韓国少子化対策責任者「子を産めばローンを400万円まで帳消しにしましょう」・・発言の翌日に辞任。ネットメディア「日本の出生率が上昇した理由は、政府の対応が優れていたため」

合計出生率関連で、ちょっとした騒ぎがありました。「低出産高齢化問題対策委員会」の副委員長ナ・ギョンウォン氏のある発言が原因です。記事によると、事実上、関連政策の『船長』のような立場だ、とのことです(委員長は尹大統領です)。ナ・ギョンウォン氏は、一時、日本に同調するという理由で、『ナベ(安倍+ナ・ギョンウォン)』と呼ばれたりした女性国会議員です。ただ、いつものことですが、実際は同調したわけではなく、主流と少しだけ違う見方を述べただけの、そんなハプニングでした。

このナ議員が、少子化対策として、『結婚すれば、その人に4千万ウォンのローンを貸し出す。子を一人産んだらローンを無利子にし、もう一人産んだら元金を無かったことにし、もう一人産んだら利子も無かったことにします』という対策を話しました。ハンガリーで似たような政策をやっている、とのことですが・・言うまでもなく、家計債務がGDPを超えた韓国では、できそうにない政策です。ちなみに、ハンガリーの人口は1000万ぐらいで、家計債務が問題になっていると聞いた記憶はありません。ナ議員が「尹錫悦(ユンソンニョル)派」ではないこともあって、与党内部からも批判が相次ぎました。ナ議員は結局、辞任すると発表しました。

 

もっとも最近のデータは2022年7~9月のものですが、韓国の合計出生率は0.79人でした。2021年同期比で0.03人減少した数値です。1年間でもっとも出生率が高いとされる1~3月に0.86人、4~6月で0.75人でしたので、2022年は0.8を下回ると予想されます。2021年の合計出生率は0.81でした。日本も少子化関連でいろいろありますが、0.8より下がるというのは、本当に深刻としか言いようがありません。ソウルの場合は特に低く、7~9月基準で0.59人でした。日本は2021年1.3、東京の場合は2020年基準で1.12です。

こんな状況で、またナ議員のこのような騒ぎまであったわけですから・・一部のメディアが、合計出生率問題を取り上げながら、「いろいろあるけど、政府の政策の問題がもっとも大きな理由ではないのか」という記事を載せています。ネットメディアデジタルタイムズは、同じ問題を抱えながらも反騰に成功した日本の政策を取り上げながら、特にこの点を強調しています。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・日本政府も、少子化問題を克服するために積極的に対応してきた。日本は1995年に樹立された「エンジェルプラン」により、計画初期から仕事・家庭の両立と子育てを強調した。特に「新エンジェルプラン」が施行された2003年には、低出産政策だけを専担する特命長官が初めて新設された。2015年には「1億総活躍担当長官」の席を設け、特命長官を兼任するようにした。事実上、政府レベルの明確なコントロールタワーだ。2006年の低出産高齢社会の基本計画発表以後、政権が変わるたびに関連問題へのアプローチの軽重も変わってきた我が国とは、全く異なる。

現状は、(※合計出生率が上昇に転じた)日本とは、正反対だ。出生率は2015年(1.24人)小幅反騰した後、2018年(0.98人)に1人ラインを下回り、その後もずっと右肩下がりだ。経済協力開発機構(OECD)38の加盟国のうち、出生率が1人以下は韓国だけだ。出生率が毎年急減する原因としては、所得不平等、高い住宅価格、社会認識の変化などが挙げられる。ただし、これを総括する政府のコントロールタワーが役割を果たしていないという点が、最大の問題だと指摘される。2004年大統領直属機構として発足した低出産高齢社会委員会は、2008年、所属が保健福祉部に変更されたが、2012年大統領所属に再格上げされるなど、安定しなかった。5年単位の基本計画を発表しているが、明確な成果があるとは言えない。

 

また、尹政権になってから副委員長に上がったナ・ギョンウォン元議員は、「政治化」議論で、結局、辞任を表明した。出入記者団懇談会で、子の数に応じてローンを「帳消し」する出生率対策を出したのが問題だった。政治圏では、ナ氏のことで「3月にある与党代表選挙を念頭に置いたもの」とした。与党関係者は「党代表になるため、問題を作ろうとする典型的な姿」とした。ローンのバラマキをを現実的な低出産対策と見ることができるかも不透明だ。現在、1900兆ウォンに達する家計債務において、その一部であっても、その帳消しは経済規模に比べて相当な予算が必要になるだろう・・>>

政府の政策(記事で言う『コントロールタワー』)がちゃんとしていないのは、たしかにそのとおりです。しかし、個人的に、この問題もまた、『能力値を超えた債務』が起こしたものではないだろうか、と思っています。家計債務による生活の負担がなんとかならないかぎり、この問題の根本的な解決は難しいでしょう。この側面だけは、ナ・ギョンウォン氏の見方も的を射たと言えますが・・やり方がちょっと。現状を考えず他国の政策をそのままコピーして「貸して、帳消し!」とするのは、無理でしょう。この発言だけで辞任までおいこまれるのも変ですが。

 

 

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