韓国メディア、また尹大統領のグランドバーゲン(一括妥結)主張を支持・・『すべて連動しているため、現金化解決案を出せば、輸出管理も解除されて『当然』だ」

本ブログでも紹介しましたが、国政監査(国会が各機関について調べること)で駐日韓国大使が『国連総会での会談(懇談ですが)以来、日韓関係が解かれつつある』と発言しました。尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は決して姿勢を低くしなかった、とも。ちょうど北朝鮮ミサイル警報訓練を含めた日米韓共同訓練が行われたこともあり、一部のメディアがこの発言にものすごく肯定的な評価を送っています。

もちろん『そういう認識でいいとは思えない』とする一部メディアの記事もありますが、大手などがさっそくこの発言を論拠に『そうだったのか!』な記事を出しており、ついこの前までの報道スタンスとは結構異なる路線となりました。例えば聯合ニュースは、いわゆるグランドバーゲンを支持する記事を出し、専門家の意見として『尹政権は早く現金化解決策を用意し、当然、岸田政権は輸出管理を前のように戻さなければならない』と書いています。すべて連動しているから、一括妥結のグランドバーゲンでいいという趣旨です。ここで『当然』が入るのが、またなんとも。個人的な考えはちょっと後に書くとして、まず<<~>>で引用してみます。

 

<<・・北朝鮮の挑発に対応するため、両首脳が安全保障協力の必要性に共感したが、両国が実質的な安全保障協力に第一歩を踏むことができるか関心が集まっている。日韓安保協力は、日米韓安保協力の枠組みの中でなされるレベルのもので、当分の間、具体的な結果を出すよりは、三国間の安保協力強化でマニュアル的な言及だけが繰り返されるだろう、という見通しが、現在では優勢だ。実質的な安保協力を進めるためには、哨戒機問題(※レーダー照射)など安保分野の具体的な懸案の解決が先行しなければならないものと見られる。

また、軍事情報保護協定(GSOMIA)、輸出管理強化の理由になった現金化懸案の解決にスピードがつかなければならないという主張が多い。安全保障問題を緊密に議論するには、両国国民間の相互信頼がある程度は構築されなければならないが、政治家を中心に各懸案に対する異見が依然として大きいためだ。尹政権はこれまで「総合的・包括的解決」方式を着実に強調している。去る9月尹大統領がニューヨークタイムズとのインタビューで、グランドバーゲンを言及したのが代表的だ・・

 

・・政府が一括妥結方式に力を入れるのは、日本が現金化案件に対する措置として輸出管理を加え、文在寅政権はGSOMIA終了を通知するなど、すべての案件が連動していると判断しているからだ。現在、政府は解法を用意する作業に入ったが、時限を定めず該当問題を解決するという方針の下、これを慎重に進行中だ。先月5日に民官協議会を開催した後、広い範囲で意見を集める作業に入るとしていたが、もう1カ月以上も、今後の話し合い日程については話が出てこない。

イウォンドク国民大学教授は10日、「現金化に対しては尹政権がもっと速度を出して解決策を用意しなければならず、そこに、当然、岸田政権は輸出管理をやめることで答えるべきだ」と強調した。彼は「日本もこの件を問題にするのは時期的に適切ではない」とし、韓国がこの問題に対して日本と外交的コミュニケーションを持続すると言っただけに、日本もより積極的な姿勢を取らなければならないと助言した。こうした中、今月中に東京で開かれる日米韓外交次官協議会をきっかけに、日韓の外交次官が別に会って具体的な意見を交換するのか関心が集まる。最近、両国が諸般懸案の解決のため、外交当局間の緊密な協議を強調しているだけに、この場で日本側がの韓国政府の仕事に意味のある反応を出す可能性もある(聯合ニュース)・・>>

 

関連エントリーにも書いた記憶がありますが、もともと国政監査では『うちはちゃんと実績がある』と主張するための発言が相次ぎます。例えば文在寅政権の頃、駐米韓国大使館側は『終戦宣言において意見の一致ができつつある』などの主張を繰り返していました。2020年10月12日中央日報の記事を読んでみると、イスヒョク駐米韓国大使は国政監査で『米国側も共感している』『米国は、北朝鮮がいいと言うならすぐにでも終戦宣言に応じる』などと話しました。国会議員から『何も聞いたことないけど、その根拠はなんですか』という質問があったものの、具体的な返事はありませんでした。

当時もこの発言が何故か高く評価(?)され、それからいくつか『終戦宣言がかなり進展しているらしいよ』という話が盛り上がりました。他にも、『実は実績があります』関連で話したことが話題になることは多く、同じ終戦宣言関連だと、『文案に米韓が合意した』というエピソードが有名です。これもまた、2021年12月、ブリンケン長官との外相会談のあと、当時韓国の外交部長官、鄭義溶(ジョンウィヨン)氏が記者懇談会で話した内容です。米国側からは何のコメントも無く、それから終戦宣言関連で何か進展があったとも言えません。

 

そう、成果が無いと言われないために、予めそんなことを言っておいた、と見るべきでしょう。今回の国連総会での『懇談』もまた、事前に大統領室側が『快く会談に合意していた』と話して話題になりましたが、それもこれ(大使の発言)も、同じパターンだと見ていいじゃないでしょうか。日米韓共同訓練も、10月9日にエントリーしたばかりですが、朝鮮日報によると、文在寅政権でも実施されました。「文在寅政権が始まった2018年からもほぼ毎年実施されたが、北朝鮮を気にして訓練が行われたことを公開しなかった。場所は日韓の海域で実施したことが多く、訓練は主に仮想の北朝鮮ミサイルを三国のイージス艦が追跡し、情報を共有する方式でなされた」、とのこと。すなわち、前からやっていただけのことです。個人的に、これはこれで『復元』として評価するならそれでいいですが・・懇談も訓練も、とても『改善』『解氷しつつある』を語るのはどうかな、と思っています。

日本側のメディアの記事だと、電話会談でも北朝鮮ミサイル関連が主な議題だったと言われていますが・・聯合ニュース(引用部分にはありませんが)など各メディアでは『全般的に』話したというニュアンスになっていて、それも気になるところです。電話会談の直後に出てきた読売新聞の記事でも、基本的に北朝鮮ミサイル関連の話だけだったし、それ以外だと岸田総理が記者団に話した「基本条約以来に積み重ねてきた友好関係に基づいて」~といういつものセリフだけでした。

 

 

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