中国市場を取るか、自由民主主義のサプライチェーン再編成を取るか

韓国では、そして一部ですが日本内でも、中国市場が~という話をよく耳にします。最近、確かに増えた気もします。市場確保が大事なのは言うまでもありませんが、中国市場というものが、5年後、10年後の経済的繁栄を約束できるものでしょうか。昨日(2つ前のエントリー)、「安米経中」や「名米実中」などの言葉を紹介しましたが・・そうやって中国市場に頑張ると、これから5年後、10年後に、相応の実績が残せるのでしょうか。私は、そうは思っていません。要は、中国にとって「代替できるものか、そうでないか」にかかっています。いま、各分野での「そういう、代替できないモノ」が作れる国が、価値観という基準のもと、力を合わせようとしています。それがサプライチェーンの再編成です。だからこそ、こちらのほうがもっと大事ではないでしょうか。

最近、韓国側の主張を読んでいると、中国を『その再編成が行われるようになった核心要因』と認識せず、単に、市場、すなわち「そこでものを売れば何でも売れる」と思っているようです。ソース記事は記事は2016年7月11日中央日報ですが、当時、在韓米軍THAAD配備が決まり、いまと同じ流れがありました。どうしても中国市場をあきらめてはならない、なんとかして頑張るのだ、と。しかし、当時、前もってある程度の緊張感をもっていた分野でも、7年が経った今、全部「中国の勝ち」で終わっています。しかし、ただ一つ、思ったほどの影響を受けなかった分野があります。半導体です。

 

まず、引用部分に2000年の「ニンニク波動」というものが出てきますが、先に簡単に説明致します。2000年、韓国は自国ニンニク業界(約1000万ドル規模)保護のためにセーフガードを発動、中国産に関税をかけました。中国は韓国からの携帯電話の輸入(約5億ドル規模)を制限する措置を取りました。結果、朴槿恵政権は関税を2002年までの限定措置として予定の10分の1ぐらいまで設定し、『2003年からはこの件で二度とセーフガードを発動しない』という内容にまで合意することになります。以下、<<~>>が引用部分となります。

<<・・(※2000年にニンニク波動を経験した)IT業界関係者は「半導体・携帯電話・ディスプレイの中国輸出比重が大きい」とし「中国政府の対応レベルによって、輸出が大きく影響を受けるしかない」と話した。 半導体生産量の50%は、中国に輸出される。サムスンディスプレイの場合、今年1~3月期生産量の37%(約2兆3000億ウォン分)を中国に輸出した。中国資本を誘致して大きくなったゲーム・インターネット業界も同じだ。

 

中小企業庁が発表した「中国資本の投資現況及び対応方案」報告書によると、昨年9月末基準、中国・香港資本の国内投資規模は計2兆9606億ウォンに達する。中国資本を誘致した32社のうち、上場企業は25社で、このうち10社はゲーム・IT業種だ。 ホン・ウォンギュンKT経済経営研究所研究員は、「中国系資本が離脱する可能性を考慮した経営対策を組まなければならない」とし「中国資本が投資したということ自体が、中国進出の踏み石の役割をしてきた側面もあるため、今後の対中コンテンツ輸出にも支障が出る」と話した・・

・・流通・観光業界も、中国政府が簡単に影響力を行使できる分野だ。中国人観光客が流通業界のVIPとして位置づけられ、中国が何かの措置が可視化される場合、売上に大きな影響を受けることになる。観光公社によると、2014年に訪れた外国人観光客のうち、中国人は43.2%を占めた。旅行業界は中国政府が観光旅行を止めるなどの強力な措置をとる可能性はた低いと見ているが、関連した雰囲気を憂慮している・・

 

・・化粧品業界の場合、中国の需要がなければ、事実上、「Kビューティー」熱風を維持するのは難しい・・・・化粧品業界関係者は「中国が現地で韓国化粧品に対する安全検疫を強化したり、直・間接的に旅行規制をすれば、免税店の売上が大きく低下する可能性がある」と話した。 マスクパックなど人気品目の多くが中国内の「個人商人」を通じて流通するという点で、空港で検査が厳しくなる可能性があるという見通しも多い・・>>

それから、韓国側のスタンスは、昨日のエントリーと同じでした。それでも中国市場をあきらめるわけにはいかない、安保は米国、経済は中国、戦略的曖昧さ、などなど。そうやって7年が過ぎた今、振り返ってみると、観光部門ではいまでも関連措置が続いています。ゲームといっても携帯電話、スマゲーですが、いまは中国勢がずっと優位を占めています。ディスプレイ分野では、OLED以外は圧倒的に中国がシェアをとっています。Kビューティーとかいうのも、当時の好実績はもう昔の話です。スマホも、もう中国市場では話になりません。

 

しかし、「これらの分野が、当時の中国の何かの措置または雰囲気変化によって、ここまでおちたのか?」というと、私はそうは思っていません。観光業界はさすがに措置そのものの影響も受けたでしょうけど、それ以外は、彼らなりに中国市場に「くらいついて」いました。それでも、こんな結果しか残せませんでした。ただ一つ、もっとも懸念されていたのが半導体分野では、大した影響はありませんでした。なんで半導体は大丈夫だったのか。それは、中国が「まだ、それを切るわけにはいかない」と思っていたからではないでしょうか。いわば、これらの分野で、7年後にこのような結果が出たのは、当時の中国の措置そのものが原因ではなく、『7年間、中国がそれらを代替できる技術力を手に入れたから』です。当時のTHAAD騒ぎが、ある程度のきっかけにはなったかもしれませんが。

話を戻しますと、結局は、中国が作れないものを、作ることができるのか。それが全てです。半導体分野でも、もうメモリーでは、中国メーカーのほうが技術が上だと言われるようになりました。そんな中、中国を『ものがよく売れる市場』としか見ていないシンクタンクの主張、それを配慮や協力だとする主張が、7年後にどれだけの結果を残すことができるのでしょうか。

 

 

・・・と、本文はここまでです。告知と書いてイイワケと読むいつものこのコーナーですが、今日は、とある書類をゲットするために出かけることになりました。いま私が住んでいる家ですが、2年に1回ずつ、「ちゃんとまだ住んでますん」と、韓国にある私の取引銀行に書類を送る必要があります。6年前(早いですね)、「不動産購入資金」を日本へ送金する際、投資や商用ではなく「住居用」としていたためです。証明のための書類を送ってやらないと、銀行の人が困ります。この前の運転免許証更新もそうでしたが、なんか、書類関連の用事が2月に集中してしまいまして・・と、イイワケが長くなりましたが、今日の更新はこれだけです。次の更新は、9日(木曜)の11時頃になります。

 

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