盧武鉉政権から続く「アジア金融ハブ」の今・・外国銀行の撤収が相次ぎ、世界3大信託銀行の2つが撤収

韓国を東北アジア金融ハブにする、という話がありました。同じ話は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の頃からありました。文在寅政権のとき、特に国政課題として大々的に宣言されたりもしました。シンガポール、香港とともにアジア3大金融ハブにする、アジア金融ハブ、東北アジア金融ハブなど表現はいろいろありましたが。それがどうなったのか、世界3大信託銀行の1つとされるノーザントラストのソウル支店閉鎖をきっかけに、振り返ってみたいと思います。

本ブログで何度か同じ文章を書いた記憶がありますが、経済規模からして、韓国の「福祉」と「金融」はまさに弱点そのものです。福祉の場合、親の面倒は子が見るという考えと、国が経済成長期を経て『富の蓄積』をしておくべきタイミングでIMF期が来たこと、もともと関心が薄かった、などなどが原因だと言えるでしょう。金融も同じく、債務を資産のように考えること、IMF支援を受けた代価(開放の幅とタイミングが早すぎた)、などなどの側面があります。実際にはもっといろいろあるでしょうけど、ま、そんなところです。

 

特にIMF期の数年後となる盧武鉉政権がこの点注目したのは、着眼点としては良かったと思います。具体案はありませんでしたけど。なんというか、いまでも国内に世界的に有名な銀行が一つもありませんから。このハブ構想は、それからも何度か「やる気はあるのか」と指摘されてきました。2018年12月14日韓国日報の記事ですが、文政権のとき、特にハブハブしていた頃すらも、関連予算が約1億2千万円しかなかった、数年間あまり変わったことない、国会が削ったのではなく、もともとそれぐらいの予算しか設定されていない、とのことでして。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・金融委員会が国会から予算案の承認を受けるために掲げた来年度(※2019年)4大重点課題には「金融中心地政策を続けて推進し、国際競争力強化を図る」というのが出てきます。重点課題に含まれるほど、政府がこの政策を非常に重要視しているという意味でもあります。しかし、政府が必要予算で国会承認を受けた金額は12億3,500万ウォンに過ぎません。国会が予算を減らしたわけではなく、もともと要請されたのがそれぐらいの金額だけです。どちらかというと、これは申請された予算よりむしろ600万ウォン多い金額です。

金融中心地の予算規模は、最近数年間ほとんど変わっていません。毎年、金融当局の主要政策リストに含まれてはいますが、相応の事業がないので予算が増えないわけです。来年の予算も半分近くが釜山国際金融センター運営費など補助事業に使われます。香港、シンガポールと肩を並べるアジア三大金融ハブに育てるという壮大な夢は、うまくいっていないようです(韓国日報)・・>>

 

で、それから外国系銀行の動きを見てみますと、2015年外国銀行の支店数は47店でしたが、それから次々と撤収し、2022年6月基準で35店だけです。2017年米国ゴールドマンサックス、イギリスRBS・バークレイズ、2018年スイスUBS、2019年オーストラリアのマッカリー、2021年シティー銀行(消費者金融部門)、カナダのノバスコシア、ニューヨークメロン銀行が次々と離れていきました。そして、SBSの報道によると、ノーザントラストが、韓国から撤収すると明らかにしました。ニューヨークメロン銀行とノーザントラストは、ともに世界3大信託銀行だと言われています。

<<・・グローバル3大信託銀行に挙げられるノーザントラストカンパニーソウル支店が、国内進出6年ぶりに撤収します。11日、ノーザントラストソウル支店は金融委員会に国内支店閉鎖認可を申請しました。2016年11月、ソウル支店設立認可を受けて進出してから、6年目のことです。ノーザントラストはニューヨークメロン銀行、ステートストリートとともに、グローバル3大信託銀行に挙げられる金融会社です。外国人投資家などを相手に国内資産受託業務などを遂行する計画でしたが、目立つ成果が出せなかったのが主な背景だろうと、金融関係者たちは見ています。昨年末基準、ノーザントラストソウル支店の資産規模は635億ウォン水準です。外国系銀行の国内事業の撤退や縮小は、近年になって相次いでいます(SBS)・・>>

 

国内でも、一部のメディアは「事実上、失敗した」としています。「金融圏では、『2020年、大型商業銀行と投資銀行地域本部を誘致する』などを掲げた2003年盧武鉉政府の北東アジア金融ハブ推進戦略が、事実上失敗したという評価を下している(文化日報、2021年12月13日)」、と。 記事の内容は先に書いた「撤収相次ぐ」なものですが、その中に金融当局の制限が多すぎるという指摘があります。香港やシンガポールなどの場合は、法と政策で禁止したこと以外は概ね許容する方式なのに対して、韓国の場合は、法や政策によっては許可されたもの以外はすべて制限してしまうやり方なので、金融とは相性がよくない、というのです。

 

 

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