韓国メディア『米国との通貨スワップ締結は、同盟国にとって一つの『格付け』である』

通貨スワップは、米国がその国についてどう思っているのかを表す、一つのランク付け(原文では『等級』)であり、米韓同盟は、事実上『3等ランク』扱いだという主張が提起されました。東亜日報系列の月刊紙、『新東亜』の記事です。基本的には、文在寅(ムンジェイン)政権によってこんなことになったという、明らかな保守支持の主張ですが、これはこれで、かなり異例な主張ではあります。

なぜなら、『尹錫悦(ユンソンニョル)政権はもう完全に米国側に舵を切った。中国との関係をどう管理するかだけが気になる』ということになっているからです。インフレ抑止法(電気車補助金)などが問題になってから、常に「なぜだ」という論調になっているのも、そのためです。ソース記事は、尹政権や朴槿恵政権には何の問題もないとするニュアンスですが(朴槿恵政権も中国関連でものすごく不安定な姿を見せましたが、そんな内容はありません)、それでも、「文政権がいろいろやったので、政権が変わっても、もう格付けが上がるのは難しい」という現状認識は書いてあります。どういう主張なのか、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・米中競争の時代、米国は中国に対する封鎖への寄与度を中心に、同盟のランク付けをしている。 ランク1は、常時通貨スワップ対象国である欧州連合(EU)、英国、日本、カナダ、スイスだ。 ランク2は、、対中封鎖に積極的なオーストラリア、インド、ニュージーランド、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム、シンガポール、ブルネイ、フィジー、韓国などだ。ランク3は、米国連邦準備制度(Fed)と常設FIMA RepoFacility)を結んだ国だ。我が国はランク2ではあるが、米国と通貨スワップを結ぶことができなかった。事実上のランク3に近いわけだ。

通貨スワップとFIMAは取り引きの限度が600億ドルという点で似ているようにも見えるが、かなり違う。通貨スワップは必要に応じて自国通貨をドルと交換する。したがって、外国為替保有額が増える。一方、FIMAは保有した米国国債を担保として預けたため、全体の外国為替保有額は増えない。代わりにドルを現金の形で使うことができる。それ以外のランクだと、中国、ロシア、北朝鮮、イランぐらいだ・・・・米国のインド・太平洋戦略に対する朴槿恵元大統領の前向きな措置は、一時的な韓米通貨スワップを締結することに決定的に寄与した。

 

朴元大統領当時ランク1に属していた米韓同盟は、2021年12月、事実上のランク3同盟になっているよう見える。文在寅政権は通貨スワップを延長できなかった。いまはFIMA締結対象国になっているだけだ・・・・文在寅政権のとき、外交政策基調は「均衡戦略(バランス政策)」だった。米国と中国の間でバランスをとるという意味だった。これは盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の北東アジアバランサー論を継承したものだ。米国中心の同盟関係を、中国を利用して再編するというのが政策の基調だった。これは中国の浮上と米国の衰退論に基づく。盧武鉉政権だった2008年にも、中国の成長は著しかった。中国の人民元がドルにかわって基軸通貨になるという予測まで出ていた。

 

文前大統領はこれに基づいて、日米韓関係を少しずつ揺らした。2019年8月22日、日韓軍事情報保護協定(GSOMIA)締結を破棄するといった。米国は文政権のGSOMIA関連決定に継続的に残念を表明した。同年11月9日、マーク・ミリ米国合同議長が、日本行きの飛行機の中で「米国人は、なぜ在韓米軍が必要なのか知らない」とし、駐韓米軍の減縮を示唆する発言をしたこともある。結局、2019年11月22日、政府はGSOMIAを毎年再交渉する条件に、延長した。

米国が主導する4カ国安保会談(QUAD・Quadrilateral Security Dialogue)加入もしなかった。昨年5月20日、首脳会談のために米国を訪問した文大統領は、下院議長団懇談会でクワッド参加要請を受けたが、明確な反応を示さなかった・・・・再び繰り広げられた北東アジアバランサー論は、なにもかもうまくいかなかった。今年3月、尹錫悦大統領は、クワッド加入を段階的に推進すると明らかにしたが、5月2日、ホワイトハウスのスポークスマンは「QUADはQUADとして残るだろう」とし、既存加入国である米国、日本、インド、オーストラリア以外の追加加入はないだろうと言った。もはや、米国が韓国のQUAD加入を負担に思うようになったのだ。米韓通貨スワップも、今では不可能に近い(新東亜)・・>>

 

さて、どうでしょうか・・もちろん、文政権のときにいろいろ、実にいろいろあったのは分かります。それが現状に影響しているのは間違いないでしょう。しかし、個人的には、「いつものことだが、連続した一つの国ではなく、政権『だけ』で物事を分けて考えているのではないか」、そんな気がします。朴政権でも文政権でも尹政権でもなく、米国や日本からすると、一つの国のことですから。文政権5年間だけでなく、その連続した過程、いやそれ以前から続いてきた過程によって出来上がったものが、米韓関係、日韓関係の今ではないでしょうか。

そもそも、朴槿恵大統領や今の尹大統領も、文政権と同じ『バランス』志向です。通貨スワップも、もちろん米国の外交と関係があるでしょうけど、いまの米国の通貨政策はドル高であり、通貨スワップをする理由がないという側面もあります。いわば、AとBが締結するなら、それはAにもBにもなにかシナジー効果がある、そんな前提が必要ですが、いまはそんな状況ではない、と。同盟なら、そんな流れに関しても、ある程度の認識を共有しているはずです。何かハッキリ示すこともせず、『もらう』だけにこだわるのは、同盟ではありません。ただ一つだけ、通貨スワップをほしがっているということだけはよくわかりました。 最後にまた告知ですが、明日(5日、土曜日)は、1日休むことになりました。次の更新は、6日(日曜)の朝11時前後となります

 

 

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