韓国、一部地域のマンション価格が数千万円ずつ下落・・プロジェクト・ファイナンス貸し出し金利は年初3.5%から今は20~30%へ

適当ですが計算しやすいように1円=10ウォンにしますと、「もうすぐ1億円になるます(ワクワク)」と今までは憧れの的だった某マンション(2箇所)の価格が、それぞれ去年8月時点の実際の取り引き価格より2600万円、今年3月より3380万円下がった価格で取り引きされた、とのニュースもあります(韓国経済より)これでも、まだ取り引きが成立しただけで運が良かったかもしれませんが。ソウルでも特に人気が高かった某地域のマンションの場合、去年には取り引き価格1億5千万円だったのに、先月に8000万円で取り引きされた、とも。不動産市場では大きなニュースだった、という内容もあります。何かが、大いに揺れていることは間違いないでしょう。下がった金額よりも、動きそのものが急すぎます。

昨日も、なんで『金融危機』という言葉を日本に向けるのかという内容を書きました。現場で話を聞いてみても「物価が心配っすねぇ」な話しか聞けなかった特派員さんの心境も、さぞ複雑だったことでしょう。ちなみに韓国の物価上昇率は、月にもよりますが5~6%台です。今朝、最近1週間ぐらい本ブログのメインテーマだった『本物の危機の前兆』に関する内容を振り返ってみました。いわゆるヨンクル、『ハウス・プア』状態になった人たち、家を借りるためジョンセ保証金の貸し出しを受けて昼食も食べられなくなった人たち、揺れている不動産価格、世界一と言われている家計債務、そして、完全に止まっている経済政策、などなど。

 

これらが『日本で金融危機が起きる』という主張でどれだけ中和できるのかは分かりませんが、それはともかく、個人的にそれらの中で一つだけ『もっとも気になるもの』を選ぶなら、プロジェクト・ファイナンス関連です。問題の『幅が広い』からです。プロジェクト・ファイナンス(PF)ももう本ブログで何度も取り上げましたが、例えばマンション団地を作る場合、そのプロジェクトそのものを担保にして貸し出しを受けることです。ちゃんと完成して、ちゃんと売れることを前提とします。さて、ちょっと意外なことに聯合ニュースが今朝のニュースでこの件を特集しましたが、もちろん『先順位(関わった会社の信用も含め、担保としての価値が高いプロジェクト)』か『後順位(低い)』なのかで差はあるものの、証券会社からかりる場合のPF関連貸出金利は、年初には3.5%前後だったそうです。これが、最近は金利20%、場合によっては30%まで上がった、とのことでして。これまた、急すぎます。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。

<<・・23日、建設業界によると、業界は最近、三重高に苦しんでいる。原材料価格の上昇などによる工事費の引き上げ、昨年までは問題なかった分譲市場(※工事を始めるまえから、その家が買える権利となる『分譲権』などの形で販売が始まります)が、今年に入って凍りついた。ここに、資金調達まで詰まった。建設産業の主な資金調達手段であるPFが、もう全面中断といってもいい状態で、あちこちで新規事業が中断される事態が続出している。ある不動産施行会社は、ソウルで土地購入を進めたが、PFを起こすことができず、土地購入の残金納付に問題が生じた。

 

ある不動産施行会社の代表は、「年初に3.5%だった証券会社PFローン金利が、今は、先順位は10%、後順位は20%まで上がったのに、それでもローンの相談に乗ってくれない」、「不動産業界の資金調達が、深刻な状態だ」と話した。京畿道(キョンギド)で都市開発事業を推進する別の施行会社は、土地代金を調達しなければならないが、貯蓄銀行(※普通の銀行より貸し出しが受けられる基準は低いが、金利が高い、いわゆる『第二金融圏』)で後順位PFローン利子として30%を提案され、そのまま呆れるばかりだった。この施行会社の代表は、いったん自分の資金と、知人から借りてなんとかその場しのぎはできたものの、他の事業場からまたPF満期が迫っているため、夜にも眠れないという。

建設業界は、PFが問題になるのはもう秒読み段階だという。不動産開発協会のある関係者は、「建設会社であれ施行社であれ、土地買取など新規事業はすべてオール・ストップされたと見れば良い」とし「金利が上がり続けるが、PFローンは詰まり、工事費は最近20~30%ずつ上昇した状態なので、現金動員力のない施行会社は耐えることができない」と話した。韓国住宅協会の関係者は「PFで問題が拡散すれば、中小建設会社から、そして地方から、バブルが弾けるだろう」とし「政府が積極的に対応しなければ、建設業界はもちろん、経済そのものに大きな影響を及ぼすだろう」と懸念した(聯合ニュース)・・>>

 

一部のメディアは、『その時点は、来年の末あたりになる。ソースは、経験』という話も載っています。こちらは本物の『危機』に眠れないでいる、といったところでしょうか。先も書きましたが、このPFには複数の金融機関(銀行ではないところも含めて)が絡み合っています。『毎日経済エコノミー』はこれを『複雑に絡み合った200兆ウォン』としながら、こう説明しています。簡単に言うと、「大手でもないし『銀行』でもないところが、お金になるからっていろんな会社と絡み合ってプロジェクト・ファイナンス事業に参加している。問題が生じれば、様々な会社にシステムレベルで波及する」といったところです。

<<・・グローバル的に中央銀行の緊縮で金利が急騰し、不動産PFに危機論が広がっている。不動産PFは、建設会社が事業を施行するとき、事業権を担保に金融会社からお金を借りることだ。前には、銀行が融資を担当し、大型施工会社が加わって信用を補強する仕組みでPF資金調達が行われた。しかし、2008年の金融危機以後、システムが変わった。建設会社の財務構造が悪化し、銀行(※普通の銀行、第1金融圏)に対し、貸し出しを慎重行うようにする制度が大幅に強化された。

 

その隙に、高収益を狙って、証券会社をはじめ、いわゆる第2金融圏が、先を争って不動産PF市場に入ってきた。不動産開発事業には、マルチ・レバレッジが動員されるため、「金融」が不可欠である。通常、開発事業に必要な基本の資本金にも、「他人資本」を混ぜてレバレッジ効果を高める。 SPC(Special Purpose Company)という特殊目的会社と繋がったレバレッジも動員される。SPCは、不動産開発事業の利回りを踏まえる際に決定的なレバレッジ装置として機能する。不動産PFローンの過程で、金融会社は債務保証や直接ローンを提供し、保証手数料や利子などを得る仕組みだ。

特に国内証券会社は、代替投資などポートフォリオ多角化戦略の一環として不動産金融事業に積極的に飛び込んだ。資本金が多い超大型IB(投資銀行)を中心に、開発事業の土地契約金融資をはじめ、プロジェクトファイナンシング後順位投資、プロジェクト金融投資会社の出資貸与、後順位担保融資、事業費融資、普通株式投資などに乗り出したのが、端的な例だといえる。景気低迷の時には、それだけ『システム』としての懸念が大きくなるわけだ(毎経エコノミー)・・>>

で、こんな中、尹大統領に対する大規模ろうそく集会があった、とのことでして・・もうこんな状態じゃ、国会で何かの案件が普通に通過、成立できるとは思えなくなりました。もし現金化関連で何かの案があるとしても、それがちゃんと国会で語られる可能性は無いとみていいでしょう。

 

 

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