「日本は、どうやってレアアース紛争で勝利したのか」・・中国発のレアアース・リスクに、再び注目される日本の動き

16日、中国は、レアアース関連技術の輸出を制限すると発表しました。ほとんどの記事は「じゃ、どの会社の株価が上がるのか」だったりしますが、一部のメディアがレアアース、レアメタル関連記事を載せています。そんな中、住友商事が、精錬まで済ませたレアアースを、米国唯一のレアアース生産会社MPマテリアルから直輸入する形のサプライチェーンを構築しました。米国だけでなく、東南アジアなども含めて、レアアースの地政学リスクに備える形となります。あくまで個人的な感覚ですが、この件、日本よりむしろ韓国で大きく報道されています。

なにせ、最近、半導体関連のニュースが多く、米国が日本が台湾がオランダが・・な記事が多いですが、実はバッテリー製造に必要な鉱物の6割~9割、中間財でも『前駆体』の9割以上を中国から輸入しているからです。こういうのを中国から輸入していること自体が問題というより、これをなんとかするための政策がまったく見えない、詳しくは『話はあっても、結果が全然出ない』のが問題でして。文政権はそうだとして(達観)、尹政権になってからも同じです。

 

また一部のメディアは、2010年に日本と中国の間でおきた、レアアース関連の対立も取り上げています。られています。ただ、多くの記事は「中国の圧力に、日本はすぐに尻尾をさげた(まけを認めた)」ということにしています。まず、レアアース関連でシリーズ記事を載せているイーデイリー記事その1記事その2と、2010年に日本と中国の間で発生したレアアース騒ぎについても取り上げたいと思います。2019年7月27日の東亜日報の「日本はどうやって希土類(レアアース)紛争で勝利したか」という記事ですが、これは、韓国メディアとしては珍しい内容です。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・22日(現地時間)ブルームバーグによると、米国唯一の希土類生産業者であるMPマテリアルズは、日本企業に直接希土類を供給する内容の契約を締結した。MPマテリアルズは、カリフォルニア州に位置する「マウンテンパス」鉱山で採掘する希土類を、日本の総合商社である住友に直接販売することにした。住友は日本企業にMPマテリアルズの希土類素材を独占配分する権限を確保した。両社は「日本が米国が生産した希土類素材の供給を受けることは、日本製造業のサプライチェーンを安定化し、多様化する意味がある」と強調した。

これまで、世界中の鉱山で採掘された希土類は、ほとんど中国に送られ、製錬過程を経た。日本企業も、そういう商品を購入する形だった。希土類を精製、製錬する過程での労働、および発生する物質に関して、中国ではルールがゆるく、安く希土類を精錬できたからだ。しかし、中国の希土類資源にリスクが高くなり、各国は代替する案を探している。中国は、希土類技術輸出を制限すると発表した。16日(現地時間)、中国商務部は希土類の精製、加工、利用のための技術輸出を制限すると明らかにした(イーデイリーその1)・・>>

 

<<・・グローバルに、鉱物関連の動きが加速している。リチウム埋蔵量が豊富なメキシコとアルゼンチンはリチウムの国有化を宣言し、フィリピンはニッケル輸出に最大10%の税金を課す方案を検討している。海外鉱物依存度が大きい我が国では、この流れに備えておかなければ、半導体・バッテリー産業が大きな影響を受けるしかない。特に、米中対立が深まる中、中国鉱物輸入比重が90%を超える韓国としては。相当なリスクに直面している。実際、昨年中国から輸入した核心バッテリー鉱物は、ニッケル99.4%、リチウム63.2%、コバルト81.5%、黒鉛93.1%に達する。 バッテリー3社の主力製品であるNCAとNCMバッテリー陽極材に入る中間材、すなわち前駆体の中国輸入比重は、なんとそれぞれ92.6%と99.9%に達する(イーデイリーその2)・・>>

 

で、ここまでは普通に現状認識というか、リスクが大きいから気づいてほしいとか、そんな内容として読めますが・・ヘラルド経済(2月24日)の場合、この件を取り上げながら、「(2010年の件は)意外と早く終結した。日本に希土類輸出を中断するという中国の宣言に、日本がすぐにしっぽを下げたからだ。希土類という不慣れな名前の鉱物が外交『カード』として使われた事例として、国際社会に刻印された」としています。どうしてもこう書かないといけない、なにかの理由でもあったのでしょうか。しかし、2010年の件については「日本の勝利だ」という見解を述べた韓国メディアもあります(ありました)。2019年の記事ですが。

<<・・(中国とのレアアースの件があった2010年)日本の人たちは、驚くほど冷静に動いた・・・・短期的にはレアアースの供給確保に最大の努力を傾けた。商事「双日」は2010年11月、日本政府機構であるJOGMECと共同で2億5000万ドルを豪州のレアアースメーカー・ライナスに出資した。出資金は、経済産業省が発表した「レアアース総合対策」の予算1000億円の一部だった。レアアース問題が9月、経済産業省の対策発表が10月、ライナスへの出資は11月に行われた・・

 

・・2012年4月、日本の大企業「日立」が、レアアースを使用しない産業用モーターを開発した。2015年経済産業省の報告書によると、レアアースの使用量削減のための技術開発は、中小企業を含む多数の企業で、商業レベルでの進展があった。技術開発がこのように迅速に行われたのは、実はすでに2007年から投資が行われていたからだ。その一つが、文部科学省が2007年に着手した「元素戦略プロジェクト」だ。20以上の大学や企業が参加したこのプロジェクトで、代替材料の研究にかなりの成果があった。2010年からは、レアアースの代替材料の開発にその研究成果が応用されている。

2012年3月には、米国、EUと共に、日本は中国のレアアース輸出措置に対しWTOで提訴、2014年8月には、中国の措置はWTO協定違反だという判決を引き出した。レアアース紛争は結局、日本の勝利に終わったのだ。レアアースでの日本の中国依存度は、2009年の86%から、2015年には55.5%まで下がった。一方、中国のレアアース業界は、2014年に赤字になった。レアアースの価格が急落したためだ。中国政府はATH敗訴の後、2015年1月にレアアース輸出関連措置を全面撤廃した(東亜日報)・・>>

 

で、最後に、全然レアではない告知ですが・・次の更新は28日(火曜日)の朝11時頃になります。約1日半、休むことになります。休む日が多くて申し訳ございませんが、ご理解の程をお願い申し上げます。

 

 

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