NPL(不良債権)投資家たち「来年は忙しくなりますよ。今の延滞データなど幻です。新型コロナ対策が終わると、来年上半期からエモノが一気に増えるでしょう」

最近、各メディアは金融・経済関連の記事を大幅に増やしているし、本ブログも『民間の債務による成長』が限界に来ていることを、子テーマとしています。しかし、反論もあります。代表的なものが、一つ前のエントリーにも書きましたが、『マンション価格は調整が始まっただけで、ハードランディングではない』とする主張です。実際に価格だけ見ると、2~3年間上昇した分があるので、そうかもしれません。しかし、リスクにさらされている分がGDPの1.26倍となると、その2~3年間に膨れ上がった金融リスクこそが、問題の本質であることが分かります。

同じ流れとして、延滞率があります。多重債務者など『弱い環』を見ると延滞率が高い(第2金融圏の場合8%を超えているところもある)ですが、金融機関全体で見た場合、延滞率は極めて良好な数値が出ています。これについては、妙な統計基準、及び特定の錯視現象により、そう見えているだけだ、という再反論もあります。たとえば、第2金融圏の『貯蓄銀行』のPF関連ローンに限定すれば、延滞率は1.36%ということになっています。これは、かなり良好な数値で、各記事から見られる現状とはかけ離れた数値でもあります。

 

しかし、これは統計によるマジックにすぎず、実際は貯蓄銀行の不動産プロジェクト・ファイナンシングの20%のローンで、すでに延滞が始まっています。前にも引用したことがありますが、ビジネスウォッチというネットメディア(11月3日)によると、貯蓄銀行の場合、ローンの返済において延滞が始まっていても、その期間が3カ月未満の場合は『要注意』というカテゴリーで管理し、それを『延滞』の統計には含めません。ビジネスウォッチが確認できる範囲で、この要注意の分を入れて再計算してみると、すでに貯蓄銀行のPFローンの約20%の分で、延滞が始まっていました。

今回のエントリーの本題は、銀行(第1金融圏)のNPL(Non-Performing Loan、不良債権比率のこと)について、です。ソース記事では、「3ヶ月以上延滞したもの」としています。こちらもものすごく低く、なんと、0.38%です。少しでもリスクがある人は第2金融圏のほうにおいだすとしても、いくらなんでも、現状からして低すぎないか、とよく言われます。これについて、NPL投資業界の人が、「それ、錯視です。いまは、延滞したくてもできません」と指摘しました(ソース記事はイーデイリーです)。理由は、新型コロナ対策が機能しているからです。不良債権は、本当に安い価格で債券を購入することができるので、それを専門とする投資家(NPL投資)たちもいます。記事によると、彼らは『いまの延滞データなど幻ですよ。来年、NPLが一気に増えます』と、来年を心待ちしています。倒れる企業などが多くなる、という意味です。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・新型コロナ拡散期の政策資金(※政府支援など)で隠されていた不良債券が、続々と姿を現しつつある。支援措置があふれ、パンデミック期間にむしろ延命しやすい条件が造成されていたのだ。おかげで9月末基準国内銀行の不良債権が、総与信において占める割合は0.38%で、外国為替危機以後最低レベルとなった・・・・これは、潜在的な問題が反映されていない錯視が大きかったためだと見られる。来年上半期中、高金利の影響が本格的に現れ、打撃が可視化するだろうという予想が主流だ。満期延長と元利金の返済猶予などの措置が終われば、NPL比率も急騰するだろう、とのことだ。

パク・チャンギュン資本市場研究院先任研究委員は、「これまで政策支援のおかげで『延滞ができない』環境が造成されていたため、今出ている延滞など関連指標は事実上、まぼろしです」とし、「来年上半期からは、高金利の影響が直接的に現れ始め、収益性の悪い企業から問題が大きくなるでしょう」と話した。続いて「政府が、それを懸念して支援政策の延長に乗り出す可能性もありますが、そうなると潜在的な問題がより大きくなるし、遅延される負担も増えるので、そう簡単には決められないでしょう」と説明した。

 

韓国銀行金融安定状況報告書でも、限界企業の不実(※不良)リスク指標は今年3.75%に上昇した。不良リスク指標とは、企業が1年後に廃業など不渡り状態に転換される確率を意味する。それら企業の比重も昨年12.8%から今年には13.2%レベルを記録すると予想された。 特に不動産プロジェクトファイナンシング(PF)市場が要注意領域に挙げられる。 PFで不良が大きく増える可能性が高いという指摘が出ている(イーデイリー)・・>>

限界企業、ゾンビ企業とかの話が前から結構ニュースになっていたので、この「ハイエナ」さんたちの話も、説得力があります。さて、尹大統領、もともとは今年終わる予定だった措置をすでに延長しましたが、来年再延長できるのかどうか。できたらできたで、また1年後にはどうなるのか。尹政権の大冒険は続きます。

 

 

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