再び指摘される、韓国不動産市場の『プロジェクト・ファイナンス』問題・・複数のメディアが「不動産発の金融危機」を指摘

日本ではあまり耳にしない用語ですが、韓国には第2金融圏と言って、『一般的な銀行に比べると貸出が受けられる基準は低いけど、利子は高い』金融機関が複数存在します。有名なのが貯蓄銀行と呼ばれるところで、2012~2013年には多くの貯蓄銀行で経営上の問題が発生し、いわゆる貯蓄銀行事態が起きたりもしました。わざわざ『銀行』という字まで使いながら、実は銀行とは違うという妙な存在ですが・・家計債務、特に多重債務者が多いので、必要な存在だとも言えます。普通の銀行にはすでに相手してもらえなくなったので、利息が高くても第2金融圏を利用するしかないわけです。

本エントリーの引用部分の「第2金融圏」とは、その貯蓄銀行、保険会社、与信金融の会社(普通の銀行より簡単な基準で貸出を行う会社)などを言いますが・・その第2さんたちのところで、プロジェクト・ファイナンスがまた問題になっています。ここでいうプロジェクト・ファイナンスというのは、ある会社が、『事業』を担保にして金融機関から融資を受けることを言います。例えば、Aという会社が、ソウルの某所に大規模マンション団地の施工をすることになった、とします。するとA社は、その事業そのものを担保にして、金融機関から貸し出しを受けます。ただ、そのマンション団地プロジェクトがうまくいかなかった場合、金融機関としては大いに困ることになるでしょう(もちろんA社も困りますけど)。

 

もちろんプロジェクト・ファイナンスそのものが問題だというわけではありません。ちゃんと機能するなら有効な資金調達手段になりえるでしょう。ですが、これがちょっと・・いろいろある、とのことでして。12日、韓国銀行の金利引き上げが発表されてから、各メディアが『~が問題だ』『いや、~がもっと問題だ』と、それぞれの側面を記事にしています。本ブログでもここ数日、そういう記事を紹介しました。家計債務、いわゆる『ヨンクル』、限界企業、ジョンセ(家を借りること)貸し出し、などなどです。そして、一部のメディアは、『ふっ、ほんとうの問題はこれだぜ』と、プロジェクト・ファイナンス関連記事を載せています。本エントリーでは、韓国経済TV中央サンデー(中央日報の週刊紙)をソースにしました。不動産関連のPF(プロジェクト・ファイナンス)貸出規模が112兆ウォンに及ぶ、とのことでして。もちろんちゃんと動いているなら問題ありませんが、その中の80兆7000千億ウォンが、第2金融圏のものだそうです。一部の貯蓄銀行に限っての話ではありますが、すでに延滞率が5%を超えているところもある、とのことでして。各紙、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・今年6月末基準、保険会社、与信金融会社、貯蓄銀行の不動産PFローン全体の残高は80兆7,000億ウォン。全体の72%を占めています。銀行(※第1)はPFローンに慎重だったが、第2金融圏は事業の多様化を理由に、その規模を着実に増やしてきたからです。特に貯蓄銀行の場合、銀行や保険会社に比べて、施工会社の信用レベルが比較的低い点も問題です。実際、5大金融持株系列の貯蓄銀行の場合、そのPFローンの現況を見ると、一部の延滞率がなんと5%を超えたところもあります(韓国経済TV)・・>>

銀行(第1)まで含めるとまだ1%台だから問題ない、という声もありますが、やはり問題は第2のほうです。貯蓄銀行事態のときは、8%でした。記事によると、某大手貯蓄銀行の場合、今年1~3月には延滞率が1%台だったのに、4~6月には3.7%になっていた、とも。それもそのはず、不動産取引そのものが急減しているし、完成する前に契約をする形になっているので、マンションを購入した人たちも、契約金はなんとかなったものの、残りの購入資金が用意できず(すでに持っている家が売れない、など)、マンションが完成できても何もできない事態も発生しています。ソウルの某大規模マンション団地の場合、施工前に完売したのに、いざ完成したら実際に購入を済ませた人は10%台しかなかった、というニュースもあります。全体の40%は契約を解除すると言っている、とも。

 

<<・・最近、不動産市場からいくつかの問題が感知され、経済に懸念が高まっている。今年に入って不動産市場が急速に凍りついているうえに、急な基準金利引き上げで、経済全般にリスクが転移する可能性があるという懸念だ。すでに大邱広域市と江陵市など地方事業を中心に、建設会社のドミノ倒産の可能性が取り上げられている。不動産市場では、事業においてPFローンを起こし、分譲契約金と中途金(※契約金と残金の間に払うお金)を受け取ってローンを返済する形で事業を進めている。そのうち1つの資金運用でも問題が起きると、関連した各社が共にダメージを受けるしかない仕組みだ。

不動産開発事業に支障が生じれば、関連する施行会社、建設会社、下請け業者などが一気にダメージを受けるという話だ。特にPFローンの規模があまりにも大きいため、金融圏の危機にまで広がる可能性もある。韓国銀行によると、金融圏(銀行・保険・与信・貯蓄銀行・証券)のPF貸出残高は6月末基準で112兆2000億ウォンで、2008年リーマン・ブラザーズ事態以来、最大値だ。「貯蓄銀行事態」直後2013年末(38兆8000億ウォン)に比べては3倍規模だ。中堅建設会社だけでなく、大型建設会社も困っているのは同じだ。

 

不動産資金市場が凍りつくと、国内の主要建設会社の多くは、事業許可を受けても事業に取りかかれない、「未着工比率」が高まっている・・・・大型建設会社とて、資金調達が容易ではない状況なのだ。 企業の信用だけで資金を調達する債券市場では、もう建設会社を探すのが難しくなった。7月、200億ウォン規模の会社債を発行しようとしたSK D&Dは、40億ウォンを調達するのにとどまり、以後、建設会社の名前は会社債市場から見られなくなった。このため、SKエコプラントと大宇建設、ロッテ建設など大型建設会社が、普通なら中小企業が主に活用する「プライマリ債権担保証券(P-CBO)」を活用し始めた。 主に中小企業が会社債を通じて資金を調達するP-CBOを、大型建設会社も活用するしかなくなったのだ(中央サンデー)・・>>

「~のほうがもっと問題なんだよ」と競争でもしているような、そんなところです。それはともかく、また申し訳のない告知ですが、今日の更新はこれで終わりにします。ちょっと準備しないといけないこともありますし。来週は、平日に休む日が多くなりますが、せめて、『事前にちゃんと告知する』だけは致すつもりでおります。

 

 

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