メモリー半導体で、中国は韓国を越えるのか

日本、米国、台湾、EU、そして中国。誰もが「グローバルサプライチェーンのためだ」と語っているけど、どこをどう見てもフレンドリーサプライチェーンになりつつある、今日の頃です。そんな中聯合ニュースが半導体関連でシリーズ記事(ソース記事1記事2)を載せましたが、個人的に気になるのは2か所でした。一つは、日米台などにくらべて、関連法案が進まずにいることも含めて、韓国だけ、『追い出されつつある(記事の題、原文ママ)』こと。

もう一つは、半導体関連で、中国の記述力が先に追いつくのはメモリー分野であり、それは韓国の主力市場であること。シリーズは複数の記事で構成されていますが、該当部分だけ引用してみます。<<~>>が引用部分となります(※引用部分はメモリー分野メインになっていますが、ファウンダリー分野で中国が大人しくしているという内容ではありません。引用部分に無いだけです)。

 

<<・・昨年、車用半導体の需給問題で、サプライチェーンリスクが浮上し、米国と欧州連合(EU)、日本はサプライチェーンの再整備など、自国半導体産業の育成に本腰を入れている。ファウンダリー(半導体委託生産)分野世界1位企業であるTSMCを保有しているた台湾は、現在の半導体製造競争力優位を維持するため、先端産業を中心にリショアリング(海外進出企業の復帰)支援を推進中だ。半導体補助金投入など自国内産業強化政策も樹立した。

半導体産業復活を夢見る日本は、昨年11月、半導体工場の自国内立地支援などを含む「半導体産業基盤緊急強化パッケージ」を発表し、TSMCなど海外半導体企業施設の自国誘致を進めている。EUも今年2月に「欧州半導体法」を発議、2030年までに官民投資を通じて430億ユーロ規模のファンドを造成し、世界先端半導体生産でEU比重を現在の9%から最低20%水準に高めるという計画を立てた。

 

最近、産業研究院(KIET)が出した報告書によると、昨年の半導体産業の総合競争力を分析した結果、米国(96)が最も高く、台湾(79)、日本(78)、中国(74)、韓国(71)、EU( 66) 順に現れた。韓国はメモリ半導体分野では87で高い競争力と評価されたが、システム半導体分野では63で、もっとも低いとされた。総合評価でも6つの調査対象国のうち5位にとどまった。2020年の調査と比べると、1年ぶりに韓国と中国の順位が入れ替わった。2020年の5カ国対象調査では米国(93.4)が1位で、日本(78.4)、台湾(75.1)、韓国(68.6)、中国(64.3)の順だった。「K半導体」が、文字通り危機に直面したのだ。

ファウンダリー分野では、台湾ときびしい競争をしている。台湾のTSMCは史上初めて、今年7~9月期の世界半導体売上高でサムスン電子を追い越し、1位になった。TSMCは総合半導体(IDM)企業であるサムスン電子より収益性に優れ、委託生産という側面で、市況に振り回されない。需要を予測するのが難しいとされるメモリー半導体分野とは違う。産業の需要が先端産業中心に変わり、人工知能(AI)や自律走行など高性能分野でも堅調な需要を見せている。

 

一方、韓国の主力であるメモリ分野は、中国が天文学的な資金を注ぎ込んで人材を引き抜いて技術開発を進めており、すぐにでも追いつかれるのではないかという危機感が高まっている。DRAMの場合、前よりも業界間の技術差が急激に縮まっており、サムスン電子とSKハイニックス、マイクロンなど3強が14ナノ級プロセスに留まっており、技術的な限界を超えないかぎり、追い上げてくる中国から逃れるのは難しいと予想される。半導体産業構造上、多数の半導体源泉技術を保有した米国と、韓国の半導体輸出額の40%を占める中国の間で、どちらか片方に路線を定めることも難しい状況だ(記事1)・・>>

 

<<・・韓国が強みを持ったメモリ半導体部門では、中国のNANDフラッシュメーカーであるYMTCやCXMTのようなメモリ半導体メーカーが本格的な量産体制に入った。最近は米国の半導体関連措置で、韓国メーカーとしては一息つけるようになった。しかし、アップルが、米国の輸出関連措置により保留はしたものの、iPhone 14からYMTCのNANDフラッシュ搭載を推進していた点は、安心できない理由の一つだ。米中競争の激化と同時に、中国の半導体構築努力も強化されつつあり、現在韓国の最大半導体市場である中国はもはや「競争」相手に変化している。半導体投資専門家イ・ビョンドク SLキャピタル理事は、「今、私たちの企業も、中国を単に製品輸出市場だけで見ていては、中国企業との競争で生き残るのは難しいだろうと思う」と強調した(記事2)・・>>

 

すでに、中国と韓国の貿易構造は、中国が黒字を得る方向に転換された、との主張も出ています。いろいろ要因はあるでしょうけども、中国政府の内需強化政策により、今までは(韓国から)輸入していた中間財を、もう中国も自分で作れるようになったこと。これがもっとも大きい、とも。半導体においても、すでに関連装備で韓国から輸入していたものは、国産に代替されるようになりました。マネートゥデイの関連記事で、ジョンインギョ、インハ大学国際通商学科教授は、「私たちが中国に中間財を輸出し、(※中国で最終消費財を作って)中国が米国に輸出する仕組みが、もう機能しなくなった」と指摘しています。

聯合ニュースのシリーズ記事からもわかりますが、この流れは、次は半導体そのもの、特にメモリー分野に来るのではないか。もう来ているのではないか。そんな指摘が増えていますが・・もちろん競争もそうですが、半導体輸出40%の市場が『国産化』に成功することそのものが、もっと大きいかもしれません。

 

 

・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。

  ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2022年9月2日)からですが、<尹錫悦大統領の仮面 (扶桑社新書)>です。文在寅政権の任期末と尹錫悦政権の政策を並べ、対日、対米、対中、対北においてどんな政策を取っているのかを考察しました。政権交代、保守政権などの言葉が、結局は仮面が変わっただけだということ、率直に書きました。 新刊<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>も発売中です。「私はただ、日本が好きだから、日本人として生きたいと思っています」。これが、本書の全て、帰化の手続きを進めている私の全てです。 刊として、日本滞在4年目の記録、<「自由な国」日本「不自由な国」韓国 韓国人による日韓比較論 (扶桑社新書) >と、新しく出現した対日観について考察した卑日(扶桑社新書)>も発売中です。 ・刊・準新刊の詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。 ・当に、本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。