韓国のマンション価格、『本当に価格が半分になった』事例が多い中、一部メディアは「回復に向かう」「今は購入タイミング」

おかげさまで、新刊が発売され、多くの書店に並ぶようになりました。本当にありがとうございます。その内容とも関係がある案件ですが、韓国のマンション価格についての、最新(1月~2月あたり)の情報となります。実はこの件、ネットメディアなどから「なんでこんなに記事によって内容が異なるのか」といわれるほど、メディアによって、記事によって、書き方が全然違います。詳しい理由は分かりませんが、データの「どの部分をどう見るのか」が異なるからだ、とも言われています。

一部のメディアは、データ全体ではまだ下がりつつあるけど下落の幅は緩やかになったし、取り引きの件数も増えたから、もう大丈夫だとします。いまが購入のタイミングだ、これから回復に向かう、とする記事もあります。逆に、まだまだマンション価格は下がるとするメディアもあります。いま取引されているのは、いわゆる急売物件(ある事情で急いで売らないとならず、その分、安く出た物件)であり、『さすがにこの価格で買うと、これから値上がりするだろう』と信じている人たちが購入しているだけだ、というのです。

 

実際、ソウルのマンションの中位価格が10億ウォンより安くなった、とのニュースも出ています。この場合中位価格というのは、たとえば、『地鳴ら市(し)』という市に100棟のマンションがあるとします。それらを価格順で並べた際、ちょうど50番目になるマンションの価格が、地鳴ら市のマンション中位価格になります。ソウルでマンションを買うには、中位価格でも10億ウォン、約1億円必要だという意味ですから・・個人的には高すぎると思いますが、いままで、何かの「危機」とされる時期でもないと、ソウルのマンション中位価格が10億ウォンより安くなることはないそうです。地方都市の場合はもっと大変で、韓国でも大都市の一つである大邱の場合、マンションが「本当に分譲価格の半分で販売された」と話題になっています。

いままでは「(象徴的な、または慣用的な書き方として)価格が半分になる」という文章を多くのメディアが書いてきましたが、それが「本当に」半分になったわけです。5億ウォンのものが、2.4億で売れたとか。同じく、1~2年前には、多くのメディアが同じく「所得の半分以上を家計債務の返済に使う」と書いていました。しかし、去年あたりから「本当に」そうなりました。マンションを買った人たちの場合、平均で所得の6割を返済に使っているというデータも出ています。ちなみに、大邱はとくに未分譲(売れ残り)が多い地域です。

 

去年5月あたりからの集計で、マンションの場合は全国的に16~17%、ソウルの場合は22%価格が下落した、とされています。韓国経済TVが引用した専門家の意見の中には、「家の価格だけでなく、伝貰(ジョンセ、家を借りる制度)価格も安くなっているので、しばらく価格の上昇は難しい」というのもあります。いままでは、マンション価格が下がってから、ジョンセ価格が上がり、それが家の価格を上昇させる大きな動力源になってきた、というのです。しかし、いまはそのような現象が見えず、家の価格とジョンセ価格が共に下がっているので、しばらく上昇は難しく、5年以上はかかく可能性もある、と。

<<・・住宅価格が、昨年5月以降に下がり始め、全国マンションの場合16.84%、ソウルのマンションは22.09%下落しました。いままで、最大の下落幅です。しかし、一部の専門家は「まだ住宅価格のバブルは残っている」とし「今より20%以上は下がるだろう」と述べました。インタビューを見てください。【キム・ギウォン/データノーズ代表:「新型コロナが発生し、途方もない流動性と超低金利が作られ、家の価格が急騰するようになりました。この価格を、頭の中から消す必要があります。住宅購入の魅力や所得などを考えても、いまからさらに20〜30%はバブルです」】。買い手が望む価格帯にもどるほど、家の価格上昇は難しいだろう、という意味です・・

 

・・ここに、輸出減少、物価上昇など景気低迷の懸念で、家を買おうとする人は多くありません。特に韓銀は最近金利を現状維持にしましたが、米国はいつ金利を上げるか分からないし、その場合は追加で金利を引き上げる可能性が高いです。また、住宅価格を話す際に欠かせないのがジョンセ価格です。家の売買価格と、ジョンセ価格の比率のことです。いままでは、ジョンセ価格が上がって家の価格を押し上げることを、何度も経験してきました。ところが、最近はジョンセ価格が大きく下がっており、2月のソウルのマンションのジョンセ価格は、売買価格の51.23%で、データ集計以来最低の、50%ラインもあやういところです・・>>

1月にエントリーしたことがありますが、ギャップ投資というものがあります。たとえば、Aさんが5億ウォンのマンションを購入したがっている、とします。でも、Aさんは2億ウォンしか用意できません。そのとき、(まだ家は買ってないけど)「この家、3億ウォンで伝貰に出します」とし、希望する入居者Bさんから3億ウォンの保証金をもらいます。それを合わせて、5億ウォンで家を買います。あとは、その家にはBさんが住みます。Aさんはマンションの値上がりを信じ、どこかでサバイバル。これをギャップ投資といいます。文政権の頃、「ソウルで取り引きされた住宅の40%はギャップ投資によるもの」という話もありました。家の売買価格とジョンセ価格の差が広がったというのは、このようなギャップ投資ができなくなる、という意味でもあります。

(※追記)追記というか告知のようなもので恐縮ですが、ちょうどタイミングよく、3月1日発売の新刊の抜粋が「プレジデントオンライン」に掲載されました。本エントリーと繋がる内容ですので、ぜひお読みください。 あと、今日(土曜)と明日(日曜)は、1日1回更新になります。次の更新は、明日の朝11時頃になります。ご理解の程をお願い申し上げます。

 

おかげさまで、新刊発売です!今回は、マンションを買わないと『貴族』になれないと信じられている、不思議な社会の話です。詳しくは、新刊・準新刊紹介エントリーを御覧ください。経済専門書ではありませんが、ブログに思いのままに書けなかったその不思議な「心理」も含めて、自分なりに率直に書き上げました。以下の「お知らせ」から、ぜひ御覧ください。ありがとうございます

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