日韓局長級協議、各メディアは「両方は『基本条約の仲裁手続で解決すべき案件ではない』と共感した」と強調・・両国外務省(外交部)発表資料とかなりの温度差

ソース記事を引用する前にちょっとだけ私見を書きますと・・匿名情報の記事にも『書き方』というのがありまして。一般的には「当局関係者は~と話した」という書き方が多いですが、それより信憑性が高いのは「当局関係者は~で記者『たち』に~と話した」です。その記者以外にも同じ話しを聞いた人がいる、という意味ですから。逆に、何の説明もなく「~と伝えられた」な書き方もあります。もちろん、このような書き方の内容がすべてハズレだとは言い切れませんが、どうしても信憑性が気になるところです。今回韓国メディアからの引用は、ほとんどが後者になります。

何のことかといいますと、昨日の日韓局長級協議で、韓国側が『これは韓国の司法システムの中で解決されるべき問題だ』という話をして、日本側も共感を示した、とのことでして。一見、『韓国側が解決すべき案件である』と言っているように見えますが、実は違います。まずは聯合ニュースから、記事を引用してみます。昨日のエントリーで紹介した内容の続報のようなもの、としてお読みください。ただ、後述しますが、日韓外務省(外交部)の発表とはものすごい温度差があります。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。該当案件の呼び方は『現金化』としました。

 

<<・・イサンリョル外交部アジア太平洋局長と船越健裕外務省アジア大洋主局長はこの日午前、ソウル鍾路区外交部庁舎で局長級協議を行い、両国関係の最大の難題である現金化問題を集中的に協議した。韓国側は去る4回行われた民官協議会で提起された事項を日本側に詳細に説明した。特に、原告側と企業間の直接交渉、資金の用意に該当日本企業が参加すること、該当企業の謝○など、争点を重ねて伝え、これに対する日本側の誠意ある呼応が非常に必要だと改めて強調したことが分かった。

この過程で、この事案は韓国司法システム内で発生したため、司法システム内で解決しなければならない事案であることを強調し、日本側も共感したと伝えられた。これは、一部で提起されている、請求権協定による仲裁手続きなどは解法から除外し、代位弁済、併存的債務引受などで解法を求めるという意味だと解釈される。併存的債務引受とは、債務はそのまま存在するが、他の第三者が新たに同じ債務を引き受ける方式で、原告側の同意が必要ない解決法として注目されている(聯合ニュース)・・>>

 

先も書きましたが、これは、両国の外務省が発表した公式資料とはかなり異なるイメージの記事です。短いので引用してみますと、外交部のと外務省の公式発表資料は、それぞれ、こうなっています。まず外交部ですが、「イサンリョル外交部アジア太平洋長官は、10.11(火)午前外交部で船越健裕日本外務省アジア大洋主局長と韓日局長協議を行った。今回の局長協議で、両局長は日韓間の懸案及び相互関心事項について意見を交換した。今回の協議は、韓日外交当局間協議加速化に対する共感のもとに開催され、両局長は今後も外交当局間緊密に疎通していくことにした。 終わり」。

外務省の資料はこうなっています。「10月11日、韓国ソウル出張中の船越健裕外務省アジア大洋州局長は、李相烈(イ・サンヨル)韓国外交部アジア太平洋局長との間で、日韓局長協議を実施しました。先般の国連総会において、日韓首脳間で、現在行われている外交当局間の協議を加速化するよう指示することで一致したことを受け、双方は、旧朝○半島出身○働者問題を含め日韓関係全般について率直な意見交換を行いました。その上で、双方は、懸案を解決して日韓関係を健全な関係に戻し、更に発展させるべく、外交当局間の意思疎通を継続していくことで一致しました」。

 

さて、ずいぶん前から『傾聴してくれた』『真剣に受け止めていた』などの表現はありましたが、今回は共感を示した、です。事実はどうなのか、これからの展開を見ればすぐに分かることでしょう。ちなみに、日本側の記事もいくつか読んでみましたが、『協議した』『話した』などの内容はあるものの、今回紹介したような内容は載っていませんでした。どの記事も、北朝鮮ミサイル関連の話がメインです。他に気になることといえば、ソウル経済の記事ですが、記者さん気になる質問をしました。前から本ブログで取り上げてきた、『北朝鮮関連の安保問題で積極的に協力するから、それ以外は譲歩してほしい』という尹政権の外交戦略のことです。ちなみに、このソウル経済の記事には、『国内司法システムで~』という話は載っていますが、『日本側も共感した』という内容はありません。これもこれで妙な話ですね。実際外交部当局者に質問までした、という記事ですが、なんで『共感した』が無いのでしょうか。他にも、一部のメディア(あまり大手ではないところ)の記事にも、相応の記述はありません。

 

<<・・一方、外交部当局者は、「韓国と日本がそれぞれ、現金化解決と安保協力をトレードするのではないか」という指摘に、「日韓、日米韓安保協力の必要性は、北朝鮮の脅威と国際情勢を勘案したとき、 どんどん重要になっているというのが、政府の立場だ」としながら、線を引いた。この当局者は「それとは別に、現金化は両国間において懸案となってきたし、政府はこの問題を解決して両国関係を復元し改善し発展させるために努力中である」と強調した。 また「(安全保障協力と現金化)両方をつなげて考えるのではなく、総合的に判断して両国関係を改善していく」と付け加えた(ソウル経済)・・>>

『線を引いた』となっているところを見ると、うまく話が進んでいないようにも見えますが、どうでしょうか。そもそも安保を何かとトレードするという考えそのものが問題でして。文在寅政権のとき、GSOMIAやレーダー照射関連があったのは、『日米韓』という枠組みにものすごい影響を与えました(少なくとも私はそう思っています)。それは、他の案件を安保と繋げてしまったからです。今回、外交部当局者が『繋げて考えていない』としたのも、同じ理由でしょう。でも、本当はどう思っているのでしょうか。

 

 

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