中韓貿易、新しい構造が定着か・・対中貿易赤字、金額で対日貿易赤字を超える

今年(2月まで)、韓国の対中貿易収支が、大幅なマイナスになりました。いままで経済成長を支えてきた「(国内の)家計債務」と「(貿易の)中国」、両方で明らかな構造的変化が表れています。中国は、ずっと最大の貿易黒字国(韓国が黒字)でした。まだ2月のデータまでしか出ていないので「年間」というのは早すぎますが、一応、年間で中国のほうが黒字だったのは、1992年だけです。1992年に国交正常化しましたから、その直後になります。2018年に556億ドル黒字だった対中貿易収支は、去年には12億ドルまで減少しました。

さらに、今年(2月まで)はマイナスで、しかも、赤字の規模が貿易相手国の中で1位になりました。対日貿易赤字よりも大きいです。主にエネルギー関連(天然ガス、石油など)輸入が多いオーストラリアやサウジアラビア以外だと、いつも日本との貿易収支がもっともマイナスでした。聯合ニュースは、『対中貿易収支のマイナス化が、もう定着してしまった』と報じていますが、個人的に、この『定着』という言葉、ついにこの表現が来たか、と思いました。本ブログでも11月22日に紹介しましたが、去年の夏~秋頃、一部のメディアが、中韓の貿易収支関連記事を載せました。当時、対中貿易収支が、赤字ギリギリのラインまで下がっていたからです。月によっては、連続で赤字でした。

 

当時、当局はこれを「一時的なもの」としていました。しかし、「そうではない。これは構造的な変化の結果だ」という主張もありました。もちろん新型コロナなど中国内のこともあるし、米中対立のこともあるし、為替レートなどで輸入価格が増えたのもあるけど、それよりは両国の貿易の構造そのものが問題だというのです。韓国から、わざわざ中間財などを輸入する必要がなくなった、と。マネートゥデイ(2022年8月22日)はこのことで、「もっとも大きいのは、(一時的な要因ではなく)中国政府の内需強化政策」としながら、中間財を自国産製品に置き換える政策が効果を出した結果、すなわち『来るはずのものが来た』現象だとしています。

記事でジョンインギョ、インハ大学国際通商学科教授は、「私たちが中国に中間財を輸出し、(※中国で最終消費財を作って)中国が米国に輸出する仕組みが、もう機能しなくなった」と指摘しています。2000年代になってから経済においてもっとも大きな『支え』の一つが、もう機能しなくなったという意味です。聯合ニュースによると、月間・年間基準で中国が最大貿易赤字国になったことは、今まで一度もなかったとのことで、3月にも状況は変わらず、3月1~20日まで、昨年同期で中国への輸出は36.2%減、中国からの輸入は9.1%増えました。以下、聯合ニュースの記事、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・貿易収支黒字国1位だった中国が、今は貿易赤字1位国に変わっている。年間基準最後に対中貿易赤字を記録した1992年(マイナス10億7100万ドル)以後、31年ぶりに赤字を記録するのではないかという懸念が出ている。28日、貿易協会貿易統計によると、今年1月、対中貿易収支は39億3300万ドルの赤字を記録し、同月最大貿易赤字国になった。1・2月の累積収支も50億7400万ドルの赤字で、貿易赤字国1位を記録した。2月までの累積収支基準で対中貿易収支額(マイナス50億7千400万ドル)は、最大の天然ガス輸入国であるオーストラリア(マイナス48億1千500万ドル・2位)と最大原油輸入国であるサウジアラビア(マイナス46億6千900万ドル・3位)を超えた水準だ。

また貿易赤字額が日本(マイナス35億2900万ドル)、ドイツ(マイナス26億4800万ドル)、カタール(マイナス25億1900万ドル)よりもはるかに大きい。これらの国家は昨年、年間貿易赤字額で5位以内に入った国々だ。年間基準で中国は2018年韓国の貿易黒字国1位(556億3千600万ドル)から、2019年2位(289億7千400万ドル)、2020年(236億8千万ドル)と2021年 (242億8千500万ドル)には3位だったが、昨年(12億1千300万ドル)には22位になった。対中貿易収支が20位外まで下がったのは、1992年以降では昨年が初めてだ。

 

昨年、中国の「ゼロコロナ」政策による経済成長の鈍化で対中輸出が減少し、リチウムをはじめとする産業用原材料価格の急騰などで、中国からの輸入は急増した。昨年12月、中国のリオープニング(経済活動再開)で経済回復が本格化し、対中輸出も改善されるという肯定的な展望が出てきたこともある。しかし中国は今年に入って、初めて最大赤字国になり、対中貿易収支赤字が定着してしまった姿だ(聯合ニュース)・・>>

(昨日書いた)DTA100%は「もう売るものがありません」で、中国は「もう買うものがありません」といったところでしょうか。繰り返しになりますが、家計債務と中国(いわゆるチャイナブーム)は、いわゆる「IMF期」の後、経済発展を支える、二本の「柱」でした。その構造が変化しました。この影響が『本格的に』反映されるのは今すぐではなく、数年後になるという見解もありますが・・それまで、ユン政権は「次の柱」を作ることはできるのでしょうか。それとも、「次の人」に任せるか。

 

 

おかげさまで、新刊が発売中です!今回は、マンションを買わないと『貴族』になれないと信じられている、不思議な社会の話です。詳しくは、新刊・準新刊紹介エントリーを御覧ください。経済専門書ではありませんが、ブログに思いのままに書けなかったその不思議な「心理」も含めて、自分なりに率直に書き上げました。以下の「お知らせ」から、ぜひ御覧ください。ありがとうございます

・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。

   ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2023年3月1日)からですが、<韓国の借金経済(扶桑社新書)>です。本書は経済専門書ではありませんが、家計債務問題の現状を現すデータとともに、「なぜ、マンションを買えば貴族になれるのか」たる社会心理を、自分なりに考察した本です。・新刊として、文在寅政権の任期末と尹錫悦政権の政策を並べ、対日、対米、対中、対北においてどんな政策を取っているのかを考察した<尹錫悦大統領の仮面 (扶桑社新書)>、帰化を進めている私の率直な気持ちを書いた<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>も発売中です。・刊・準新刊の詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。 ・当に、本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。