韓国家計債務問題、多重債務者が増加・・452万人、金額約62兆円、延滞率8%(第2金融圏)超え

3か所以上の金融機関から貸し出しを受けている『多重債務者』が増加している、という記事がありました。ソース記事はソウル経済(記事1記事2)で、同じテーマの記事を複数出しています。記事の趣旨は、新型コロナ対策としてローンの満期延長、返済猶予措置などを取っているため表面化していないだけで、彼らは家計債務問題のもっとも『弱い環』であり、特に第2金融圏(貯蓄銀行など)、第3金融圏(貸付業者)の場合は、すでに延滞率が8.6%になっているというのです。借入金というのがいつもそうですが、返済できる能力さえあれば、3か所から借りようが4か所から借りようが問題ありません。しかし、どう考えてもそうは見えない人たちが増えている、と。

記事によると、金融機関3カ所以上でお金を借りた多重債務者(韓国銀行の公式基準で、2か所は含まれません)が、今年9月末基準で452万8000人。金額で618兆2000億ウォンです。6月末に比べ、1万9000人増えました。ソウル経済がナイス信用評価というリサーチ会社の資料をもとに調べたデータによりますが、そこで確認できる国内家計債務(家計ローン)統計のうち、多重債務者の割合は人数で22.7%、金額で33.0%と推定されます。記事は、資料上で確認できる金融機関を利用する全体債務者のうち、「5人の1人」としています。

 

記事は、関連統計において「30日間以上延滞する」を基準にして借主のリスクを考えるため、そのリスクは多少弱まったように見せる(4.7%)としながらも、それは、最近の満期延長・返済猶予措置など、そして、第1金融圏(普通の銀行)だけ3か所以上からローンを受けた人たち(38万4000人)の延滞率が低いためだとしています。彼らの『30日以上延滞』リスクは0.3%にすぎません。※第1の場合、多重のほうがそうでない人たちよりもむしろ延滞率が低いのが特徴で、これは、そもそも相応の返済能力が無い人なら、第1金融圏3か所で貸し出しを受けること自体が容易ではないからだと思われます(※の部分は私見です)。

逆に、第1金融圏以外からも貸し出しを受けた人、または信用ローン(担保無し)が全体借入金の3割を超えるなど一般的に『高リスク群』とされる人たち(多重債務者の9.2%)は、『30日以上延滞』率が8.2%でした。それよりさらにリスクが高いとされる「第1金融圏以外+信用ローン」の場合は、人数で8.7%、30日間以上延滞は8.6%まで上がります。もう一つ気になるのは、かれら多重債務者が、20代と60代以上で特に増えているという点です。

 

6月末基準ですが、20代の多重債務者数は38万7000人で、今年に入ってから6ヶ月間で1万8000人増えました。60歳以上も55万8000人で、9000人増加 。それに、今回の記事だけでもありませんが、まだほとんどのデータに『今年10月以降分』は含まれていません。基準金利引き上げによる問題が集中的に報じられるようになったのが(その前にも懸念事項として積極的に記事を出すところはありましたけど)、10月からです。ソウル経済は、「多重債務は金融市場の『弱い環』になるしかない。金利引き上げ期には、返済負担が増える。特に20代と60代の年齢層で急増しており、彼らのローンで問題が生じた場合、金融システム全般の問題になる可能性がある」としています。

30歳以下の青年層で本件が問題になっているという指摘は、前からありました。やはり、本ブログでも取り上げてきましたが、いわゆるヨンクルなど、マンション購入など、不動産投資のためにローンを受けた人が急増したからだと思われます。この部分だけマネートゥデイ(8月19日)ですが、韓国金融研究院が発表したデータ(2021年4月末基準)によりますと、30歳以下+多重債務の金額は158兆1000億ウォンで、2017年末と比べて32.9%も急増しました。

 

最近、『弱い環』という表現をよく見かけるようになりました。チェーンの強度はもっとも弱い環の強度で決まる(もっとも弱い環の原則)、というところです。安保関連でよく言われていましたが、最近は経済、金融関連です。いまのところ、もっとも多重債務が行われているのは、貯蓄銀行だと言われています。繰り返しになりますが結局は返済能力次第でしょうけど、貯蓄銀行が無いと、3か所以上から貸し出しを受けることは難しいということになります。でも、最近他のエントリーでもお伝えしましたが、最近、貯蓄銀行は貸し出しのハードルを結構上げました。そうなると、彼らは第3金融圏(貸付業者)のところに行くのでしょうか。

でも、上限金利が20%になってからは、貸付業者たちも営業を縮小しています。第1(普通の銀行)に比べて、資金調達にお金がかかるため、上限金利20%を受けても、利益が残せないという理由です。じゃ、その次はどこに行くのでしょうか。

 

 

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