米韓の金利差、「史上最大」なるか・・3月中に1.5%p~1.75%p差か

まだまだワンスン(された)報道が多いですが、実は7日、2月18日にお伝えした「政府の金利圧迫」に関する続報がありました。韓国銀行(中央銀行)のイ・チャンヨン総裁が、「政府が銀行の金利に介入するのはやめたほうがいい」と発言したのです。中央銀行側が尹政権の政策に批判的な話をしたのは、これが初めてです。韓国には、右側は富裕層の味方、左側は庶民の味方だという認識があります。言うまでもなく、実際は(結果としては)そうでもありません。文政権が最低賃金を一気に上げたことで、壮大な逆効果が出たのは、有名な話です。

しかし、こういう認識は、結構大きな影響力を持っています。だから、右側の政治家たちは「私たちこそ庶民の味方です」というイメージを出すために頑張っています。これまた、結果はともかくして。その一環なのかどうかは分かりませんが、尹政権は『家計債務の返済負担が増えたのは銀行の責任だ』とする世論に合わせています。政府当局が銀行側に「基準金利上がったけど、金利を上げないで」としながら、民間銀行の金利に直接的に影響力を行使しています。その動きはどんどん明らかになってきて、2月には大統領自ら「銀行は公共財だ」「銀行が『金パーティー(荒稼ぎを楽しむ)』をやっている」などと話しました。

 

イ総裁はこの件で、7日今の尹政権の金融政策そのものが間違っているわけではないけれど(今までのスタンスがこれでした)、民間銀行に必要以上に介入しないでほしい、と発言しました。面白いのは、この内容が載っているのは、私がチェックした中では、左側の代表メディア、ハンギョレ新聞だけです。他のメディアの記事には、この内容はありませんでした。また、イ総裁は「国内の銀行は、海外の銀行とは違い、変動金利に頼るしかない」という説明をしましたが、これも迂回的に「銀行側も大変」「基準金利が上がったから仕方ないでしょう」という意味ではないでしょうか。

この前、基準金利の現状維持を発表しながらも、「霧が濃くていったん車を停めただけだ」と、慎重な姿勢を見せていたイ総裁。いま、基準金利は3.5%です。米国は4.5~4.75%で、金利差は1.25%pです。米韓の金利差は、いままでは1.5%pが最高記録でした。21~22日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、0.5%pの金利引き上げが予想されています。本当に0.5%上がるなら、金利差は1.75%p。最大記録更新となります。イ総裁は、「尹政権のやり方でなんとかなる状況ではない。もうすぐ、私たちはまた金利を上げることになる」と分かっているのかもしれません。また、確かめる方法はありませんが、前回の「現状維持」も、実は政府側が決めたもので、中央銀行の意志ではなかった・・かもしれません。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・イ・チャンヨン総裁が、政府の融資金利引き下げ圧力が長期化すれば、過度の介入になる可能性があると述べた。銀行間の競争を促進する政策が、銀行産業の発展を遅らせるものになってはならない、とも。イ総裁が金融当局の「官治」関連論議と、銀行競争促進政策について、直接的に懸念を表わしたのは今回が初めてだ。イ総裁は7日、放送記者クラブ招待討論会で「政府の貸出金利引き下げ圧力が長くなりすぎると、先に述べた、そのような懸念が起きる」と話した。「政府の過度な介入で、『官治金融』が再現されるのではないか」という質問に答えながら出てきた発言である・・

・・一方、政府はより根本的な問題に集中しなければならないと強調した。国内の銀行が、高金利の局面で多くの利益を出す背景には(※大統領が『お金パーティー』と話した部分)、高い変動金利の割合があるだけに、この割合を引き下げる必要がある、という話だ。イ総裁は、外国の場合は、銀行が固定金利融資を増やすこともできる市場構造ができているが、国内はそうではないと説明した。資金調達の満期が比較的短い状況であるため、長期固定金利融資を増やすと、銀行が金利上昇期にダメージを受けることになるからだ。外国の銀行は、国債長期物の先物市場を利用して、このリスクを管理できる。国内の場合は、このような市場が進んでいない、ということだ(ハンギョレ新聞)・・>>

 

余談ですが、中央日報など一部のメディアは、「今回米国が0.5%p引き上げて、その次に0.25%p引き上げると仮定するなら、その間に韓国銀行が1回(少なくとも0.25%)は基準金利を上げておかないと、5月~6月には両国の金利差が2%pになる可能性もある、としています。さて、どうするのでしょうか、ユンたん。 あと、おかげさまで絶賛完勝中の新刊ですが、その一部が、「プレジデントオンライン」に掲載されました。こちらが1回目、こちらが2回目です。それぞれ、3月3日、3月7日に掲載されました。まだ未読の方は、ぜひお読みください。

 

 

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