サムスン電子、中国工場問題に続き「在庫50兆ウォン突破」が報じられる・・一部のメディアが「半導体リスク」を取り上げるも、さほど話題にならず

本ブログもそうですが、最近、半導体関連の記事が増えました。日本、米国、台湾の協力体制が確実になったのもそうですが、中には「もし『チップ4』が始まるとして、私たちの役割は何なのかはっきりしない」「4か国(日米台韓)協力というけど、3か国(日米台)協力になっている」などの主張まで出てくるようになりました。朝鮮日報などが特にこのような記事をよく取り上げています。半導体設備投資の税額控除に関する関連法案も、いまのままでは国会を通過するのは難しい、などなど。

そんな中、今度はサムスン電子の在庫が大幅に増え、50兆ウォンを突破したというニュースがありました。同じく朝鮮日報です。記事は、サムスン電子の在庫資産が2022年基準で初めて50兆ウォンを超えたとしながら、原材料の調達費用も110兆ウォンを超え、グローバル景気低迷とサプライチェーンの揺れ(原材料価格)によるものだ、としています。また、これは他の企業も変わらない、とも。でも、こういう記事は・・なんというか、多くのメディアが報じるものの、あまり話題にはならない、そんな雰囲気だったりします。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・サムスン電子が最近公示した報告書によると、昨年末、在庫資産は52兆1878億ウォンとなり、1年間で10兆ウォン以上増えた。完成品に当たる「製品および商品在庫」が前年比23.4%増の16兆322億ウォンとなり、「半製品・(製造過程中にある製品)」は32.8%増の20兆775億ウォンだった。業界は、テレビ、スマートフォン、家電製品の消費が振るわず、主力であるメモリー半導体の需要も低下したのが理由だと分析している。こうした中、原材料価格までが上がり、コスト負担はさらに重くなっている。サムスン電子の昨年の原材料・商品調達額は112兆5919億ウォンで、前年を15%上回った・・

・・在庫と原材料費用が共に急騰する現象は、国内の他の企業も同じだ。代表的な電子部品企業であるLGイノテックは昨年末基準、在庫資産が1兆9787億ウォンで、1年前に比べて41.2%増加した。LGイノテックもまた、製品および商品の在庫資産が8003億ウォンから1兆2324億ウォンに54%急増、同期間に原材料投入・商品買取費用は前年より38.7%急増した14兆7777億ウォンと集計された。サムスンSDIも原材料使用額が17兆443億ウォンで、1年前より47.5%増加した(朝鮮日報)・・>>

 

前にも在庫関連エントリーで引用したことがありますが、過剰在庫と企業の利益には妙な関係があります。法人向けIT製品比較サイト「ITトレンド」の説明から、事例を引用致します。仕入価格が100円、販売価格が300円、仕入数10個(原価は100円×10個で1,000円)、販売数2個(売上は300円×2個で600円)の場合、実際には売上が600円で仕入原価が1,000円だから400円の赤字になります。しかし、あくまで「帳簿上の話」ではありますが、帳簿では『実際に売れた商品の原価だけを考える』ため、売上600円-売上原価(仕入1,000円-在庫800円)で、400円の黒字になります。在庫800円分は「在庫資産」となり、損失と見なされないのです。

しかし、いくらこのような「マジック」があるとしても、製品販売価格が変われば、『在庫資産』の価値算定も変わることになります。需要萎縮で販売価格が下がれば、在庫資産の評価も下がる可能性が高いでしょう。この流れが続くと、マジックも限界を迎え、下落分を売上原価に反映し、売上総利益と営業利益も実際の状況を反映セざるを得なくなります。在庫が増えると、製品価格の追加下落になりやすいでしょうから、このようなデータが記事になるわけでして。苦戦しているのは他の国、他の企業も同じでしょうけど、韓国経済において貿易、特にサムスン電子と半導体の比重は桁違いですから・・

 

ただ、このように「いまは大変な時期だ!」とする記事もありますが、「米国も中国も私たちを必要としているので、米国に名分を、中国に実利を合わせても、何も問題ない」とする主張も広がっています。これといってやることはなにもなく、あるとすれば、もっと自身を持って(バイデン大統領などに)ビシッと言うことである、というのです。しかし、流れが明らかに韓国経済においてリスクしか見えていません。すでに去年10~12月期、サムスン電子のメモリー部門は営業利益が97%も減少しているし、2月(20日)にも半導体輸出は44%減少、『実利』とされる中国への輸出も大幅に減りました。

米国のアラン・エステベス米国商務省次官は、サムスン電子とSKハイニックスが中国工場で生産する半導体には、一定の技術水準以上の半導体を生産できないように設定する、と話しました。両社は中国工場への半導体設備輸出(搬入)関連措置に1年の猶予を得ていますが、この1年の猶予が終わる今年10月からは、再延長せず、生産する半導体の『技術的上限』を設定する、というのです。サムスン電子は中国の工場でNANDの40%を生産しており、SKハイニックスはDRAMの50%、NANDの30%を生産しています。韓国の半導体輸出において、中国への輸出は2022年基準で39.7%。

 

 

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