米国副大統領の「米北同盟」失言に続き、今度はVOAが尹大統領の「逆さま」写真を掲載

いくつかの小テーマで伝えている事案に進展が見られず、ネタが足りない状態です。朴振(パクジン)外交部長官の解任決議案が国会本会議を通過し、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が拒否権を行使するなど、国内での騒ぎが大きくなりすぎたのも一因だと思われます。今回のエントリーは、いつもにくらべるとほのぼの(?)な話になりますので、軽い気持ちで読んでくだされば、と思います。いつもそうですと言われると返す言葉もありませんが。

さて、何度も同じ趣旨を書いていますが、韓国では『尹錫悦政権は、完全に米国側に舵をきった。残るは、中国との関係を管理することだけ』というのが定説になっています。左側など、尹政権の外交方針に批判的なメディアも、『米国側だと明確にしすぎだ』『あまりにも早期に舵をきったので、米国はもう韓国は味方だと思っている。だから電気車補助金問題も発生した』などの論調です。批判はするものの、『舵をきった』という点については異論が無いわけです。これは、そこそこ大手のメディアも同じです。

 

ほかはともかく、中国関連において尹政権の外交スタンスを見てみると、いったい何を論拠にしてそう決めてしまうのか、不思議なかぎりです。『米国側に立ったのに、なんでもっと相応しい優待をしてくれないのか』という論調ならありますが、米韓関係について何か問題が起きていると指摘するメディアは、右にも左にもほとんどありません。特に最近は安保・半導体などで台湾関連の話題が多くなりましたが、その件についても、大差ありません。そんな中、大手ではなくネットメディアレベルの話ですが、『本当に問題はないのか?』とする論調の記事がいくつか目に付きました。主に、2つの案件について、です。

 

一つは、ハリス副大統領がDMZ(非武装地帯)を訪れたときに、『米韓同盟』を『米北(朝)同盟』と話し、それがフォックスニュースなどで放送されたこと。これについて、実はフロイト的失言ではないのか、という話が出ています。グッドモーニング忠清という左側のネットメディアの記事ですが、いくらなんでも、副大統領がDMZでやったとは思えないミスだ、というのです。わざと言ったわけではないにせよ、無意識的に米韓同盟について懸念しているからこそ、そんなふうに口にしてしまった、という意味です。

もう一つは、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が、尹大統領が逆さまに映っている写真を掲載したことです。写真を逆さにしたという意味ではなく、顔がテーブルに反射されている写真です。カナダでの首脳会談の際のもので、ネットメディアCNBの記事によると、普通、首脳会談関連でこんな写真を載せるのは異例のことだ、とのことでして。VOAのソース記事の内容は、例の問題発言そのものよりも、『だからといって、放送局相手に戦う大統領がいるか』という趣旨がメインの記事で、題も『大統領、失言で放送局をせめる』です。個人的な意見ですが、国連総会で、尹大統領は『自由』を21回も言及しました。それとは逆ではないか、という意味もあるのではないか、そんな見方もできるでしょう。もちろん、この2つの件、実際の意図が何なのかは、わかりません。

 

<<・・前日、「米北同盟」と話してまわりを驚かせたカミラ・ハリス米副大統領のDMZ発言は、単純なミスというより、不満を無意識的に表わしたものだという主張が提起され、注目される。ジョンジンソク弁護士は「他の場所でもなく、北朝鮮と対峙している場所で米副大統領として非常に基本的な事項に関してミスをした」とし「外国では、これが単純なミス(Gaffe)ではなく、プロイト的ミス」( Freudian Slip:無意識的な意図を持つミス)という分析が出ている」と話した。この用語はフロイト心理学から出てきた言葉で、「ミスではあるものの、無意識的な意味がある」という理論だ。この場合、結局は「大韓民国との同盟関係がそこまで強くない」という隠れた意図を持つミスだと解釈されるというのだ(グッドモーニング忠清)・・>>

ちなみにこの話をしたジョンソクジン弁護士という人は、例の尹大統領の問題発言において、「~国会が『承認』してくれないと~』(この部分は聞き取れます)と話した時点で、韓国国会ではなく米国議会を意味するものだと主張しています。韓国国会では、何かの予算について『議決』と『確定』をするけど、米国議会は予算法律主義にもとづいて『承認』をする、とのことでして。左側の人ではあるものの、法律専門家ならではの面白い指摘だと思いました(これが正解なのかは分かりませんが)。ちなみに、外国の「議会」の場合、韓国では普通に「国会」と言う場合もあります。

 

<<・・米国の国営マスコミである「米国の声(VOA)」が、26日、最近話題の大統領室とMBC放送の間の対立を伝えながら、ユン大統領の「逆さま写真」を載せて、話題だ。この記事は、米国の通信会社APの記事本文(South Korea’s president scolds media over hot mic moment)に、英国の通信会社ロイターの写真を組み合わせたものだ。元のAP通信の記事には、出勤途中の尹大統領の別の写真が載っている。最近起きている奇妙な事態、すなわち大統領の発言がテレビカメラに撮られ、数多くの国内外メディアがこれを報道したにもかかわらず、与党は最初に報道した局だけを責めていることを伝えたAP通信の記事に、VOAはユン大統領の顔が逆さまに写った写真を組み合わせたのだ・・・・通常、首脳会談は極めて公式的な行事なので、報道写真もまた公式なものが選ばれる。こんな構図の写真が載るのは異例だ(CNB)・・>>

さぁ・・本当にどういう意図があったのかまでは分かりませんが、一部のメディアとはいえ、こんな内容が記事になり、メディアによっては『もっと真剣に考えるべきだ』としている場合もあります。実は、『本当は米韓関係はそこまでハッキリしていない』という、自覚はあるということでしょうか。フロイトかどうかはともかく、このような案件が話題になること自体、ある種の不安を自覚している、ということで・・

 

 

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