止まらない家計債務問題・・約122万世帯、ローン元利金返済分が給料より大きい(DSR100%以上)状態に

GDP比で、国際金融協会IIF基準で世界1位、国際決済銀行BIS基準で世界3位~4位(年度によります)といわれている、韓国の家計債務。最近の家計債務関連データは、見方が分かれています。増加がやっと止まったという肯定的な見方もあります。ただ、これは『金利負担が急速に増えたので、少しでも余裕のある人は、債務を返済しているため』であり、そんな余裕がない人たちの場合は、さらに負担が増えている・・すなわち、『中身』としては、問題が深刻になっているという見方もあります。

その『中身』について一つの論拠になるのが、DSRです。所得のどれぐらいを元利金返済に使っているのか、という指標です。これに関しては、いままでも興味深いデータが何度も出てきました。拙著でもブログでも取り上げましたが、個人的に『あ、さすがにこれはちょっと・・』と思ったのが、去年12月、クッキーニュースというメディアが調べた『ローンで家を購入した人は、所得の60%を元利金返済に使っていた(DSR60%)』です。ちなみに、最低限の生活費が残せるラインが、70%だと言われています。

 

他にも、DSR関連でいろいろ記事が増えてきましたが・・今回、また一つ、気になるデータがあったので、紹介したいと思います。『約122万世帯が、給料でローンの元利金が返済できない(DSR100%)』です。ソースはニューシースで、122万という数字は私が出した推算です。記事には『家計負債がある借主100人の9人』となっています。私が推算したのは『世帯』で、記事原文は『借主』なので(ローンを組むとき、普通、金融機関は世帯を単位にすると思いますが、1世帯に借主が二人いることもありますので)、多少のズレはあると思われます。じゃ、どうしてこんな数値が出てきたのか、ちょこっと書いてみます。<<~>>は記事からの引用部分です。

 

<<・・我が国の借主100人のうち9人は、月給で元金と利子を合わせた元利金を返済できないと集計された。また、BIS基準で、所得に対する家計債務比率が全世界主要国の2番目に高いことが分かった(※引用部分にはありませんが、1位はオーストラリアです)。韓国銀行が23日に発表した「金融安定状況(2023年3月)報告書」によると、昨年末基準、全借主のうち、総債務元利金償還率(DSR)が100%以上の借主が全体の8.8%に達した。これらの借主の融資比重は、全体融資規模の29.4%を占めた・・・・所得に対する全体金融債務の元利金返済率を意味するDSRが、100%を超えるということは、元金と利子を合わせた元利金償還負担額が、所得を超えていることを意味する。毎月稼ぐお金をすべて使っても、ローンを返済する分には足りないという意味であり、延滞の可能性が高い(ニューシース)・・>>

 

「延滞の可能性高い」って、本当にやさしい書き方ですね。で、そこはともかくして、これを%ではなく数字にしてみたいと思います。まず、韓国の全世帯のうち、家計債務があるのは63~64%とされています。2020年基準で、全世帯数は約2200万世帯。なんで「約」かといいますと、韓国でも「1人世帯」がもっとも多くなって久しいですが、1人世帯の場合、住民登録上の住所変更をちゃんとしない場合が多いため、実際の発表値より多めに推定した数値だからです(統計上では親のところで住んでいるとなっているけど、実際は一人暮らしの『世帯』になっている)。じゃ、2200万世帯の62%として、家計負債がある世帯は、約1364万世帯。

繰り返しになりますが「借主」と「世帯」が異なるので単純計算はできませんが、あえて強行してみると、その中の9%がDSR100超えですから、『元利金返済が給料総額より大きい』のは、約122万7000世帯。少なく見積もっても122万世帯は、DSR100%という推算が可能です。記事には、彼らの債務規模が29.4%となっていますから・・家計債務を1800兆ウォンにすると、540兆ウォンになりますね。しかも、家計債務統計には、第3金融圏(貸付業者)のデータはちゃんと集計されないと言われています。言うまでもなく、違法な金融業者(サグミュン、サチェなど)は統計に入っていません。 申し訳ございませんが、今日の更新はこれだけです。次の更新は、明日(24日土曜)の11時頃になります。

 

 

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