韓国の電力関連データ・・電力は安いものの、事実上唯一の電力(配電)会社は『再来年には資本金まで全て無くなる』との指摘も

本ブログでも取り上げたことがありますが、韓国電力公社という会社(KEPCOともいいますが、以下、公社とします)があります。最大の公企業で、事実上、唯一の電力会社です。発電部門は6社の子会社に分割となりましたが、配電部門においてはいまだ1社体制で、導入予定だった価格入札制度(PBP)も永久未定のまま、変動費反映市場(Cost Based Pool、CBP)で運用されています。電気市場において、価格競争が存在しないといったところです。公社は、売れば売るほど赤字になる価格で電気を売ってきました。特に産業用電気が安かったと言われています。これは、家庭にも各企業にも、大きな経済政策となってきました。

2020年基準データですので当時の為替レートも考える必要があるでしょうけど、韓国の産業用電気価格はOECD平均の約88%で、MWhあたり94.3ドル。日本は161.9ドルでした。家庭用電気の場合はさらに安く、103.9ドル。これはOECD平均の60%水準です。日本は255.2ドル。各データは中央日報(9月25日)の記事からまとめました。公社や政府側は、効率性を上げたからこんなこともできるとかそんな主張をしていますが、結局は、赤字で供給しているだけです。結果、今年の公社の赤字は30兆ウォンを超えると言われています。

 

延世大産業工学科ジョヨンサン教授は、現状のもっとも重要な要因は、「燃料価格に連動した電力販売価格」を実現できなかったことにあるとし、これは間接的に、国内産業界の電力効率の向上をおろそかにする結果にもなったと主張しています(電気新聞11月11日)。今年1~3月基準で、赤字の約70%は一般用(家庭用)と産業用電力の販売部門で発生したもので、これは企業を支える結果になった、というのです。教授はこれを「産業間の交差補助」としながら、公社が損失をすればするほど、他の各企業が利を得る状況が作られた、その中で、各企業は電力消費の効率性などは考えなくなり、企業の電力効率性は、日本、ドイツなどに比べると、1.5倍にあたいする、と。

この赤字をなんとかするために公社が出した政策は、政府保証付きの社債を売りまくることでした。いわゆる韓電債(ハンジョンチェ)問題です。各メディアはこれをまるでブラックホールだとしながら、ただでさえ資金調達が難しくなった他の各企業において、これはただならぬリスク(他の社債が売れなくなる)だと指摘してきました。本ブログでも何度か取り上げましたが、ニューシースによると、今年(予想も含めて)の累積発行金額が70兆ウォンぐらいだそうです。ですが、この社債も、資本金+積立金の2倍までしか発行できません。よって、このままだと、再来年には資本金や積立金そのものが全て無くなるという指摘まで出ています。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・昨年と今年の赤字などを反映すれば、公社の会社債発行限度は、2023年には29兆ウォン水準まで減ってしまう。今年のような赤字が来年まで続くと、2024年には資本金と積立金の両方を使い果たすという展望まで出ている。国会産業通商資源中小ベンチャー企業委員会は、公社の会社債発行限度を、今の「資本金と積立金の合計2倍」から、5倍、8倍、10倍などに増やす案を置いて議論を続けている。しかし、最近の資金市場の状況を考えると、結論を出すのは容易ではない。

最近、レゴランド事態などで、市中では資金調達が凍りついている。最上位信用格付け(AAA)である韓電債に資金が集まっており、会社債発行限度を増やすと、資金市場そのもののリスクを加速させる可能性があるからだ。公社も困っているのは同じだ。その韓電債すらも、金利が今年初め2%台から最近6%台まで上がったし、それでも債券発行は次々と流札されている・・

 

・・政府は、この問題を解決するために、債券発行の代わりに、銀行からの貸し出しを増やすようにしたが、これにより、銀行側にも流動性問題が浮上し始めた。債券発行限度の上方が根本的な解決策ではないという点に政府も同意しているが、電気料金を一度に引き上げて経済に衝撃を与えるわけにはいかないだけに、上限の引き上げは仕方ないという立場だ。李昌陽(イチャンヤン)産業部長官は「(発行限度を増やさなければ)市場で韓電債に対する魅力がなくなるだけでなく、公企業破産の可能性についても相当な懸念が生じるだろう」と言った(ニューシース)・・>>

これまた21日にお伝えしたばかりですが、すでに金融当局は各銀行に『金利を上げないでほしい』と要請しています。なのに、同時に銀行側には『公社に貸し出しをしてほしい』とも頼んだわけです。韓国経済はこの点を指摘しながら、次のように記事を出しています。 <<・・ハナ銀行が、韓電公社に6000億ウォンを貸し出すことにしたことが分かった。これを含め、銀行は年末までに2兆ウォン以上を公社に貸し出す予定だ。これまで会社債市場が引き受けてきた公社への資金供給の役割を、銀行が負担する形になってきたのだ。しかし、銀行にもそんな余裕はない。

 

市中銀行(※第1金融圏)の公社への融資は、政府の市場安定化措置によるものだ。信用格付けAAA級の公社が今年大規模な赤字による資金難を埋めるために韓電債を発行しすぎで、資金市場が揺れている。政府が、公社に韓電債発行の代わりに「銀行融資」を増やすようにしたのだ。各金融機関は、韓電を含め、証券会社、建設会社支援などのため、年末までに合計95兆ウォンの流動性を市場に供給することにした。問題は、銀行にそんな余裕があるのか、という点だ。銀行は資金調達のために銀行債をもっと発行しないとならないし、預金をさらに受けなければならないが、政府は銀行債発行と金利を自制してほしいと要請したばかりだ。市場では、中央銀行が流動性供給に乗り出さなければ、年末の資金市場はさらに凍りつくだけだろうと懸念している(韓国経済)・・>>

ぜんぜん違うのに、なぜか「ジョンセ(家を借りるシステム)」に似ているとも思いました。一時は必要だったし、その効果も大きかった・・しかし、それを時代の変化に合わせて『多少の負担があっても、変える』タイミングを逃してしまい、もう片付けることすらできなくなってしまった・・そんな側面が、似ているからでしょうか。

 

 

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