尹大統領が「自力で核保有」に言及した直後、岸田総理、バイデン大統領、ホワイトハウスともに「目指すのは『朝鮮半島の完全な非核化』」

岸田総理とバイデン大統領が、「朝鮮半島の完全な非核化」を再確認しました。いつも出てくる話ではありますが、いつもは北朝鮮のことだけど、今回は、尹政権にとってその意味がちょっと違うかもしれません。12日に取り上げたばかりですが、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は、自力による核保有国化の可能性に言及したばかりです。実は日米首脳会談の直前にも、ホワイトハウスは関連した質問に「朝鮮半島の非核化」と答えました。事実上、尹大統領の発言は、事前調整などはまったく無かったということでしょう。昨日も書きましたが、「とりあえず言っておく」といったところでしょうか。

尹大統領は、戦術核兵器(一時、在韓米軍にもありました)の再配備を主張してきました。去年5月の米韓首脳会談のときにも、各メディアがこの件を慎重に取り上げ、一部の専門家は「少なくとも、関連した議論を始めるという内容は入るのでは」と予想したりしました。しかし、それから米国側はこの件についてこれといって何も話さず、尹大統領だけが「話し合いは続けている」と、この話を続けてきました。

 

ただ、やはり難しいと判断したからでしょうか。今年になってから尹大統領の核関連発言は一段と強くなりました。例の無人機事態(大統領室周辺まで進入しました)が、心理的に影響を及ぼしたのではないか、そんな気もします。1月2日には朝鮮日報とのインタビューで、「韓米は米国の核戦力を『共同企画・共同演習』で運用することを話し合っている」と話したものの、「共同演習」とは、核兵器を持っている国同士で行うものなので、その翌日、バイデン大統領から「NO(そんな演習は無い)」とされました。これは、用語を間違えたのではないかという指摘もありますが、それからも尹大統領の関連発言は止まりませんでした。

11日には、『米国の核の傘に頼るのは、北朝鮮ではなく旧ソ連に対するもので、もう古い概念になった。そんなもので国民を納得させることは出来ない』、『(北朝鮮問題がもっと深刻になると)私たちの技術で核保有できる』などと、なんと自力による核保有を公言したりしました。ただ、聯合ニュースによると、この件もその翌日、米国側によって「目指しているのは朝鮮半島の非核化」とされました。こんなことがあったので、日米首脳の朝鮮半島の完全な非核化というフレーズが、北だけでなく尹政権にとっても重かったわけです。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・米国政府は12日(現地時間)、尹大統領の「自力核保有」言及と関連して、朝鮮半島の非核化原則を再確認し、拡大抑止(※他国の安保に抑止力を提供すること)の強化を強調した。ジョン・カービー、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)戦略疎通調整官は12日のブリーフィングで、ユン大統領の発言に関連した質問に、「バイデン大統領は朝鮮半島の完全な非核化を約束した。これは変わっていない」と話した。カービー調整官は引き続き「韓国政府は、核兵器を追求するわけではないことを明らかにしている」とし「ただし、韓米は共同で拡大抑止の強化を議論しており、我々はこのような方向に進むだろう」と付け加えた。

パトリック・ライダー国防部スポークスマンもブリーフィングで、「米国の政策は依然として朝鮮半島の完全な非核化に焦点が当てられている」とし「域内同盟国である韓国および日本と安全保障・安定を守護し、北朝鮮の動きを遮断するために協力している」と明らかにした。彼は「この問題は、潜在的な核兵器の使用可能性を防止することに関連する、核兵器不拡散、域内の安全保障・安定と関連している」とし「米国の観点から見ると、依然として米国政策は明らかに(朝鮮半島の)非核化だ。在韓米軍に加え、韓国は米国の拡大抑止の傘の中にあるということも、重要に覚えておかなければならない部分だ」と話した(聯合ニュース)・・>>

 

そして、今回の日米首脳会談でも、同じく「朝鮮半島の完全な非核化」が出てきました。尹大統領の例の発言が、このフレーズによってまた「NO」とされたことになりますが・・それを指摘する記事はまだありません。以下、聯合ニュースの別の記事です。 <<・・ジョーバイデン米国大統領と、岸田文雄日本首相は13日(現地時間)、朝鮮半島の完全な非核化に対する約束を再確認し、安保と経済などの領域で韓米日3者協力をさらに強化することにした。バイデン大統領と岸田首相はこの日、ワシントンDCホワイトハウスで首脳会談をした後に発表した共同声明を通じて、このように意見を集めたと明らかにした。両首脳は声明で・・・・「我々は国連安全保障理事会決議により朝鮮半島の完全な非核化に 私たちの約束を再確認した」と述べた(聯合ニュース)・・>>

 

例の解法というのもそうですが、自力による核保有公言は、「とにかく言ったから、合わせてくれ」というパターンだったのでしょうか。もしそうなら、いつもの「事前調整無しに言ってみたパターン」なら、これは日米韓の北朝鮮・朝鮮半島関連問題においての、深刻な『離脱』宣言です。もちろん「北朝鮮問題がもっと大きくなれば」という前提付きではありますが。個人的にこの発言、及びそれからの日米の反応は、外交・安保などにおいてすごく大きな案件だと思っていますが・・ほとんど話題にならないでいるのは、なぜでしょうか。11日の発言でも、同じ場で話した「日本の防衛力増強は仕方ないことだ」とする繻子の発言ばかりクローズアップされていますし。今日も更新はこれだけです(明日から通常更新する予定です)。次の更新は、明日の11時頃になります。

 

 

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