韓国不動産市場に関する、大学教授のシンプルな分析・・『能力値を超える高価なマンションを買うからです。だから、こうなるしかありません』

韓国の不動産価格、特に『人気』とされた地域のマンション価格が下落しつつあるという記事は、もう目新しいものではありません。先月の基準金利引き上げのときから、いわゆるヨンクルとか、ジョンセ(伝貰、家を借りるシステム)のための保証金融資の利子負担などで、多くの記事がありましたし、本ブログでも、いくつか紹介してきました。ただ、その表現において、多少の変化が感じられます。

それは、いままでは「市場の安定」という表現が主流だったと思いますが、最近・・というか今月に入ってからは、ハードランディング、またはハウスプアという表現が目立つようになったことです。単に事例を並べる記事から専門家の分析を載せる記事までいろいろありますが、その中で一つ、『簡単明瞭』と思われる記事がありました。ローカルメディア嶺南日報(※嶺南・・ヨンナム、現在の大邸・釜山など主に南東地域)、大邸カトリック大学のジョンガンス経済金融不動産学科教授です。教授はもうハードランディングは避けられそうにないとしながら、その2つの理由を書いています。

 

まず一つは、『一言で、自分の能力値を超える価格の家を購入したことによる、キャッシュフローのオーバー』を挙げています。なぜそうなるのかというより、そうなるしかない、というニュアンスです。またもう一つは、金利引き上げです。尹政権がどんな政策を打ち出してきても、金利引き上げの影響があまりにも大きいので、それでなんとかなる状況ではない、というのです。また、その2つほどではないものの、文政権のときに実施した不動産関連政策が、実際に価格を押さえることはできず、不動産保有においての負担を強くしておいたのも、現状の一因ではある、とも、以下、<<~>>で引用してみます。

<<・・不動産市場が、不思議だ。ほんの数ヶ月前でも、マンション価格の高騰が収まる兆しなど無かったし、どんな政策でも住宅価格を何とかできるわけがない、そんな主張が一般的だった。ところが、突然、市場の状況が変わった。取り引きはどこにも当たらないし、ただ上がるだけかのように見えた価格が、下がってきた。当初は首都圏郊外の、いわばあまり人気がない地域で起こる局地的現象だと思われたりもしたが、今はソウル、江南(※カンナム、ソウルでもっとも高いとされる地域)でも同様のことが起きている。

 

これまで、ギャップ投資(※それまでジョンセで暮らしていた家を、貸出を受けて差額を用意してそのまま購入する)や、なんどもかきあつめて家を買う(※ヨンクル)として、一攫千金を夢見た人たちは、いろいろ複雑な状況となった。新政権が、住宅価格を押さえるために何か画期的な政策を出したわけでもない。なのに市場状況の反転速度が速すぎで、このままだとハウスプア、家を持っているもののその元利金の返済負担で大変な、そんな人たちが量産され、不動産発の金融危機が発生するしかない。一体、不動産市場に何があったのだろうか。

まず・・・・「勝者」になりたくて、過ぎた費用を支払ったからだ。いままで数年間、不動産市場は、価格が上昇しているにもかかわらず需要が増加するという、不自然なことが発生していた。人々がどんどん高価な家を買い入れる理由は、将来的に価格がさらに上がると思っているからだ。このお金、あのお金とできるかぎりかきあつめて、自分の能力値を超えて、高価な家を買い入れた。その場合、すぐにキャッシュフローの影響を受ける。購入した住宅の価格が高いほど、この影響は大きくなる。

 

住宅価格が上がる時は、差益を期待して耐えることもできるだろうが、いつまでも耐えることなどできない。耐えられなくなって、買い取った住宅を売りに出す人が出始めると、そこから家の価格上昇傾向は鈍化する。次に、文在寅政権の不動産政策の効力が現れた。支持率を懸念し、発足後、ずっと関連政策を打ち出さなかった文在寅政権は、2019年12・16対策と2020年7・10対策を通じて、ローンを制限し、課税を大幅に強化し、住宅価格関連の取り組みに乗り出した。ここに公示価格の現実化計画まで加わり、不動産保有費用の増加は増えることになった。実際に価格が下落するまではいかなかったが、不動産取り引きが凍りつくようになった一因ではある・・

・・次に、このような状況で、米国の「急な」金利引き上げが起き、政府がそれに合わせて金利を大きく引き上げたのが、決定的だった。ローンで高価住宅を買い入れた人々のキャッシュフロー上の『圧』が急増するしかない状況になったのだ。ここから抜け出すためには、家を売って貸し出しを返済したいだろう。でも、売りに出しても売れない。金利引き上げで需要が消え、資金圧迫で家を売却しようとする人(供給)は増加するから、さらに価格下落に勢いがつく・・・・もし、金利を急に上げなくてもいい状況だったなら、不動産市場はソフトランディングも出来るかもしれない。しかし、現状はそうではない。現政権は、不動産関連の制限と課税を緩和する方向で対処しようとしているが、金利引き上げの影響があまりにも強いため、それでソフトランディングできるとは思えない(嶺南日報)・・>>

 

他にも、あまり大手とは言えないところで、同じ趣旨の記事が出ています。急な金利引き上げでローン利子負担が急増したのはもちろんあるけど、そもそもそのローンが無理なものではなかったのか、というのです。また、売りたくても買う人がいないので取り引きそのものが成立しない、とも。2008年、サブプライム住宅ローンやリーマン事態などで始まった金融リスクは、ある程度の時差を置き、2010年頃に『貯蓄銀行事態』に繋がりました。なんだかんだで、第1金融圏が利用できない人たちが利用する金融機関で、ちゃんとデータが公開されている(第3金融業とされる貸付業者レベルからは、例えば家計債務などにデータがちゃんと反映されません。第1、第2のように他の金融機関とデータを共有しないところがあるからです)貯蓄銀行。

それが連続で倒れてしまい、資金回収が始まったことで、当時も大きな問題になりました。ハウスプアという言葉が各メディアで流行るようになったのも、2010年頃です。アメリカの金利引き上げに世界中が影響されるというのは、当時、というか今までなかなか無かったパターンではありますが、最近よく記事になる貯蓄銀行、保険会社、証券会社など第2金融圏への懸念、また目につくようになったハウスプアという言葉。今回もまた、なにかの『事態』として名を残すのでしょうか。1997年から、『事態』が多すぎないか、という気もしますが。最後に、引用部分の最後の段落、『金利を引き上げなくてもいい状況なら、こうはならなかっただろう』という言葉が、一つ前のエントリーで紹介した、『債務の利子のせいで金利を引き上げることができないから引き上げないでいるだけだ』という論拠(?)の、隠れた本音のようにも見えます。これもまた、気のせいでしょうか。

 

 

・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。

  ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2022年9月2日)からですが、<尹錫悦大統領の仮面 (扶桑社新書)>です。文在寅政権の任期末と尹錫悦政権の政策を並べ、対日、対米、対中、対北においてどんな政策を取っているのかを考察しました。政権交代、保守政権などの言葉が、結局は仮面が変わっただけだということ、率直に書きました。 新刊<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>も発売中です。「私はただ、日本が好きだから、日本人として生きたいと思っています」。これが、本書の全て、帰化の手続きを進めている私の全てです。 刊として、日本滞在4年目の記録、<「自由な国」日本「不自由な国」韓国 韓国人による日韓比較論 (扶桑社新書) >と、新しく出現した対日観について考察した卑日(扶桑社新書)>も発売中です。 ・刊・準新刊の詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。 ・当に、本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。