韓国の共同住宅(マンション、アパートなど)公示価格、最大の下落幅

右側メディアが「いまこそ買い」という専門家意見が載せていたので、マンション価格関連で何かあったのかな・・と思って、ちょっと調べてみました。すると、なるほど。22日に、今年の公示価格発表がありました。特に、マンションに限ったものではありませんが、韓国の共同住宅(マンション、アパート)の公示価格下落が話題になっています。なにせ、共同住宅の公示価格が、18.61%(ソウルの場合は17.3%)も下がりました。

これは、2005年にデータを発表するようになってから、最大の下落幅である、とも。リーマン・ブラザーズ事態などの影響が反映されている2009年の公示価格は、マイナス4.6%でしたから・・確かに、大きく揺れたと言えるでしょう。ソース記事は京郷新聞です。公示価格だから実際の取引価格ではありませんが、政府の公式データになるため、多くの政策に一つに指標となります。たとえば、各種税金の指標になります。この価格を基準にして税金が決まります。また、政府から生活保障などの支援(日本で言う生活保護のようなもの)を受ける人たちの場合、所有している家の価格も一つの基準になります。公式価格が上がると、その人は何もしていなくても、支援が受けられなくなります。

 

また、実際の取引価格ではないにせよ、価格が上がったのか下がったのか、流れを見ることはできます。そして、なにより、この公示価格は、伝貰(ジョンセ)価格を決める基準となります。これについては、ちょっと後で詳述します。記事にはいろいろ書いてありますが、難しく考えることもないでしょう。実際の取り引き価格が下がったから、公示価格も下がっただけです。記事によると、公示価格は実際の取引価格より低くなりますが、実際の取り引き価格が下がり過ぎで、去年この頃に発表された公示価格より安くなってしまいました。この段落の数値はあくまで『たとえ』ですが、2021年に、実際の取り引き価格基準で10億ウォンの価値とされるマンションがあるとします。公示価格は8億ウォンとされ、8億ウォン基準で各種税金が決まりました。

 

しかし、2022年にマンション価格が下がり過ぎで、実際の取り引きにおいての価値は6億ウォンぐらいとされました。金利も上がったので、ローンの返済負担も増え、マンション価格も下がったから、それは、ま、なんというか、とてもヨンクル状態でしょう。そんなマンションに、公示価格8億ウォン基準で税金を決めたりすると、さて、強いて言うなら政権の支持率とは、どうなるのでしょうか。あくまで『たとえ』ですが、公示価格は6~7億ウォンになります。ユン政権が掲げた政策の一つに、公示価格が実際の取引価格より低すぎるので、これを現実化するというものがありましたが・・それだと公示価格を事実上「上げる」ことになるので、10年延期(2040年まで)することにしたそうです。

 

で、ジョンセ関連に戻りますと・・大家が入居者に家を貸して、多額の保証金を預かる制度のことです。保証金は後で返すことになります。大家からすると、預金金利が5%を超えていた時代には、銀行に預けておくだけでも十分な利息が得られました。しかし、最近は、大家がそのお金を使ってしまうのが『普通』になりました。前の入居者からもらった保証金を返すには、新しい入居者を見つけないといけない点です。

ジョンセ価格が下がれば、このシステムが成り立たなくなります。特に、共同住宅には、ジョンセ関連で投資を行う人たち(家を買って、ジョンセで運用し、その資金でまた投資を行う、など)の間で人気の「ヴィラ」も含まれています。ヴィラは、本来の意味とは異なり、日本で言うアパート(高層でないないもの)を意味します。朝鮮日報(朝鮮BIZ)はこの件で、「住宅価格の下落で、今年の共同住宅公示価格が最大幅に引き下げられ、住宅賃貸事業者たちがとまどっている。相当な数の賃貸事業者たちは、アパートに比べて価格の安いヴィラを数多く買い取り、ジョンセで貸し出して事業をしているが、公示価格が大きく下がり、ジョンセ価格が急落する状況になったからだ。賃貸事業者たちからすると、前の入居者からもらったジョンセ金をちゃんと返せない場合が増えることになったわけだ」としています。

 

さて、もう一つ、ギャップ投資で家を買った『大家』さんたちも気になるところです。前にも書いたことがありますが、5億ウォンのマンションが買いたいけど2億ウォンしか持っていないAさんがいるとします。3億ウォンぐらいでジョンセ(家を借りる)できないかなと物件を探していたBさんに、Aさんは「あのマンション買ってあなたに貸すから、その3億ウォンをジョンセ金として先に私に預けてください」とし、念願のマンションを手に入れました。住むのはBさんですが。あとはマンション価格が上がるのを待つのみ。でも、価格は下がっているし、ジョンセ金も下がったし、ジョンセ契約は普通2年です。このギャップ投資が特に流行ったのは、2020年~2021年。もうそろそろ、その3億ウォンを返さないとなりませんが・・もともと余裕のない「ヨンクル」さんたちのやり方なので、ちゃんと返せるかどうか。

 

 

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