのか。グランドバーゲンなるか。通貨スワップなるか。なにより、岸田さんとちゃんと会えるのか。いろいろ、気になるところです。一般的に用いる『気になる』という表現とは少し違う気もしますが。 最後に、また告知です。最近更新休むことが多くて申し訳ございませんが、今日も更新はこれだけです。次の更新は、明日のいつもの時間(11時前後)になります。今日もありがとうございました。

 

 

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