揺れる韓国半導体業界・・サムスン電子の現金資産は急減、半導体競争力強化関連法案の国会通過可能性はほぼゼロに

本ブログでも取り上げたことがありますが、半導体産業競争力強化のための法案、いわゆるKチップス法に関する続報です。結構前から話はありましたが、この法案が形になったのは去年の12月です。法案の内容の中でも、半導体関連での投資にて、どれだけ税額控除率を上げるかが核心でした。国家戦略技術投資税額控除条項といいます。この部分で、長い間、与党・野党の意見が合いませんでした。この法案の内容が初めて話題になったときには、現状6%の「大企業」の関連税額控除を20%まで上げ、中堅企業の場合は25%(現状8%)、中小企業の場合は30%(現状16%)まで上げる、としていました。

しかし、多数の議席を取っている野党「共に民主党」が、中小企業の場合は与党案の30%でいいけど、大企業は10%、中堅15%にすれば十分だ、という案を出しました。それに、去年12月の各メディアの記事によると「企画財政部が、財政状態を理由にして」、税額控除率を野党の案よりさらに下げるよう提案し、結果、野党案より低い、大企業の場合8%控除、中堅と中小は現状のまま維持する、ということになりました。日米台の半導体関連の動きにかなりの危機感をおぼえていた一部メディアが、これでは他国との競争はまず難しいのではないかと記事を出し、左側のメディアもまた、いくらなんでもこれはちょっと予想外だ、という反応でした。

 

ですが、尹大統領はコレジャナイとし、法案の控除率をもっと上げろと、事実上の『命』を下しました。すると、与党側は野党と合意した案を無かったものにし、先月、新しい法案を提示しました。大企業と中堅企業は15%まで、中小企業は25%まで控除率を上げる、という内容です。尹大統領は、大企業にも25%を適用するようにと言った・・という話も聞きますが、それよりはちょっと下がっています。税額控除といっても、ほとんどがサムスンとSKハイニックスですから。個人的に、半導体関連でもっと投資しやすい環境を作るのは重要だと思っていますが、これは、与党・野党がいったん合意したものを、あっさり覆したことになります。

そこまで大統領の意見を重視するなら、合意をする前に大統領室に経過報告とかしなかったのでしょうか。しかも、前の案をまとめるときには積極的に控除率を下げようとした企画財政部が、大統領の一言で完全にスタンスを変えたこともあり、共に民主党以外の野党からも、問題視的が広がりました。ソース記事、ネットメディア「デジタルトゥデイ」は、14日、国会企画財政委員会でこの案件について議決できなかったことを取り上げ、事実上、法案そのものが国会を通過するのは難しくなったのではないか、としています。以下、<<~>>が引用部部です。

 

<<・・半導体施設投資の税額控除率を高める租税特例制限法改正案が再び座礁の危機を迎えた。多数党である共に民主党が、法案通過にブレーキをかけた。ユン大統領の指示で改正案の税額控除率が増えたことによる反発、及び大企業にだけ特恵を与えるのではないかとする論議が起きている。国会企画財政委員会は去る14日、全体会議と租税所委員会を開き、「半導体特別法(K-チップス法)」と呼ばれる造特法改正案の議論を始めたが、共に民主党によって霧散となった。与党「国民の力」は今月本会の通過のために議決するという立場だが、野党の共に民主党は、税収減少分の代案などが必要だという理由で、検討が必要だとしている。

造特法改正案は、国家核心戦略産業支援のための国家先端戦略産業特別法の一部で、半導体設備投資による法人税の減免などを主な内容で盛り込んでいる。この法案は当初、昨年12月国会本会議を通過したが、大企業税額控除率8%だけだった・・・・これにユン大統領が企画財政部に追加で控除率の拡大を指示し、大企業・中堅企業15%、中小企業25%に拡大した内容を反映、再び国会に提出された。野党側は、政府側が法案改正案に関与した点を問題にしている。低い税額控除率を提示していた企画財政部が、大統領の一言で立場を変えただけでなく、低くなった税収に対する代替案がないという指摘だ。サムスン電子、SKハイニックスなど大企業の税収を追加的に減免することで「大企業特恵ではないのか」という指摘も出ている(デジタルトゥデイ)・・>>

 

そして、そんなとき、なかなか大きなニュースがありました。検察が、李在明(イジェミョン)「共に民主党」代表の逮捕状を請求しました。朴正煕、全斗煥政権でも、野党代表に対する逮捕状請求は前例がありません。イ代表のことは、裁判結果とかあったらその際にエントリーしたいと思っています。このことで、もうKチップス法の通過可能性はほぼゼロになったと見てもいいでしょう。本題はここまでですが、ソース記事でちょっと気になる内容があったので、お伝えします。サムスンとて余裕があるわけではない、という部分です。

サムスン電子が14日、子会社のサムスン・ディスプレイから20兆ウォンを借り入れた、と公示しました。サムスンディスプレイは、サムスン電子が株式85%を保有している、とのこと。記事は、サムスン電子が子会社から金を借り入れるなど今まで無かったとしながら、これは一言で余裕が無いからで、サムスン電子の現金資産は急減していると分析しました。2022年1~3月期には、別途基準(※連結基準ではなく)で9.1兆ウォンほどの現金性資産と12.8兆ウォン規模の短期金融商品を含めて総計21.9兆ウォンを保有していました。しかし、国内投資及び人件費拡大で4~6月期には16.1兆ウォン、7~9月期9.2兆ウォン、10~12月期には3.9兆ウォン(現金性資産3.9兆ウォン+短期金融商品1.37億ウォン)だけが残っている、と。

 

 

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