一時的なものか、不動産バブルが弾ける前兆か・・ソウルの某 高価マンションから見える、不思議な現象

今回の(12日の)基準金利引き上げが、いつもより大きなニュースになったというのもありますが・・個人的に気になる現象があったので、また不動産関連のエントリーとなりました。韓国独特の「伝貰」(ジョンセ、保証金を大家に預けて家を借りる制度)には、ある前提条件があります。ある人が家を買って大家になったとします。価格は、計算しやすいように1億ウォンということにします(実際はずっと高いですが)。大家はその家を、Aさんに6000万ウォンの保証金を受け、2年間貸しました。ちなみに、この家を借りた人Aさんを貰入者と言います。保証金は2年後、Aさんにそのまま返ってきます。

すると大家は、その6000万ウォンにお金を足して、また家を一つ買います。貯金しておくだけでも十分利益が出る時代もありましたが、家を買っておくことが最高の投資だと、そう思っているからです。ちなみに、この過程で家(Aさんに貸した家)を担保にする場合も多く、前から韓国でのジョンセ契約の弱点の一つとされてきました。万が一、大家がその家を銀行などにおさえられた場合、ジョンセ保証金は優先順位が低いため、ほぼ返してもらえなくなります。

 

それに、大家からすると預かったAさんの保証金をすでに使ってしまったことになるため、新しい貰入者(Bさんとします)が現れないかぎり、2年がすぎてもAさんに保証金を返してやらないことがよくあります。「新しい人がいないので返せない」というこの定番セリフは、意外なほど、韓国では一般的なものになっています。社会雰囲気的に、とでも言いましょうか。Aさんも、それならどうしようもないと納得したりします。もちろん、人と場合によるでしょうけれども。

このシステムをうまく利用した人たちが、いま韓国で『最上位』とされる、いわば不動産投資に成功した人たちになるわけですが・・ソウルのバンポというところにできた、まさに最高級としか言いようのないマンション団地で、いままでとは違う現象が現れています。東亜日報など複数のメディアが、そこそこ大きく報じていますが、契約時点では完売だったのに、完成したこの高級マンション団地に入居した人は、20%だけです。数日前には10%と報じられていました。

 

韓国では、普通、工事が始まる前に契約し、それから中途金というものを払い、最後に残金を支払って入居する、というパターンになります。でも、多くの人たちが、残金を用意できなかったのです。いままで住んでいた家が売れないなどで残金が用意できず、全体契約者の40%は、契約を解除する、解除の違約金を安くしてくれ、と話している、とのことでして。記事は、「(すでに入居期間が終わったのに)入居を予定している人の5人のうち4人は入居できなかった団地がある」、「基準金利の引き上げと不動産市場低迷で、投資心理が凍りついて、『不動産は不敗』の代表地域とされていたソウルの江南地域でも、新築住宅の入居を遅らせたり、放棄する事例が出ているのだ」と報じています。ここ、プロジェクト発表、契約開始のときには、かなり話題になっていたところです。

該当団地は、都市型生活住宅がどうとか言ってますが大きな1棟のマンションで(1棟だけでも附属施設がいろいろあると団地としますので)、専用面積49㎡、140戸規模だそうです。1戸あたり17億~18億ウォン(3.3平方メートル当たり平均7790万ウォン)に分譲され、その近くには高価団地がいまも多いのに、それらより更に高いと話題になっていた、とのこと。普通の暮らしを望む人たちは手を出さない、手が出せそうにないものですが、なぜこんなことになったのでしょうか。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・14日、不動産業界によると、ソウル瑞草区バンポ・リバーパーク(※マンション団地の名前)は、9月26日までの入居指定期間がすでに2週間以上過ぎているにもかかわらず、現在は入居率が20%水準、140チェ(※ここでは1世帯分を意味しますので、以下、『戸』とします)のうち30戸にとどまっている。この団地の入居予定者協議会は「自体アンケート調査で、残金を払えなかった人の約40%以上の世帯が、契約解除を考慮している」とし、対策の準備を要求する公文を施工会社に送った。入居指定日が過ぎても残金を納付しなければ、延滞利息を払わなければならなず、契約を解除すれば違約金を払わなければならない・・

・・入居遅延、放棄が続出する理由は、銀行が貸し出しに慎重になり、不動産取り引きが急減しており、残金の納付が難しくなったためと見られる。この団地は分譲価格が15億ウォンを超えており、貸し出しを受けるのは難しい。このような場合は、家主がジョンセで家を貸し、保証金を受け取って残金を出すことが多い。ところが、最近、ジョンセも(※ジョンセ保証金だって誰かが銀行から借りるものですので)貰入者を見つけるのが難しい、いわゆる「逆・ジョンセ難」が進化している。ジョンセ取引もがほとんどなく、ジョンセの相場も下落し、現金が足りない入居予定者は残金が払えなくなったのだ。この団地は現在分譲価格より1~2億ウォンずつ下げた、いわゆる「マイナスプレミアム」状態で売り物が出ている(東亜日報)・・>>

 

さらに記事は、「このような現象は、特定の団地だけの問題ではない」としながら、ハム・ヨンジン「ジクバン・ビッグデータラボ(※部屋や家を探すためのデータサイトの一つ)長の見解を紹介しています。「金融危機の時、入居者たちが分譲価格の引き下げなど条件変更を要求することが多かった」とし「ジョンセ価格が下がっているだけに、高分譲価格のところから、未入居問題が浮き彫りになってくるだろう」。

ちょうど一つ前のエントリーで紹介した「プロジェクト・ファイナンス」のことを考えると、この団地の建設会社・施行会社は、ちゃんと売れることを前提にして金融機関から融資を受けたはずです。そんなことまで含めて考えると・・難しいですね。ちょうど13日に、ジョンセ関連で指摘されている内容もエントリーしたことがありますので、まだ未読の方は、合わせて参考になさってください。さて、これは一時的な、または一部地域だけの問題か、それとも、かろうじてシステムを支えてきた何かの、もっと根本的なものなのか・・年内にもう一回あると言われている金利引き上げとともに、これからも注目したいと思います。マニュアル的なオチではありますが。

 

 

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