韓国のアパート(マンション)文化の不思議を研究した地理学者ヴァレリー・ジェルゾさんは、初めて韓国のマンション団地(同じものが並んでいる風景)を見て、それが人が住むものだとは思えず、『ああ、北朝鮮がせめてくると、あれを倒して防ぐのか』と思ったそうです(ソース記事KBSより)。飛行機が着陸するために高度を下げると、山とマンション団地しか見えないという話はよく聞きますが、さすがにその発想はありませんでした。怪獣映画などで見たことがあるようなないような。
記事の趣旨は、「韓国の住宅供給物量は決して足りないわけではない。そもそも、それは需要と供給のバランスの問題であり、数で数えるものでもない。しかも人口減少期に入った。なのに、なんでこんなにマンションを作るのに有利な政策が続くのか」というものです。偶然なのか、それとも何かの情報にもとづいて書いたのかは分かりませんが、この記事の2日後(今日)、尹政権が再開発・再建築の安全診断基準を緩和した、というニュースも流れています。文政権のときに強化した安全診断基準(団地周辺に大勢の人たちが暮らすための施設があるのか、なども事項も含めて)をすべて解除した、と。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・不動産市場には、いつも「家を買わなければならない」と話す専門家がいる。 彼らは「いまでないと、もうソウルのマンションで暮らすなんてできないかもしれませんね」と話す。地上波放送が運営するネットチャンネルの経済プログラムに出て「とにかく家は早く買うほどいいですよ」と話す専門家までいる。彼らの言葉を信じて、ヨンクルして住宅を購入した数多くの消費者たちは、今、相場下落と急騰した利子負担を負わなければならない。それでも専門家たちはまた言う。「家の価格は、上がるしかないんですよ、また上がりますからね!」。
市場の価格は、本当に予測するのは難しい。人間の心が関わっているからだ。価格予測ゲームで正解は一つだけだ。「上がるときもあり、下がるときもある」。それでも彼らは自信を持って言う。「住宅が足りなくて、家の価格は上がり続けるしかないんですから!」。そのような主張をする方々には、特徴がある。実に達弁だ。進行者の質問は終わってもいないのに、彼らの答弁はすでに出ている。以前に何をしていた人たちなのかはよくわからない。ただ、なんかそれらしい単語が付く研究所の所長だ。自分に有利な統計だけ実によくも持ってきて、説明する。
どこかの教授だとか、かなり信頼できそうな役職を持つ専門家も存在する。でも、その専門的な知識を備えた人々は、常に土建業界と共にする。彼らは、大型建設会社の社外取締役になったり、建設会社が出資した研究所が設けたカンファレンスで話したり、大都市の都市計画委員として活動する。数億ウォンもする大型研究プロジェクトも、彼らの役割だ。すべて、大型建設会社の支援が必要だ。 彼らの主張が土建業界と数十年間も一致してきたのは、本当に偶然だろうか。
彼らは今日も「住宅価格は上がり続けます。供給が足りませんから、上がるしかありません」という信念を共有する・・・・人口は急速に減少しているのに、このように引き続き超高層マンションばかりのソウルになるなら、近い将来、他の都市にある住宅では誰が住むのだろうか(KBS)・・>>
ヨンクルだのローン金利だの不動産価格下落だの、いろいろと記事が出ている中、ユニークな書き方だな、と思いました。不動産関連以外にも同じことが言えるでしょう。意見を事実のように伝えるのがうまい人たちと、意見と事実をちゃんと区分できない人たちの関係は、様々な分野で起きていますから。意見から事実にたどり着くこともあるし、どこからどこまでを問題視すればいいのかもよく分かりません。それらに対しては『言うな』ではなく、『反論』を用いるべきではないでしょうか。もちろん、自己責任という、最後に決めるのは自分自身だという考えも。
ただ、(引用部分にはありませんが)記事が主張している「政府政策も、なんで彼らの主張に同調する方向性だけなのか」という指摘には、部分的に同意するしかありません。先も書きましたが・・なんで安全診断基準を緩和するのがこのタイミングで『政策』として出てくるのか。安全に作るってことについて、どういう認識なのか・・気になるところです。一つ思い出すのが、2018年8月22日の朝鮮日報の記事です。『同じ高さでも層を一つ増やすため、柱ではなく壁だけで支える構造にする』というものでした。記事は、「上の階から伝わる騒音は、人の問題だけではなく、音が大きく伝わる構造の問題かもしれない」としながら、全国で2007年から10年間供給された共同住宅(マンション含め)のうち、98.5%(194万世帯)は柱や梁などが無い、『壁式』という、壁で上の階の重さに耐える構造である、と報じています。
同記事に載っている韓国建設技術研究院ユ・ヨンチャン博士の説明によると、壁式構造は、「早く、安く建てるために普遍化された方式だけど、外国では庶民アパートや寮など層数が少ない建物に主に使用され、韓国のように高層マンションまで壁式にするのはとても珍しい、と説明しています。同じ高さだと、Rahmen(ラーメン構造、梁がある構造)では20世帯分、壁式だと22世帯分を作ることができる、とも。また、壁式は、大幅なリモデリング・リフォームなどができません。「大規模修繕」という言葉、日本に来て初めて耳にしました。こういうところから改善したほうがいいのでは、と思いますが。
本エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2022年9月2日)からですが、<尹錫悦大統領の仮面 (扶桑社新書)>です。文在寅政権の任期末と尹錫悦政権の政策を並べ、対日、対米、対中、対北においてどんな政策を取っているのかを考察しました。政権交代、保守政権などの言葉が、結局は仮面が変わっただけだということ、率直に書きました。 ・準新刊<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>も発売中です。「私はただ、日本が好きだから、日本人として生きたいと思っています」。これが、本書の全て、帰化の手続きを進めている私の全てです。 ・既刊として、日本滞在4年目の記録、<「自由な国」日本「不自由な国」韓国 韓国人による日韓比較論 (扶桑社新書) >と、新しく出現した対日観について考察した<卑日(扶桑社新書)>も発売中です。 ・新刊・準新刊の詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。 ・本当に、本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。