不動産価格の下落が続く韓国、いわゆる「ヨンクル」は226万人、ローン規模は約40兆円と推定

金利が安く、住宅価格も上昇していた時期、住宅、主にマンションを購入した人たち。たましいまでかきあつめて資金を用意したという意味で、よく「ヨンクル」と呼ばれます。若い人たちに限ってこの用語を使う場合もありますし、たしかに若い層がこの件の主役(?)なのは事実ですが、年齢に関係なく、ヨンクルは存在します。でも、いままでこのヨンクルが何人ぐらいいて、彼らのローンはどれぐらいの規模なのか、それに関するデータはなかなかありませんでした。

結構前になりますが、本にもブログにも、年金制度が弱く、引退が早いということもあって、自営業者が急激に増えたという内容を書いたことがあります。専門的な知識もノウハウも無しに、引退後のために「創業」したからです。でも、そんなことでうまくいくはずもなく、珍しく良い結果が出せた人たちをテレビやネットなどで英雄のように取り上げる風潮とともに、結果的には50~60代の人たちに大きなダメージを残し、自営業リスクは今も続いています。ちなみに、なぜか韓国では自営業者(小商工人)の債務は家計債務として集計されません。

 

あのときと似たような現象だ、とも言えるでしょう。低金利を利用し、いま家を買えば身分上昇できるという漠然な期待とともに、マンションを買う人たちが続出しました。中心は、若い世代でした。しかし、金利が上がり、マンション価格も下がり、約2年前にマンションなどを買うために銀行からローンを受けた人たちの場合、2022年年末には元利金の返済が2倍に増えることになると言われています。ちなみに、家計債務の約75%は変動金利です。

この低金利期、というか記事の趣旨(上昇期に買ったのに~)的に「住宅価格上昇期」をどう決めるのかはちょっとあいまいですが、ソース記事のソウル経済は、多分、集計しやすさも考えて、2020年1月から2022年6月までとしています。そして、その間に新しくローンを受ける、または追加した人たちの数と金額を調べてみました。すると、推算ではありますが、226万人、394兆ウォンという結果になりました。韓国の経済活動人口は約2800万人です。

 

彼ら全員が問題だというわけではありませんし、彼らだけが問題だというわけでもありません。なにせ、このデータは『住宅担保』ローンだけのもので、信用(担保なし)やジョンセ(伝貰、家を借りる制度)保証金などの分は含まれていませんので。でも、こういうデータは初めて見た気がしますし、大まかに規模を把握するため役に立ちそうです。以下、<<~>>が引用部分となります。

<<・・住宅価格の上昇期に住宅担保ローンを新規に受け取ったり増額した借主が226万人以上だとわかった。ローン金額では約394兆ウォンに達した。基準金利の引き上げでローン金利が急速に上がり、相対的な資産の貧困を避けようとした「いわゆるヨンクル」たちが、逆に大きな経済的な困難を経験するだろうとの懸念が提起される。18日、NICE評価情報によると、2020年1月から2022年6月まで住宅価格が上昇した時期、住宅台市場に新たに参入したり、ローンを増額した人は合計226万2000人、貸出金額は393兆6000億ウォンと集計された(※新規住宅担保ローン153万2000人・230兆7000億ウォン、増額73万人162兆9000億ウォン)・・・・問題は、来年も金利引き上げが持続し、景気低迷の懸念などで、国内外の高強度緊縮基調が続くということだ(ソウル経済)・・>>

 

本ブログでも紹介したことがありますが、第1金融圏の銀行の「実例」として、大企業職員Aさんのケースが多くのメディアに載りました。Aさんは2年前の2020年10月、5億6千600万ウォンのローンを受けて、ソウルに専用面積59.96㎡のマンションを14億3千万ウォンで購入しました。ローンの詳細は、住宅担保4億6600万ウォン(30年間の元金均等分割償還、新規取扱額コフィックス6ヶ月連動金利)と、信用ローン1億ウォン(期間1年、毎年期限延長可能、金融債6カ月連動金利)で、5億6千600万ウォンです。

ローンを受けた当時、2年前は、住宅担保ローン年2.91%、信用ローン3.66%が適用され、月々の返済額は約224万7000ウォン(住宅担保ローン元金194万2000ウォン+信用ローン利息30万5000千ウォン)でした。しかし、2022年10月では、住宅担保5.07%、信用6.67%が適用され、返済額は月々249万2千ウォン+55万6千ウォン=304万8千ウォンとなり、2年前に比べて36%も増えました。これは、10月と11月の金利引き上げの分は反映されていないので、来年に基準金利が3.50%に達すると仮定すると(現在3.25%)、来年春頃のAさんの月返済額は約340万4千ウォンとなり、2020年のときより51.5%(115万7千ウォン)も増えることになります。

 

大企業職員で第1金融圏を利用しているなら、それでもまだいいほうでしょう。今書いている原稿の内容もそうですが、一気に大きな衝撃が来て、1997年のようになるのかというと、私の考えは違います。債務によって引き上げられてきた成長が限界を迎え、その影響は「深く」「広く」そして「長く」続くであろう、というのが私の予想です。少なくとも30年は続くであろうヨンクルなどハウスプア問題も、その中の一つではないでしょうか。もっとも分かりやすい結果の一つが、合計出生率だったりして・・

 

 

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