韓国、各メディアに広がる金融危機の懸念・・大手新聞「思えば、いつも危機の始まりはPF(プロジェクト・ファイナンス)だった」

12日、韓国銀行が基準金利を引き上げてから、多くのメディアがその副作用についての記事を載せました。本ブログでもこの2週間、集中的にお伝えしてきました。さすがにもう書くことも無いだろうと思っても、次々と記事が出てくる、そんなところです。で、その2週間前から一部のメディアがプロジェクト・ファイナンス関連記事を載せましたし、本ブログもこの件を重く見て、いくつかエントリーを書きましたが・・それでもやはり、家計債務、物価、マンション価格、そんな記事に比べると、韓国での注目度は高いとは言えませんでした。

しかし、カンウォンレゴランドのこともそうですが、大企業も例外なく資金調達、いわば流動性に大きな問題が発生しているというニュースとともに、プロジェクト・ファイナンス関連の記事が大手新聞でも大きく取り上げられるようになりました。ちょっと書き方を変えてみると、『借りた人も企業も心配だが、貸した金融機関もまた心配だ』になったわけです。今日もまた、中央日報(記事1記事2)で連続でこの件を取り上げましたが、その中に、『思えば、1997年(いわゆるIMF期間)にも、2011年(いわゆる貯蓄銀行事態)にも、その中心にはプロジェクト・ファイナンスがあった』という内容もありました。今回は、細かいデータではなく、この話を紹介したいと思います。

 

ちなみに、貯蓄銀行事態とは、2011年あたりから、『第二金融圏』の代表格である貯蓄銀行各社に問題が発生し、事業に関連していた多くの建設会社などが共に倒れたのはもちろん、預金が保護されなかったことで預金を預けていただけの人たちまで巻き込まれ、多くの爪痕を残しました。当時、「預金保護は5000万ウォンまで」というフレーズが有名になり、関連したいくつかの法律が整備されるきっかけにもなりました。以下、各記事、<<~>>が引用部分となります。一応、一つ前のエントリーと繋がっている内容でもあるので、未読の方はぜひお読みください。

<<・・国内不動産市場は「先・分譲、後・施工」方式が一般的だ。不動産を建てる前に、まず売る。ところが、『先・分譲』をしても、その不動産を建てるための土地を買う資金と、事業を進すめる費用は必要だ。それで不動産事業の「花」と呼ばれるプロジェクトファイナンシング(Project Financing)が求められる。PFは、信用や担保ではなく、事業性が融資の根拠だ。該当施行会社が建てる不動産の価値がいくらかを「それぞれの基準」で評価する。金融会社ごとにPF金額が異なる理由だ。投資としての側面が強いだけに、収益は一般融資より大きい。該当不動産がよく売れて「大当たり」が出れば、融資条件によって30%を超える利益を得ることもできる。しかし、リスクが大きい。完工後に該当不動産がすべて売れなければ、利子どころか元金の回収も難しくなったりする・・

 

・・(※一つ前のエントリーで紹介したカンウォンレゴランド、その他などなどで資金流動性が詰まっている状況を紹介した後に)このような今の状況、前にも見たことがある。1997年いわゆるIMF期間の時と似ている。当時、経常収支赤字、高い金利、外貨保有高など、問題の前兆はいろいろと多かったが、国が倒れた信号弾は「ハンボ(韓宝)事態」だった。財界14位大企業だったハンボは、政界の有力者を動員して5兆ウォンを借りた。製鉄所を建てるという名分で貸し出されたプロジェクト・ファイナンスだった。後の監査結果によると、2000億ウォンを除いた残りの資金の行方は、分からなかった。その5兆ウォンは、不良債権となり、金融圏は資金が梗塞することになった。

2011年「貯蓄銀行事態」の中心にもPFがある。該当年度だけで、貸し出しを行った金融機関16か所が営業停止され、政府は今まで27兆ウォンを投入して31の貯蓄銀行を整理したが、回収した金額は13兆ウォンに過ぎない。当時、釜山貯蓄銀行は預金の半分にあたいする4兆ウォンを各種PFに注ぎ込んだ。すでに、「第2のIMF」の兆候は様々なところで現れている。与党・野党は、政治で争っている場合ではない。国家が倒れる経験など、二度もしたくはない(記事1)・・>>

 

次は、別の記事ですが(※記者は同じです)、こちらも『プロジェクト・ファイナンスが第二金融圏に集中しつつある』という内容です。おおまかな方向性は目新しいわけではありませんが、『2008年までは、こんなものではなかった』という説明など、他の記事からはなかなか読めない内容も含まれています。 <<・・PFが問題になったのは、2008年の金融危機以降だ。それまでPFは、ほとんどが銀行(※普通の銀行、第一金融圏)で取り扱っていた。銀行は自己資本に余力があり、PF進行中に問題が生じても、銀行レベルでなんとか対応できた。その上に、当時は、PFの基本前提が「建設会社(施工会社)の支払い保証」だった。該当事業の進行に支障が生じても、建設会社が代わりに返済するという約束が必要だった・・

・・だが、大宇建設など大手の建設会社まで相次いで倒れ、財務がよほど健全でない限り、建設会社は支払い保証ができなくなり、完工する義務だけ負うという『責任保証』に旋回した。銀行の立場からすると、リスクが大きくなったのだ。国会政務委員会所属「共に民主党」のパクソンジュン議員が韓国銀行から取り寄せた資料によると、金融機関の不動産PF貸付残高は2012年の37兆5000億ウォンから今年6月末には112兆2000億ウォンと、3倍に増えた。2012年には、全PF貸付残高で銀行(※第1金融圏)が占める割合は65%だったが、現在は25%にすぎない。

 

大きくなったリスク負担で、銀行が慎重になっている間に、保険会社、証券会社、与信会社、貯蓄銀行、キャピタルなどが入ってきたのだ。保険会社の場合、2012年に13%水準だった保険会社のPF貸付の割合は、去年6月基準でで38%に急増した。同じ期間、与信会社が占める割合も7.4%から23.7%に上昇した。自己資本に余裕がない中小証券会社は、特にPFに頼っている。韓国信用評価によると、証券会社24社の自己資本に対するPF(ブリッジローン+本PF)の割合は、平均39%だ(記事その2)・・>>

なんか、不動産市場そのものが、何もかも『サブプライム』地帯になっている・・そんな気がします。一つ前のエントリーにも同じ趣旨を書きましたが、サブプライム層から始まって、それが連鎖していく形になると、それは止められなくなります。さて、韓国銀行は、年内にもう1回金利引き上げを行うとしています。ほぼ確実、とも。さて、引用部分に政治関連の話がありましたが、これまた史上初、大統領の施政方針演説に参加しませんでした。何一つ協力しないという意志の現れだ、とのことです。

 

 

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