「ゾンビ企業」40%の韓国・・それでも「限界企業(3年連続ゾンビ企業)」が生き残る理由は

本ブログでも何度か取り上げましたが、利子補償倍率(インタレスト・カバレッジ・レシオ)1未満、すなわち「営業利益で、借入金の利子が負担できない」企業のことを「ゾンビ企業」とよく言います。世界的に問題になっているし、日本の場合は10~15%がゾンビ企業だという分析もあります(分析によって違いますが)。この状態が3年続いたところを「限界企業」と言います。メディアにもよるし、関連機関が出した報告書によっても基準が少しずつ違いますが、一般的には、限界企業=3年以上ゾンビ企業という認識で問題ないでしょう。

韓国の場合、中央銀行の企業経営分析関連レポートを引用して報じていますが、全体の40%がゾンビ状態で、なによりその増加速度が速すぎます(ソースはファイナンシャルニュース)。これは2021年のデータなので、金利引き上げが本格化した2022年にはさらに増えていることでしょう。ここまでは、いままでも何度も取り上げた内容ですが・・ちょっと妙なのは、利子補償倍率1未満の状態で5年、10年以上も生き残る企業が多い、とのことでして。それと関連し、朝鮮日報(週刊朝鮮)が「失業者が増える負担が大きすぎるため、政府が適当に支援しているからだ」という記事を載せました。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・2021年、利益がローンの利子より少ない「ゾンビ企業」の割合が依然として40%を超えたことが分かった。2020年に続き歴代二番目に高い割合だ(※新型コロナ関連の支援で、2020年に比べて少し減りました)・・・・10月19日韓国銀行が発表した2021年の年間企業経営分析によると、2021年、国内非金融営利法人企業85万8566社のうち、利子補償比率1未満の企業の割合が40.5%に達した。2020年度40.9%で歴代最高値を記録したのに続き、2番目に高い割合だ(ヘラルド経済)・・>>

週刊朝鮮が特に強調しているのは、限界企業(3年以上ゾンビ)を「そのまま延命させる政策を取ってきた」という点です。ある程度は仕方ない側面もあるし、そういう方向性を取る国は他にもあるけど、根本的な解決にはならず、今まで右な政権でも左な政権でも、それがちゃんとできなかった、というのです。産業銀行KDB未来戦略研究所の「限界企業の現況と示唆点」という報告書(2011~2021年までのデータ)によると、2021年末時点で、調査対象2万4515社のうち4478社が限界企業でした。先のゾンビデータもそうですが、こういうのは金融部門は含めません(非金融法人だけ)。

 

多いのも多いですが、増加速度がさらに問題です。2011年に1353社だったことを考えると、まさに急増した数値です。記事によると、特に2016年(2165ヶ所)から2021年までの5年間で、約2倍になった、とも。5年以上限界企業状態だった企業も1762社(7.19%)、調査期間全体の10年間ずっと限界企業だった企業も120社あります。記事は、「限界企業の多くは中小企業であり、これらを『整理』するのは容易ではない。事業体の99%が中小企業で、10人のうち8人がそこで働いている。さらに、雇用問題は容易にアプローチできない。失業後の生活を、政府が負担するわけにはいかないからだ」としています。

<<・・グローバル金融危機(※2008年頃)の時もそうだった。 限界企業問題を解決するというメッセージを、政府は相次いで出した。当時、カン・マンス企画財政部長官は「企業の玉石を分ける。生存可能な企業には流動性を支援するが、限界企業には退出しかない」と話した。しかし、現実ではそうならなかった。李明博(イミョンバク)政権のとき、大統領府関係者だった人は、こう話す。「家計の破産は、借金のある家庭が崩れる。でも、企業の破産は、借金のない家計までたおれる。構造調整すれば、彼らの失業後のためのプランBが必要になるが、その準備ができてなかった」、

 

「これはどの政権でも同じだ。政府や政策金融機関では、雇用が崩壊した後に生じる地域経済の影響などを気にするしかない。政治的な影響も心配しなければならない。だから、どんな政権でも、金融圏を動かして雇用を維持したいという誘惑を振り払うことができない。私たちの時も、銀行側は不満が多かった。私たちは銀行側に、与信を強化し、流動性を適切なところ供給するようにと言ったが、中小企業の連鎖倒産を避けるため、貸し出しもちゃんとしろ、とも言った。正反対の話を同時にしたから、それは不満も高くなるだろう。このような混乱の中、盧武鉉(ノムヒョン)政権の時も限界企業は増え、李明博政権の時もそうだった。限界企業が減ることなどなかった」(週刊朝鮮)・・>>

引用部分にはありませんが、適当に支援して延命させる方向性に金融機関も困っていて、銀行側の人は「政府側からは、『分かっているから待ってほしい』という話だけだ」、と話しています。最近、尹政権は、金利が上がっているのに「ローンの金利を上げないで」と金融機関を圧迫しています。第2金融圏にも、庶民にちゃんと貸し出しをするように、と金融当局自ら話しています。これが、記事に書いてある李明博政権のときの話と、同じに見えます。さて、繰り返しになりますが、これ、基準金利引き上げの影響が表れる2022年データではさらに増えるだろうし、新型コロナ対策で打ち出した満期延長・返済保留関連政策がどうなるのか(今年9月までです)で、さらに増えることでしょう。

 

 

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