尹政権「輸出する弾薬の最終使用者は『米国』以外許可しない。ウクライナ軍は使用できない」

昨日に続き、ウクライナ情勢に関する内容です。言うまでもなく、本ブログはウクライナ事態の一日でも早い収拾と、ウクライナの平和、繁栄を願っております。これを前提にして話を進めたいと思います。で、昨日、決議案関連の内容を書いてから、ネット検索していたら・・個人的に、ちょっと意外な部分がありました。「尹政権が今までの方針を変えて、ウクライナに武器を支援することにした」という見解が多かったからです。ウォール・ストリート・ジャーナルのなどが10日に報じた「尹政権が米国に弾薬(主に155mm砲弾)輸出を協議しており、それはウクライナへの武器支援になる」という趣旨の記事によるところが大きいようです。

これ、半分は合ってますが、半分は違います。尹政権は『米国に輸出する砲弾の最終使用者は米国であり、米国以外の国が使うには韓国政府の許可が必要だ』と明確にしています。すなわち、『武器は支援しない』という方針を変えていません(ヘラルド経済など複数のメディアが報じています)。変わったのは、米国の国内事情です。国内で使う分と、ウクライナに支援する分を考えると、155mmなど、一部の砲弾が足りなくなりました。そこで、韓国に輸出を打診しました。

 

4月あたりから、米国は『もし事情があって支援できないなら、米国が仲介役を担うとしよう』としてきました。当時は、武器が足りないというよりは、同陣営の意志を一つに集めるという意味合いが強かったと言えるでしょう。でも、尹政権は、その案にも乗りませんでした。しかし、今回は違います。米国は同盟国であり、韓国は武器の輸出にこれといって制限が無く、最近は防衛産業関連での輸出に力を入れているし、『最終使用者は米国』という前提を付けているのに、米国に輸出しないというのは流石にありえません。

今回の米国への輸出で、尹政権は米韓同盟の強化という目的を、米国はウクライナへの支援分も含めて在庫確保できるようになります。もちろん、ウクライナ軍に渡すのは、今回尹政権が輸出する分ではありません。米国が保有していた既存の分です。そもそも今回の輸出の件が最終的に確定したわけではありません(※協議があるのは事実だと国防部も認めました)。もし確定するなら、間接のまた間接という形で、支援に役立ったのは事実です。しかし、これを『尹政権が方針を変えてウクライナに武器支援』と見るべきかどうかは、意見が分かれるところでしょう。だから『半分』合っているわけです。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・米韓が155mm弾薬輸出の交渉を進めている中、尹政権は米国が購入した弾薬をウクライナに伝達することについては承認しないという方針だ。11日、国防部によると、米韓はロシアによるウクライナ事態において、ウクライナの支援で不足している米国の155mm弾薬の在庫を満たすため、弾薬購入協議を進行中だ。現在、米国はウクライナに142台の155mm曲射砲と共に92万4000発の弾薬を支援し、在庫量が大きく減っている状態だ。

これと関連し、イ・ジョンソプ国防部長官は先週、韓米安保協議会議(SCM)出席のため米国を訪問した時、ロイド・オースティン米国防長官と会って国内企業の155mm弾薬米国輸出に対して共感帯を形成したことが分かった。これに先立ち、ウォールストリートジャーナル(WSJ)は10日(現地時間)、複数の米官吏を引用し、米国が韓国から155mm弾薬10万発を購入した後、ウクライナに渡す計画だと伝えた・・

 

・・しかし、米国が購入した155mm弾薬をウクライナに伝達するには、防衛事業管理規定などに従い、必ず韓国政府の承認を受けなければならない。政府は、ウクライナに武器は支援しないという方針により、米国がこの弾薬をウクライナに提供する件については、承認しないという立場であることが分かった。国防部も、米国と国内企業の間の弾薬輸出協議は、米国を最終使用者とするという前提のもとで進めていることを強調した。

これにより、米国は今回購入する弾薬は国内備蓄用に回し、自国の弾薬をウクライナに提供するものではないかと思われる。よって、今回の件が迂回的にウクライナに弾薬を支援したものだという解釈の余地も残る。先にプーチンロシア大統領は、韓国のウクライナ武器及び弾薬提供を認知しているとし、その場合、ロシアとの関係は終わりに向かうだろうと話したことがあり、今後どんな反応を見せるかも注目される(ヘラルド経済)・・>>

 

同紙は18日にも同じ趣旨の記事を出していますが、これといった続報は無く、長期化の影響などを論ずるものでした。ギリシャなどが公開的に同弾薬の支援意志を示している、とも。昨日も同じ趣旨を書きましたが・・ASEAN首脳会議やG20において、尹政権は『いままでに比べると』足並みを揃える姿を見せました。これといって特記すべきところもなく、「フーン」なところでしたが、それでも今までよりはよかったと思います。さすがに中国に対しては、ちょっと「ユーン?」としたところでしたが、「ムーン!?」としていた頃ほどでもありませんでした。

でも、その後すぐ、ウクライナのクリミア地域人権決議案に同調しませんでした(一つ前のエントリー)。米国の同盟国が賛同せず、棄権のほうが賛成より多くなってしまった結果で。今回の弾薬の件も、もし確定するなら、何の意味も無かったと言う事はできないでしょう。でも、だからといって方針変更なのかというと、そうでもありません。ある意味、尹政権の立ち位置を表しているような案件ではないでしょうか。

 

 

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