展開によっては徳政令も? 「ヨンクル」を国が救済すべきかどうかで賛否両論

まず、昨日お伝えした半導体関連で、ちょっとだけ追記致します。SKハイニックスが、事前の予想より大きな1兆7千億ウォンの営業赤字となりました。四半期決算では10年ぶりとなります。純損失は3兆5千億ウォン(すべて2022年10~12月期のデータ)。減産などは無いとしたサムスンとは違い、かなり控えめなスタンスを示しており、設備投資も50%減らすとしています。

で、ここから本題ですが・・明らかに能力値を超えた債務で投資(主にマンション購入)をして、その返済で生活もままならなくなった、いわゆる「ヨンクル」を政府が救済すべきかどうかで、議論になっています。本ブログでもずっと取り上げてきましたが、韓国で家を購入した人たちは、平均でDSR60%(所得の6割を元利金返済に使う)状態です。その全員がヨンクルッた(?)わけではないでしょうけど、これ、まだ去年10月からの基準金利引き上げ分は反映もされていないので、いまはもっとすごいことになっているでしょう。

 

そんなヨンクルたちを、なんとかして救済するという動きが強くなっています。ただ、いまのところ、具体的で強力な何かの案が出てきたわけではありません。一部を安い金利のローンに乗り換えさせるとかそんな話があり、一部のメディアは「これで助かった!」と個人ブログのような記事を載せていますが、現状からしてこれといった解決法にはならないと指摘されています。実際、一時はヨンクルの聖地と有名だった地域のマンション価格は数億ウォン単位で値下がりしています。

ただ、それでも『政府がなんとかしろ』という主張も根強く(多分、いままで似たような展開があったからではないでしょうか)、一部からは徳政令のようなものを期待する声も出ています。しかし、そういう流れに「なんで彼らを税金で助けるのか」という反論もあります。本エントリーで紹介しているのは韓国日報のもので、他の記事も基本的には同じ趣旨、「頑張って仕事をしてもうまくいかなかった、いわゆる『生計型』の問題とは違う、そもそも助ける対象ではない」、そんな主張です。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・金利が上がるようになって、昨年から政府官僚と政治家の間では様々な「帳消し」スローガンが飛び出ている。彼らは、ヨンクルさえ救済すれば、婚姻、出生は増え、未来のために必要な費用は減らせると言い切る。彼らが自分自身のお金でやるならいいけど、そうでないなら是非自重してほしい。経済的困難に直面した人を助けるのは共同体に必要なことだが、そういうのはあくまで生計型だけに限ってやってほしい。ヨンクルはどちらかというと、社会的貧困に近い。無理してお金を借りたとしても、すでに手元には数億ウォンぐらいはあっただろう。ヨンクルというのは、誰にでもできることではないという話だ。ただ生きるためではなく、他の人よりも豊かに生きなければならないという考えに押しつけられた社会雰囲気に巻き込まれた結果だ。

これがまた住宅価格のバブルを膨らませた。結局、金利は安定し、耐えぬけばその家は自分のものになるだろう。生計型と区別しなければならない理由だ。何より、所得からしてありえないほど金を借りた責任は当事者にある。それが常識だ。人それぞれ事情は異なるだろう。住宅価格関連政策の失敗も考えてみなければならない。ただ、汗を流して未来を設計してきた人々、お金を借りるのがこわいから節約し、無理しなかった人たち、ヨンクルすらできそうになかった人たちをないがしろにすることがあってはならない(韓国日報)・・>>

 

さて、この一行が結論ですが・・「それがもはや常識ではなくなったから問題ではないでしょうか」。なんとかして救済すべきだとする人たちの主張は、その多くが合計出生率を理由としています。いいのか?このままだと出生率が うわあぁ~ そんなところです。代表的なのが、1月に「低出産高齢化問題対策委員会」の副委員長ナ・ギョンウォン氏(委員長は尹大統領ですが、実際はナ氏が責任者になります)の発言です。『結婚すれば、その人に4千万ウォンのローンを貸し出す。子を一人産んだらローンを無利子にし、もう一人産んだら元金を無かったことにし、もう一人産んだら利子も無かったことにする』という話です。ハンガリーで似たような政策をやっていますが、ハンガリーは家計債務がGDPを超えた韓国とは状況が違うし、人口1000万ぐらいです。

 

ナ議員が「尹錫悦(ユンソンニョル)派」ではないこともあって、与党内部からも批判が相次ぎ、特に、一時は大統領候補になると言われていた(結果的に尹錫悦氏が候補になりました)ホン・ジュンピョ大邱市長が、ナ・ギョンウォン氏を強く批判しました。もはや少子化対策とか家計債務とかはどっかいってしまい、ナ・ギョンウォン氏を追いつめることしか考えていないような、そんな展開でした。実はナ・ギョンウォン氏は当代表に出馬する予定でしたので、『大統領派でもない人が代表になってはならない』という事情もあったわけです。

しかも、まだ「オチ」がありまして。そのホン市長も、2021年10月22日、国民の力大統領候補2次討論会で「今、ハンガリーのような場合、2019年2月に実施した政策を見ると、結婚時に4000万ウォンのローンを、子供産んだら利子免除し、もう一人産んだら元金の3分の1を、3人目を産んだら全額をなかったことにしてくれるという。こんな破格的な措置こそが必要だ」と話していました。1年半前のことなのに、もう忘れたのでしょうか。

 

 

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