大統領室は「金融安定には米韓通貨スワップも含まれる」とするものの、27日の会談でも「金融安定」だけで「通貨スワップ」は言及無し

安倍元総理国葬に弔問するため訪日した、韓悳洙(ハンドクス)国務総理、時間的に、岸田総理との面談は本エントリーでは間に合いませんでしたが、ハリス米国副大統領との会談内容は記事になっていますので、そちらを紹介したいと思います。結論から書きますと、よくある「~のために努力することを約束した(記事によっては『合意した』)」というもので、これといって大きな成果があったとは言えないものの、むしろ尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の『歓談』より普通ではなかったのか、そんな気もします。ただ、本ブログとしていくつか気になる点があったので、まとめてみます。

まず、米韓通貨スワップについてです。この部分は各記事に詳しくは書いてませんが、結論から書きますと、『金融安定のための協力については話したが、通貨スワップに関する具体的な話は無かったと伝えられた(ソウル新聞)』とのことです。この部分、実は大統領室がまた妙なことを言って、今度こそ通貨スワップに関する話が出るのではないか、と注目されていました。韓国経済など複数のメディアの記事によると、9月21日、米国現地で開かれたブリーフィングで、チェサンモク経済首席秘書官は(当時はまだバイデン大統領との会談がちゃんと開かれるとしていましたので)「金融安定のための協力には、通貨スワップも含まれる」と話しました。

 

5月の米韓首脳会談のときからそうでしたが、「金融安定のための協力」はいつもテーマになっていました。ただ、それと通貨スワップはあくまで別の案件というのが一般的な認識でした。実際、それからも中央銀行(韓国銀行)は、まだ通貨スワップが必要な段階ではないという話を何度も繰り返しました。にもかかわらず、公式に『通貨スワップも含まれる』という話が出てきたわけです。当然、「国連総会では歓談しかできなかったので、今回の会談では通貨スワップ関連の話が出てくるだろう」という予想も出てくるでしょう。しかも、為替レートが急な動きを見せているし、ブルームバーグ通信が『もっとも懸念される通貨はウォン、ペソ(フィリピン)、バーツ(タイ)』という記事を載せたりしました。

 

アジアは日本と中国の通貨価値の影響を受けるシステムなのに、両国共に基本的には通貨安を見守るスタンスなので、その影響を受けるしかない、という内容の記事です。そのこともあって、今回の国務総理・副大統領会談において、通貨スワップ関連の話が出てくるのではないか、そんな予測も盛り上がっていたわけです。しかし、結果、これといった話はなかった、と。それ以外だと、やはり『インフレ抑止法』の電気車補助金が大きな問題になっていますが・・CBSノーカットニュースによると、米国側は『真剣に取り組んでいる』としながらも、『尹政権が公開的に問題提起しているので、もちろん知っている』『そのために国務総理と会談したわけではない』と話しました。個人的に、わざわざ『公開的に言ったので』としている部分が、気になります。ここからはちょっと引用してみます。<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・米国側のハイレベル当局者が、カマラ・ハリス副大統領とハンドクス国務総理の会談について、電気車補助金の問題を交渉するためのものではないと話た。この米国高位当局者は27日、東京でブリーフィングを開き、「彼ら(ハリス・ハンドクス)は電気自動車の問題についても話したが、ハリス副大統領はその問題について交渉するためにそこにいたわけではない」と話した。ハリス副大統領が電気自動車補助金と関連してハンドクス国務総理にどんな約束をしたのかという記者の質問に対する回答だ。

彼は、二人の会談についてのホワイトハウスの報道資料に、『二人は電気自動車問題を議論した』と書いてあることについては、「二人が実際にそうしたわけだから、別に驚くことでもないだろう」と説明した。「尹政権がこの問題を公開的に明らかにしていたので、私たちはこの件について明らかに認知している」とも述べた。会談において、ハリス副大統領が「米国の見解を説明した」としながら、電気差補助金について「インフレ抑止法は、米国の雇用や輸出業者にも多くの恩恵を与えるが、含む他の国々にも恩恵を与えることができると思う」と付け加えた。彼は特に、「ハリス副大統領は非常に注意深く聞き、法の施行の過程でこの問題を扱うのに役立つように、貿易代表部と財務部など米国政府が仕事をすると約束した」と話した(CBSノーカットニュース)・・>>

 

今回の大統領室発言もそうですが、本当は具体的な話は出来ていないにもかかわらず、『ちゃんと何かを進めている』とのニュアンスの発表が、通貨スワップに対する期待感を大きくしてしまったのではないでしょうか。岸田総理との懇談のときもそうでしたが。思えば、前政権の『終戦宣言』関連から、何も変わっていません。あのときも、終戦宣言について米国側が真剣に取り組んでいる、協議が着々と進んでいる、などの発表が相次ぎました。しかし、これといった進展が見られず、一部のメディアが疑問を提起するようになると、当時の大統領府・与党側からは『米国側と、すでに終戦宣言の草案まで出来た』という話が出てきました。どこからどこまでを草案とするかにもよるでしょうけど・・言うまでもなく、それから終戦宣言についての話は出なくなりました。まったく同じパターンに見えますが、気のせいでしょうか。

 

 

・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。

  ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2022年9月2日)からですが、<尹錫悦大統領の仮面 (扶桑社新書)>です。文在寅政権の任期末と尹錫悦政権の政策を並べ、対日、対米、対中、対北においてどんな政策を取っているのかを考察しました。政権交代、保守政権などの言葉が、結局は仮面が変わっただけだということ、率直に書きました。 新刊<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>も発売中です。「私はただ、日本が好きだから、日本人として生きたいと思っています」。これが、本書の全て、帰化の手続きを進めている私の全てです。 刊として、日本滞在4年目の記録、<「自由な国」日本「不自由な国」韓国 韓国人による日韓比較論 (扶桑社新書) >と、新しく出現した対日観について考察した卑日(扶桑社新書)>も発売中です。 ・刊・準新刊の詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。 ・当に、本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。