韓国、違法な金融業者の平均貸出金利が229%(2021年)から414%(2022年)に急騰

久しぶりに、家計債務関連です。違法な金融業者のことを韓国では私金融(サグミョン)または私債(サチェ)業者と呼びます。本エントリーではサグミュンに統一しました。家計債務がGDPを超えており、経済活動人口が2800万人なのに、多重債務者(3ヶ所以上の金融機関からお金を借りている人)が452万人もいるだけあって、サグミュンは結構前から問題になってきました。特に最近は、相次いだ基準金利の引き上げもあって、各金融機関がローンの対象を調整する、簡単に言えばよほど信用が高い人でないと新規ローンを許可しなくなったので、この問題が再び台頭しています。

サグミュンがどれぐらいの規模なのかは、分かりません。ただ、すでに家計債務無しでは生活を維持できないシステムになってしまった(もちろん、人にもよるでしょうけど)こともある、相当な規模ではないだろうか、と予想されています。また、ちゃんと摘発されることもあるものの、自発的な申告件数は、さほど多くありません。これは、お金を借りた人たちがサグミュン業者をおそれているのもありますが、それでもお金を貸してくれるのはもうここだけだ、という妙な「依存」を見せているのも、一つの理由だと言われています。

 

そんな中、本ブログでも紹介したことがありますが「30・50」(30万ウォンを借りて1週間後に50万ウォンを返済する方式、 年利3400%以上)を解説する記事などを書いた朝鮮日報が、彼らサグミュンの平均金利が急騰した、と報じました。数千%の業者もあるにはありますが、平均金利で見ると、2021年には229%でしたが、2022年には414%に急騰しました。他の記事を読んでみると、関連した件数もかなり増えている、とのことです。金利上昇が止まるとしても、金利が下がるわけではありません。この流れは、しばらくは続くと思われます。以下、<<~>>が引用部分になります。

<<・・昨年、サグミュンによる平均貸出金利が平均で年414%に達したと集計された。1年間利用すると、元金の4倍以上を利息として支払わなければならないという意味だ。韓国貸付金融協会(※この協会に登録している貸付業者は、合法に営業している人たちで、いわゆる第3金融圏のことです)が、昨年1年間に6712件の事例を分析した結果である。2021年のサグミュンの平均ローン金利は、年229%だった。貸付業を運営する際には、金融委員会または地方自治体に登録し、上限金利(年20%)を上回る利息を受け取ってはならない。サグミュンはそのほとんどが、未登録のまま上限金利よりずっと高い高金利で営業している。

 

貸付金融協会による分析の結果、サグミュン利用者たちは、昨年、平均で31日間、382万ウォンを借りた。調査対象の件の90.7%が信用貸出(※担保なしローン)であり、担保ローンや日收(※毎日の返済額を決める形)ローンの割合は低かった。最近は、金融機関ではローンが組めない人たちが急銭(※急に必要な小額のお金)を必要としてインターネット上で問い合わせると、それを見て接近する手口を主に用いる。ソウルに住む30代男性は、ネット上で接触したサグミュン業者から105万ウォンを借りたが、3週間後に元利金135万ウォンを返済した。年間に換算すると、利子は元金の約5倍になる。一部の業者は、いわゆる「30・50」という手法を使うこともある。30万ウォンを貸し、1週間後に元利合計50万ウォンを受け取る方式のことだ(朝鮮日報)・・>>

業者たちも、お金を調達するのが難しくなった・・という側面もあるでしょう。でも、上限金利を守っているならともかく、ここまで高利子の案件になると、これは理由にはなりません。去年末~今年初あたりに集中的に取り上げ、新刊にもまとめることができましたが、やはり『需要が増えた』のが、平均金利急騰の主な理由ではないでしょうか。韓国は、普通の銀行である第1金融圏、それより金利は高いけどローンのハードルは低い第2金融圏(貯蓄銀行、信用協同組合など)、そして預金は無しで貸出に特化された第3金融圏(貸付業者)があります。

 

言い換えれば、第3で借りることができなければ、そこからはサグミュンの世界しかない、というわけですが・・すでに去年末の時点で、彼ら第3金融圏は新規ローンを事実上中断しました。マネートゥデイ(2022年12月5日)の記事ですが、 <<・・貸付業者たちが、新規ローンを事実上中断した。 貸付業者は主に貯蓄銀行やキャピタル社から資金を借りた、いわゆる「調達資金」で信用が低い人たちに融資を行う仕組みで運営される。しかし、相次ぐ金利引き上げの余波で、資金調達費用が急激に上がったのに対し、上限金利は20%までと決まっているため、商売にならないと判断したのだ。イ・ジェソン貸付金融協会専務理事は、「満期延長契約を一部延長する以外、新規ローンは無くなったと見れば良い」とし、「貸付業者は貯蓄銀行やキャピタル社から借りる調達費用自体が高いが、 年初だけでも5%前半だった調達金利が、8%台に上がって、運営が難しい」と話した・・>>、とのことでして。

家計債務を全体で見ると、去年末~今年初頭で減少しつつあります。利子が増え過ぎで、少しでも余裕がある人たちが、ローンを償還しているからです。また、伝貰(ジョンセ、家を借りるシステム)をやめて、普通に月払いの家に引っ越す、または親の家に戻る人が増えているのも、一つの理由です。そのジョンセのための保証金も多くの場合はローンで借りたものなので、ジョンセ契約が終わると延長せず、そのまま大家から返してもらって、銀行に返済しているわけです。ただ、それはある程度でも余裕がある人たちのこと。また、本エントリーの内容のように、家計債務統計にはカウントされない人たちが、増えているのも、また理由の一つでありましょう。悲しい話ですが。 更新時間がいつもよりちょっと早いですが、今日はこれで更新終了と致します。

 

 

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