韓国、金利20%のローンと販売信用(未決済のカード使用額)が大幅に増加・・専門家からの指摘が相次ぐ

韓国では、金融機関を第1、第2金融圏に分けます。第1金融圏は普通の銀行のことで、都市銀行などともいいます。金利は比較的安いほうで(あくまで比較で、これが普通ラインとも言えますが)、貸し出しが受けられるハードルは比較的高くなります。第2は、貯蓄銀行や単位農協(中央会ではないほう)などで、金利は第1より高く、ハードルは第1より低いと言えます。あまりよく目にする用語ではありませんが、第3金融圏というのもあります。合法的に運営している貸付業者のことで、普通は「貸付業」と言います。金利は、(もちろん人にもよりますが、基本的に)上限金利である20%覚悟、ハードルはもっとも低い、そんなところです。第3でもうまくいかなかった場合は、違法な貸付業者のところに行くしかないでしょう。

で、家計債務ですが、まだまだ増加は止まらないでいるものの、その増加の勢いは大幅に鈍くなった、という発表がありました。家計への貸し出しが減ったからです。中央銀行の金融統計チーム長はこの発表にて、「家計信用の増加の勢いそのものが鈍くなっており、ソフトランディングまでまだまだ時間はかかりそうだけど、いまのところ安定した形を示している」と話したりしました。しかし、その中身を見てみると、カード使用と、金利が高い(約20%)ローンが急増したことが分かります。

 

韓国で家計ローンが前年比で減少したのは、関連統計が始まってから、今年1~3月が初めてでした。4~6月期にはまた多少増えましたが、それが7~9月基準で、また減少となったわけです。全般的に増加の勢いが鈍くなり、前年同期比で減って、特に家計ローンが減少したとなると、少なくとも現状においては望ましい流れだと言えなくもないですが・・しかし、よくデータを見てみると、なんと、貸付業者(第3金融圏)の家計への貸し出し金額が、前年同期比で2兆8千億ウォン増えました。マネーSヘラルド経済など一部のメディアが、これらのデータを記事にし、『借りなかったという意味ではなく、借りられないから第3金融圏に行ったという意味ではないのか』『クレジットカードに頼るしかないという意味ではないのか』とする趣旨の記事を載せています。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・今年7~9月期の、金融圏の家計貸出が、前年同期比で3000億ウォン減った。住宅担保ローンと信用ローンの最高金利が8%台に進入し、住宅売買が凍りついた影響だ。それでも、同じ期間、全体の『家計信用』は1870兆ウォンを超え、再び歴代最大を記録した・・・・4~6月期から2兆2000億ウォン増加した。家計信用とは、家計が銀行など金融会社から受けた家計ローンと、クレジットカードの分割払いなど、まだ未決済の代金である「販売信用」を合わせた金額を意味する。家計ローンは、前年同期比で3000億ウォン減った1756兆8000億ウォンと集計された。家計ローンが減少傾向を示したのは、ローンの金利が上昇し、今年7月から1億ウォン以上の貸し出しを受ける人には個人別DSR(総負債元利金返済率)を適用するようにした影響だと分析される。

特に今年第3四半期の家計貸出は、住宅担保ローンの増加幅が縮小した影響を大きく受けた。第3四半期住宅担保ローンの増加額は6兆5000億ウォンで、今年第1四半期(8兆1000億ウォン)と第2四半期(8兆7000億ウォン)に比べて増加幅が大幅に減少した。不動産の取引が萎縮した影響だ・・・・今年第3四半期の家計ローンにおいて特に目立つ点は、銀行の家計ローンは減少傾向が目立ったものの、貸付業などの金融機関による家計融資は大幅に増加したという点だ・・・・強化された銀行のハードルが超えられず、貸付業を訪れる人たちが増えたためだと思われる。金融監督院によると、今年上半期の貸付業利用者の1人当たり平均貸付額は、2017年454万2000ウォンから2018年485万5000ウォン、2019年461万3000ウォン、2020年472万4000ウォン、昨年522万ウォン、今年1~6月653万ウォンと、上昇し続けている(マネーS)・・>>

 

<<・・家計信用の増加は、販売信用(カード代金)が牽引した。カード販売信用残高は113兆8000億ウォンで、歴代最高記録だ。1年前と比べると13兆2000億ウォンが増えたことで、このような増加幅も集計以来最も大きい。販売信用中心に家計債務が増えたことについて、家計の購買力低下が影響を及ぼしたという指摘も出ている。ソ・ジヨン常明大学経営学部教授は、「家計の購買力が下がり、分割払いが増えたと見られる」とし「DSR(総負債原理金返済率)がカードローンにも適用され、リボルビング(リボ払い)が増えたのも、同じ脈絡だ」と分析した。

キム・ヨンイク 西江(ソガン)大経済大学院教授も、「物価は上がるけど賃金はそのままで実質所得は減った。それでも消費をすぐには減らせないので、カード債務が増えたと解釈できる」と分析した・・・・問題は、信用に頼った消費は、持続力が低いという点だ。輸出不振が続く中、消費まで力を失ってしまえば、経済は低迷の沼にはまる恐れが大きくなる(ヘラルド経済)・・>>

 

教授の分析の部分・・「いや、消費を減らすという選択もあるのでは」な気もしますが。最後に、その貸付業者の利用者数についてお伝えします。貸付業者はデータを他の金融機関と共有しない(第1、第2金融圏はデータを共有しています)ところも多く、関連データの把握が不正確だとする指摘もありますが、2021年末時点で、貸付業者を利用する人は、112万人だと言われています。上限金利が27.5%だった2017年末には247万人を超えていた、とも。それから上限金利が24%、20%と相次いで低くなり、利用者の数も112万人まで減りました(ヘラルド経済の別の記事)。これは、『利益が出ない』という理由で、貸付業者側から事業を大幅に縮小したからではないのか、135万人はどこへ行ったのか?そんな指摘もありますが、はてさて。

 

 

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