米国の外交専門家、日韓関係について『小渕恵三・金大中宣言(日韓共同宣言)の復元を話す人がいるけど、そんな関係に戻ることはできないでしょう』

大統領選挙で盛り上がっていた頃、一部のメディアから日韓関係について『急に改善できるという話も出ているが、このまま固定される(現状がスタンダードになる)のではないか」という意見が出ていました。あのときはまだ公式に大統領出馬する前でしたが、「尹錫悦(ユンソンニョル)氏が大統領になれば両国関係は急激に良くなる」と言われていましたし、岸田文雄総理が誕生した頃にもまた、「ついにこのときが来た」とし、同じ反応がありました。

ただ、一部のメディアは、「本当にそうだろうか」という記事を載せました。そう簡単なことではない、政権が変わるからって外交政策が変わるわけではない、という現実的な内容でした。ただ、多勢に無勢というか、あまり目立たない存在でした。当時の主流となる流れは、本ブログでも何度も取り上げましたが、「もう尹政権になったから/もう岸田政権になったから、関係改善は決まったも当然」というもので、かなり盛り上がりました。もちろん、それからも日本の基本スタンスは変わらず、『尹大統領になったのに、なぜだ!』という点を不思議に書く記事が増え、岸田総理のことも、『選挙さえ終われば』という記事が無数に出てきました。

 

そのような『固定』関連の見方・・と、多分、関係があると思われる、そんな記事がありました。米国外交協会(外交問題評議会、CFR)で日本関連を担当し、「日本は『世界の警察』米国の役割の一部を受け継ぐだろう」などの予想で知られるシーラ・スミス研究員。文化日報に彼女のインタビューが載りました。訳文ではありますが、彼女の発言は、どちらかに傾くことなく、礼儀正しいものだと感じられます。しかし、彼女の発言及び記事(文化日報)の分析において、いままで米国側のシンクタンクの人たち、特に日米韓関係を重視する立場の人たちの話し方とは多少『変わった』部分がありました。

どこが変わったのか、それは、(彼女が直接的にこう言ったわけではなく、記事の分析ですが)『米国側は、もう両国関係の改善に関してそこまで高い期待はしていない』という部分です。言い換えれば、現状をスタンダードとして認識するようになったわけです。また、『必要な部分で協力すればいいじゃないですか?』な感じの内容もありますが、これは少なくとも対外的には、日本側の主張と一致します。必要な部分といっても、結局は安保関連、いわゆる日米韓安保協力(3国ではなく3『角』同盟)です。日本のスタンスは、日米韓安保協力はちゃんとやる、やらないほうがおかしい、というものですから。

 

むしろ各懸案を安保領域にまで拡大させようとしているのは、文在寅(ムンジェイン)政権のほうで、特にGSOMIAが代表的でした。いまの尹錫悦(ユンソンニョル)政権では、北朝鮮問題に関しては前政権より強いスタンスを取っていますが、それでも各懸案と安保問題をつなげようとする姿勢はそのままです。ツートラックと言いつつ、実際はツートラックできずにいるのは相変わらず、とでも言いましょうか。シーラ研究員は基本的に、「日韓関係が発展的な方向に進みますように」という前提でしたが、今現在の両国の懸案は、どうみてもそう一気に解決できるものではないので、「これ以上悪くならないように、他の分野で管理することが必要だ」としています。

これは、いままで似たような立場の人たちが『改善』を前提にして話していたこととは違う路線で、特に、尹大統領が主張してきた「グランドバーゲン」、すなわち首脳会談で全ての案件を一括妥結するというやり方を、『それは難しいですよ』と言っているようなものです。シーラ研究員はまた「安保リスクに同じ方法で対応する」ことが重要だとしています。読み方にもよりますが、『改善はもういいから基本的なことだけやって』な意味にも見えます。実際、記事は、「両国関係に対するワシントンの『期待値』が、低くなっているという意味でもある」と分析しています。ここからは引用してみましょう。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・尹錫悦政権が金大中・小渕宣言(※日韓共同宣言)時代に両国関係を復元するという意志を見せているが、ワシントン外交専門家から「その時代に戻ることはできないだろう」という展望が出てきて、注目される。米国内の日本関連権威者であるシーラ・スミス米国外交協会(CFR)研究員は先月16日、記者たちと会い、「両国関係があまりにも思わしくないので首脳が会うだけでもとても良いことだと感じられる」とし「金大中・小渕恵三の共同宣言時代を再現したいという話も聞こえてきますが、その次代に戻ることはできないと思います」と話した。当時、尹大統領と岸田文雄総理が米国ニューヨークで会談を控えた状況だった(※結局は懇談になりましたが)。長期間にわたり現状に至った関係が、そう急に改善されることはないという診断だ。

シーラ研究員は、「両者とも関係を改善しようとする意志があるが、いままでと比較して、両国間の失望感が大きく、お互いを受け入れられないという雰囲気を感じます」とし「尹政権も岸田政権も、(※関係改善のために動いたことで)うまくいかなかった場合、そのリスクが大きくなるしかない状況です」と話した。「いまよりさらにわるくならないようにしなければならない、そう思います」とも付け加えた。シーラ研究員の発言は、関係改善に対する米国内の期待感が低くなっていることを反映したものだと解釈される。前には、米国政府は三角協力が米国安保に与える影響を強調し、日韓関係に積極的な仲裁努力を傾けていた(文化日報)・・>>

 

 

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