米国のインフレ抑止法による、電気車補助金問題。基準金利の引き上げによる様々な副作用、時を同じくして江原道レゴランド事態が大きな話題になって、最近はあまり記事が載らなくなりましたが、つい1ヶ月前までは尹錫悦(ユンソンニョル)政権の最重要課題の一つとして、連日のように大きく報じられていました。韓国側の主張の核心は、「米国から、『価値同盟』国として妥当な優待を受けるべきだ」というものです。
何度も書いてきましたが、韓国側の雰囲気は、「尹大統領の登場で、完全に米国側に舵をきった。もう戦略的曖昧さが無くなったので、中国との関係が気になる」ということになっています。関連情報(本ブログにも多くのエントリーがありましたが)を知っている方々だと「いやいや、どうみてもそうは見えないのだが」としか言いようがありませんが、『そういうこと』になっています。日本に対しても、政権初期から、これといって何もせずに「日韓関係を改善すると言・っ・て・い・るのに、なぜ岸田政権は呼応しないのか」という論調が強かったですが、それの対米バージョン、とでも言いましょうか。
もちろん、政権初期から、『尹大統領は、政策協議団を日本に派遣し、就任式に岸田総理が参席するようにし、日韓首脳会談を経て、それでバイデン大統領との首脳会談でクアッド加入を認めてもらい、そのままバイデン大統領と一緒に日本に行ってクアッド首脳会議に出席する予定だった。しかし、何もかもうまくいかなかった』とする指摘(東亜日報)など、雰囲気は何も変わってないという指摘もありましたが、多勢に無勢。ほとんどは『もう米韓は同じ価値観をもとに結ばれた価値同盟だ』という論調は、ずっと続きました。
そして、インフレ抑止法、半導体関連法案、その他いろいろで、『だから、もっと米国からそれにふさわしい優待を得るべきだ』という論調も強くなったわけです。ちなみに、尹政権になってから、何か軍事演習など前より活発になったような報道が多いですが、実は前から行っていたものにすぎません。最近よく記事になる日米韓のミサイル警報訓練なども、実は文在寅政権からずっとやっていたものです(北朝鮮のことを気にして非公開にしていただけです)。そんな『価値同盟なのになぜ~』論調が特に強いのは、最近だと、インフレ抑止法(電気車補助金対象)関連と、有事の際の台湾防衛です。後者に関しては、JTBC(9月26日)の記事がもっともハッキリしていますが、『対北朝鮮が優先ですので』というのが、尹政権の公式スタンスです。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。
<<・・尹大統領がCNNとのインタビューで、我が国としては台湾問題より北朝鮮核問題が優先だと述べました。CNNは尹大統領とのインタビューで、『中国によるが台湾の有事の際、米国を支援するかどうか』を尋ねました。尹大統領は『もしそんなことになったら、北朝鮮も動く可能性が高いため、大韓民国としては、強力な韓米同盟をもとに北朝鮮に対応することが最優先の課題になるのではないかと思います』と答えました。『米国が台湾より朝鮮半島を優先視すべきだという話なのか』という質問にも、即答を避けました・・・・去る8月、ナンシー・ペロシ下院議長の件が、中国のためなのかという質問も出ました。尹大統領は『国会議長の招待で訪韓したペロシ議長と、休暇中の大統領が面談すべきかについて、様々な意見があった」、「ペロシ議長も個人的な休暇の重要性を知っていて、電話で理解した」と話しました(JTBC)・・>>
しかし、言うまでもなく、米国側から、『そうはいくか』というメッセージが相次いで発せられています。ニューシースの報道によると、イエレン財務長官はインフレ抑止法について『そのまま実行されるべきだ』と話しました。また、聯合ニュースによると、シャーマン国務副長官は台湾の防衛に関して『日本と韓国』を指名しました。いままで、インフレ抑止法で一定の外交的成果が得られたとしてきた尹大統領は、財務長官の発言を『米国政府の立場とは違う』と話しました。
<<・・ジャネット・イエレン米国財務長官が、韓国産電気自動車に対するサベ○条項(※○は『ツ』です)を盛り込んだ米インフレ抑止法を、法的にそのまま施行すると述べた。これに対して、尹大統領は「米国政府の公式的な立場と差がある」と明らかにした。尹大統領は26日午前、ソウル龍山庁舎出勤道略式会見(ドアステッピング)でイエロン財務長官に関する質問を受け、「米国政府の一般的な立場とは違いがあるようだ」、「もう少し見守りましょう」と付け加えた。イエレン長官は24日「インフレ抑止法関連で韓国とヨーロッパの懸念について多くを聞き、私たちはこれをはっきりと考慮するだろう」としながらも。「法がそうなっている。私たちは法に書かれた通り施行しなければならない」と話した(ニューシース)・・>>
<<・・ウェンディ・シャーマン米国国務省副長官が26日、台湾の自衛を保障するために、韓国、日本と協力するという意見を明らかにした。シャーマン副長官はこの日、東京で開かれた日米韓外交次官協議会が終わった後に開かれた共同記者会見で、関連質問にこのように答えた。「私たち(米国)は(中国の脅威に対抗して)台湾が自らを防御できる能力を支援するだろう」、「私たち(日米韓外交次官)はこの問題を議論した。私たちは台湾海峡の平和が必要であることに同意した」とし「これは世界の通商、平和および安定に非常に重要だ」と説明した。シャーマン部長官は、「米国は台湾の独立を支持するのではなく、平和保障を望んでいると公に繰り返し言ってきた」とし、「米国は台湾を支援するために私たちができることなら何でもし、台湾の自衛を保障するために日本および韓国と協力するだろう」と明らかにした(聯合ニュース)・・>>
「北朝鮮問題を利用し、中国関連案件から『例外』を認めてもらおうとする」。これが尹政権外交の基本方針の一つです。しかし、『的外れ』外交はいまの続いているようで・・財務長官は議会で成立した法案を『そのまま施行する』と話したことを『政府の立場と違う』と話したり、台湾関連は完全に『自分とは別世界の話』のようにする尹政権の外交が、日米と足並みを揃えることは、容易ではないでしょう。野党が施政方針演説に参加しないなど、国内での何かの政策は、もう期待できなくなりました。外交においても、何一つ、進展と言えるものが見当たりません。何もせず、何も出来ず、口で『関係改善』を主張し、だから相応の優待をしてくれという外交。そんなものがどれだけの成果を収めることができるのでしょうか。最後に、「またか」な告知ですが・・今日の更新はこれだけです。今日は、これといって理由があるわけではなく、ちょっと休みたくなっただけで、さらに申し訳がありません。次の更新は、明日のいつもの時間(11時前後)になります。
本エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2022年9月2日)からですが、<尹錫悦大統領の仮面 (扶桑社新書)>です。文在寅政権の任期末と尹錫悦政権の政策を並べ、対日、対米、対中、対北においてどんな政策を取っているのかを考察しました。政権交代、保守政権などの言葉が、結局は仮面が変わっただけだということ、率直に書きました。 ・準新刊<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>も発売中です。「私はただ、日本が好きだから、日本人として生きたいと思っています」。これが、本書の全て、帰化の手続きを進めている私の全てです。 ・既刊として、日本滞在4年目の記録、<「自由な国」日本「不自由な国」韓国 韓国人による日韓比較論 (扶桑社新書) >と、新しく出現した対日観について考察した<卑日(扶桑社新書)>も発売中です。 ・新刊・準新刊の詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。 ・本当に、本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。