韓国、普通の銀行と「貯蓄銀行」の預金金利が逆転・・これは、庶民金融そのものの危機を意味する

SVB(シリコンバレー銀行)問題が起きている中、韓国では、別の銀行・・実は銀行でもありませんが、貯蓄銀行・貸付業者関連のデータが注目されています。本ブログでは何度も取り上げた内容ですが、韓国では普通の銀行を第1金融圏(または「都市銀行」「市中銀行」)、それより金利は高いけどローンのハードルが低い貯蓄銀行(実は銀行ではありませんが、銀行という名称が法的に許可されています)などの金融機関を第2金融圏、預金無しで貸出専門の貸付業者(合法)を第3金融圏と言います。普通、第2と第3は庶民金融とされますが、これが大いに揺れています。

どんな側面を見て「揺れている」とするのか・・にもよりますが、個人的に、「ありえない」としか思えない記事がありました。一部貯蓄銀行の預金金利が、第1金融圏(普通の銀行)より低くなったというのです。朝鮮日報(朝鮮BIZ)の12日の記事によると、「高い金利で人気を集めた主要貯蓄銀行の定期預金が、最近、市中銀行(※第1金融圏)より低い金利を提供している。普通、貯蓄銀行が競争力強化のため銀行圏より預金金利を1~2%ポイント高く提供する点を考慮すれば、異例の状況だ」、とのことでして。さらっと書いてありますが、これは、そのまま第2金融圏からの資金離脱の可能性を意味します。

 

資金離脱が起きるとどうなるのか。ローンの回収を強化するしかないでしょう。第2で借りられなくなった人たちはどこへ行くのでしょうか。ちなみに、第3は、同じ理由ですでに新規ローンを中断しています。ローンの場合は、第1で借りることができないから、仕方なく第2を訪れる人たちがいます。でも、預金は違います。普通の銀行より金利が低いなら、どこの誰がわざわざ貯蓄銀行に預金するのでしょうか。だから、普通、第2金融圏の金利が第1より低いなんて、ありえません。そもそも、第1とか第2とかのシステムが定着したのは、実に様々な形で『回して防ぐ(ローンを受けて、他社のローンを返済する)』が繰り広げられている家計債務問題があるからです。私も、韓国で家計債務が問題になる前には、貯蓄銀行という名称は聞いたこともありませんでした。

このシステムそのものが、もう限界に来ている、といったところでしょう。金利が低かったときには問題なかったけど、金利が上がり、これからさらに上がると予想され、『上限金利が20%』という枠の中で、各金融期間のサバイバルが始まりました。銀行とて、お金を用意するにはお金がかかります。ローンなど貸し出しで、それ以上の利益を残さないといけません。しかし、貯蓄銀行の場合は、普通の銀行に比べて、その資金を用意するためにもっとお金がかかります。だから、ローン金利も普通の銀行より高くなります。そして、普通の銀行ではローンが組めない人たちが、金利が高いと知っていながら貯蓄銀行を訪れる。それが、このシステムの本質です。

 

しかし、その貯蓄銀行の場合、事実上の上限金利、19%以上でローンを組んでも、利益が残せなくなりました。貯蓄銀行が『お金』を用意するためにかける『お金』が、高くなりすぎたからです。上限が20%だからこれ以上上げることもできないし、さらに、ローンを回収できないリスクまで高くなりました。簡単に言うと、「金融機関としての存在意味を維持できる力」がもう残っていません。もはや第1より預金金利を低くせざるを得なくなりました。『預金』そのものがなく、貸出専門である貸付業者(第3金融圏)では、数ヶ月前から同じ動きがありました。新規ローンは事実上中断してある、と。金融当局が貸付業協会に『庶民への貸し出しをやめないでほしい』と要請したこともあります。この流れが、第2金融圏まで来たわけです。

 

貯蓄銀行は、初めて延滞金額が3兆ウォンを突破しました。全国に79社ある貯蓄銀行平均で、延滞率は3%。金融機関の話だし、円にすると大したことないと思われるかもしれません。でも、もともと貯蓄銀行というものは、資産が数千億ウォン~1兆ウォン規模となります。それに、去年11月3日ビジネスウォッチの記事によると、一部の貯蓄銀行は、「3ヶ月未満の延滞」は延滞としてカウントしていません。また、このデータは去年9月までのもので、それ以降の金利引き上げ分は反映されていません。

ちなみに貸付業者の場合、協会が把握できる25社だけのデータですが、去年12月時点で「担保があるローンの場合、平均10.2%」と発表されています。一般的に、5~6%が普通とされる、とも。さて、貯蓄銀行の去年12月までのデータは、もうすぐ発表されると言われています。去年10月・11月の金利引き上げの影響が現れるのは、早くても今年だと言われていますが・・さて、どうなっているのか、気になるところです。

 

 

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