韓国地上波放送、2008年と2022年の金融状態を比較・・『当局の発表内容が、まるで同じ人が書いたようにそっくり』

最近、韓国メディアの報道スタンスははっきり分かれています。まず、まだ言い切れるほどではないものの、このままでは金融危機になるという報道。そして、大丈夫だから心配ない、日本やイギリスなどのほうがもっと深刻だ、とする報道。もちろん記事の内容にもよりますし、前者も後者もそれなりの分析のもとに書かれたものならそれでいいでしょうけど、実は、政権を支持しているのかどうかで分かれているだけです。昨日は朝鮮日報が『日本と比べてももう国力で私たちが勝るけど、日本もすごいから油断できない』とする記事を載せたりもしました。

いままでは特派員記事などを中心に、逆の方向の記事が多かっただけに、『政権が変わればこんなものか』としか思えませんでした。というか、今の時点でそんな話をすると、時期的に現政権よりは前政権の手柄になるはずですが、それはいいのでしょうか。ただ、保守側だからすべてが同じではありません。最近は東亜日報など一部の保守メディアも、ユンソンニョル政権を批判する動きを見せています。それに、その内容が、とても『いつもの』ものだったりします。本エントリーのソース記事はMBC(最近、尹大統領といろいろあります)ですが、まずは東亜日報の関連記事を紹介します。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・ブルームバーグ通信は先月26日、「金融危機レベルの問題」を取り上げ、最も脆弱な通貨としてウォン、ペソ(フィリピン)、バーツ(タイ)を指摘した。金融危機が起きたことがある国の中で、インドネシアは取り上げられなかった。ウォンが、インドネシアのルピアよりも危ない通貨だという評価を受けたわけだ。政府は大きく増えた外貨保有高などを挙げ、問題ないとする。だが、先端産業強国であることを自負する我が国の通貨が、東南アジア開発途上国の通貨より弱いとされる現象は、過ぎた指摘ではない。

いったいなぜ、ウォンが東南アジア諸国の通貨より不安定だと言われなければならならなくなったのだろうか・・・・変化を導き出さなければならない政治家たちと政府は、問題意識自体がないようだ・・・・より大きい問題は尹大統領にある。国の経済が、生き残りをかけて突破しないといけない状況下で、超党的対処が必須であるにもかかわらず、大統領は最小限の『協治(※与党・野党の話し合いを重視する政治、など)』を導くリーダーシップすらも見せていない(東亜日報)・・>>

 

本当に強国になれたなら、マスコミが他国のことでこんな書き方をする理由もないのでは・・な気がします。数十年前から何も変わってません。で、本題ですが(いままでも十分本題の一部でしたが)、地上波放送MBCが、『大丈夫だと言うけど、本当に大丈夫なのか?』と、リーマン・ブラザーズなどで大変だった2008年と、2022年と『どこが同じで、どこが違うのか』を分析する記事を載せました。特に各項目を自分なりにまとめてみたいと思います。特に興味深いのが、中央銀行(韓国銀行)側の発表内容です。それが、あまりにもそっくりで、記事は、『同じ人が書いたようだ』としています。

項目その1、発表内容が気になる。2008年夏の発表は、次のようです。「7月末現在、外国為替保有額は2,475億ドルで、前月末に比べ105.8億ドル減少」、「外国為替当局の市場安定化措置が必要だった上、その他の通貨の切下げによる米ドル換算額が減少したことに主に起因する」、「外国為替保有額規模は世界6位水準を維持」。2022年秋のは、次のようです。「9月末現在、外国為替保有額は4,167億ドルで前月末比196.6億ドル減少」、「外国為替市場の変動性緩和措置、その他の通貨外貨資産の米ドル換算額の減少、金融機関の外貨預金の減少などに起因」、「外国為替保有額規模は世界8位」。

 

項目その2、「2008年9月、リーマン・ブラザーズ事態で、1,000ウォンから1,050ウォンの間を行き来したウォンドル為替レートが1,200ウォンを超えました。2007年末、ウォンドルの為替レートが936ウォン程度だったので、1年もならずウォンの価値が22%下がりました」、「当時、1ヶ月で274.2億ドルの外国為替保有額が消費されました。今年9月の1ヶ月間の外国為替保有額減少額は196.6ドルです。今年初めに1,100ウォン台だった為替レートは1,400ウォンを超えています。 今回もウォン価値が20%以上下がったことになります」(※その1でも述べましたが、2008年と2022年では外貨保有高の絶対額は違います)。

項目その3、その4。同じ点として、大規模の貿易赤字が発生、外貨流出のおそれなどがある。違う点として、2008年は『米国発の問題』だったが、2022年は『米国以外は全部問題』な状態であり、2008年には米国も金利を下げた(韓国もその動きに合わせた)が、今回は金利を上げているので、同じく金利を上げる流れを取るしかなく、4~5%まで金利を上げなければならないかもしれない、という内容です。記事に直接書いてあるわけではありませんが、尹政権としては、不動産バブル、家計負債などの問題で、金利を『上げる』のほうがずっと難しい状態になっています。これは世界中で似たような問題が起きているでしょうけど・・『資産において不動産の比重が高すぎる』『GDPより家計負債が多い唯一の国』とされているだけに、その分、悩みも深いはずでしょう。

 

最後に、『通貨安による利益が無くなった』です。前にも関連したエントリーで書きましたが、日本のように外国に多くの投資をし、多くの純資産を保有している国は、通貨安になると、逆にその価値が(自国通貨にすると)上がることになります。前にも引用した内容ですが、租税日報という租税専門メディアの9月26日付け記事によると、「日本の外貨保有高は7月末基準で1兆3230億ドル(世界2位)で、何よりも外国為替関連で金融危機がないと自信が持てる理由は、31年連続世界最大の債権国であるためだ。5月基準で日本の対外純資産は411兆1841億円で、前年同期比15.8%増加した。2位ドイツは315兆7207億円で、100兆円近くも差が広がった。円安により、海外資産の価値は上がっており、これは、為替介入に積極的でない理由の一つだとも思われる。海外資産が多いため、ドルで受け取る利子と配当の価値が高くなり、海外不動産価格も上昇するからだ」、とのことでして。

 

まだ純債権国になってから10年も経っていない韓国としては、このような効果はあまり期待できません。ちなみに、『いつから』なのかは記事や資料によってちょっと見方が異なっています。年別統計で純債権国になったりならなかったりしたからです。あくまで一般論ですが、純債権国として安定したのは2014年からだとされています。で、MBCはこの為替レート(通貨安)の件で、「サムスン電子の6~9月営業利益が前年同期比31%減少したと7日発表されました。ドルに換算すると、さらに大きく減少したはずです。半導体市場の萎縮のためだそうです。1997年と2008年の金融危機から早く立ち直れたのは、通貨が暴落したことで、価格競争力が大きくり、輸出企業が膨大なドルを稼いだ影響が大きかったです。しかし、サムスン電子の業績悪化は、もはや為替レート効果を期待するのは難しいことを示しています」としています。

最後に告知ですが、つい数日前に『近いうちに休む日が増えそうで、週末は普通に更新します』と書いたばかりで、本当に恐縮ですが・・今日の更新はこれで終わりです。明日のいつもの時間(11時前後)に、また更新再開します。また、来週のことですが、読者の方々はご存知でしょうけど、最近、人生の夢を叶えるための重要な手続きを進めておりまして。その影響もあって、来週あたりにはいつもより休む日が増えそうです。せめて、休む前には休みますとちゃんと告知だけでも致すようにします。まだまだ時間はかかりそうですが、良い報告ができるよう、頑張ります。

 

 

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