韓国政府、民間銀行の金利に明らかな介入・・基準金利が上がったのに、「なんでローンの金利が上がるのか」と民間銀行に社会貢献を要求

尹政権の金利対策のメインは、「王命」でした。政府当局が銀行側に「基準金利上がったけど、金利を上げないで」としながら、民間銀行の金利に直接的に影響力を行使してきたことは、本ブログでも2~3回取り上げたことがあります。その動きがさらに明らかになり、ついに大統領自ら、「銀行は公共財だ」「銀行が金パーティーをやっている(荒稼ぎを楽しんでいるという意味で、引用部分にはありませんが13日の発言です)」と話しながら、銀行はもっともっと脆弱層のことを考えなければならないと主張しました。

王命(?)だから、仕方ないでしょう。銀行のローン金利などはさっそく下がる傾向を見せましたが、専門家たちは「福祉と金融を一括りにしている」と見ています。銀行は株式会社であるという基本的なことを、考えてないというのです。京郷新聞は、尹政権が「銀行は公共財」発言などでKB・新韓(シンハン)・ハナ・ウリ・NH農協など、いわゆる「5大金融持株」に対して『猛攻を続けている(原文のままです)』と報じました。大統領だけでなく金融当局も、ローン金利と成果給支給、企業支配構造など全方位的に批判、銀行にローン金利の引き下げ、社会貢献の拡大などを圧迫している、というのです。

 

ただ、記事は、結局はポピュリズム政策にすぎないのではないか、と指摘しています。これもまた、前にどっかのエントリーに書いた記憶がありますが・・金利が上がって問題になっている根本的な理由は家計債務なのに、韓国では『銀行が社会貢献をしないからだ』という見方が強くなっています。これに合わせて、政権の問題ではなく銀行の問題で、財政を動かすのも政権ではなく銀行だ、という雰囲気を作ろうとしているのではないか、と。記事にはいろいろ書いてありますが、「金融と福祉は一括りにできない」という指摘が、的確かもしれません。以下、<<~>>が引用部部となります。

<<・・金融専門家たちは、方向は正しいものの方法が間違っているという立場だ。政府が、福祉と金融を混ぜているだけだとし、脆弱な借主支援は政府がすべき福祉の領域だと指摘した。法人税を増税したり、あるいは金融会社が出捐する基金などで財源を設けた後、高金利に苦しむ庶民・小商工人を支援すべきではないのか、ということだ。何らかの方法で、大統領と金融当局が前に出て、株式会社である銀行をたたくよりは、公開的議論を経て透明で合理的な制度を作ることを優先しなければ、ポピュリズム論争から抜け出すことができないだろうという指摘だ。

 

匿名を要求した民間研究所関係者は、「金融の過程で発生した脆弱階層に対しては、社会的福祉が重要だが、金融と福祉を混ぜてはならない」とし「政府は庶民のために価格(金利)をコントロールするとか言っているが、それが庶民にだけ適用されるわけではない。市場の論理をゆがませるだけであり、結局は経済にマイナス影響を与える可能性がある」と話した。

政府の「価格コントロール」は、韓国銀行の通貨政策とのギャップを作り出し、金融市場に問題を誘発させる可能性があるとも指摘されている。たとえば、韓銀(※中央銀行)が基準金利を上げると、市中銀行がローン金利を上げて市中流動性を吸収し、物価をおさえることになる。ところが、韓銀が基準金利を上げたのに、市中銀行が金利をむしろ下げるなら、韓銀の通貨政策は無力化されてしまう。韓銀が基準金利を上げても流動性が増え、ウォン安が続き、債券市場が影響される可能性もある。

 

このため、政府は金融システムには触れず、財政で脆弱借主を選別的に支援すべきではないのかという主張が提起される・・・・匿名を要求したある経済学者は、「高金利で国民が苦しんでいるなら、政府がその利子の分を支援してやればいい」とし、「金利が高いときに庶民が経験する苦痛というのは、政府が財政政策で解決する問題であり、価格(金利)への介入で解決する 問題ではない」と話した(京郷新聞)・・>>

米国側の基準金利引き上げは、しばらくは続くだろうと言われています。「米国との金利差を考えて基準金利を上げる。私ではなく中央銀行が。同時に、家計債務の金利は下げる。私ではなく民間銀行が」という政策が、いつまで続くのでしょうか。また、どれだけ効果を出すのでしょうか。引用部分にはありませんが、ある経済学者はインタビューで、「制度改善とかの話なら分かるけど、お金パーティーがどうとかと言われると、『批判したいだけだろう』としか思えません」と話しました。これが正解かもしれません。

 

 

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