韓国電力公社の社債(ハンジョンチェ)、今年中に100兆ウォン突破か・・政府は31日電気料金値上げ案を発表

最近1~2年間で、多くのメディアが何かの慣用句のように用いてきた、「まさか」シリーズが、現実になりました。「(まさかそんなことはないだろうけど)このままだと給料の半分がローンの元利金返済に使われることになる」、「(まさかそんなことはないだろうけど)このままだとマンション価格が半分まで下がる地域が出てくる」とか、「(まさか以下略)対中貿易収支で、中国のほうが黒字になる」、などなどです。

もう家計債務関連でDSR(返済に使われる所得の割合)60%は珍しくもないし、推算ではありますが、DSR100%超えが122万世帯で、DTA100%超え(債務が総資産より多い)も204万世帯に及びます。家計債務がある世帯の平均でも、DSRは40%を超えているとのことでして。一般的に、DSR40%は「リスクが高いとする一つの基準」になります(政府の判断基準)。マンション半額も多くの地域でニュースになっているし、対中貿易収支も、もう構造的にマイナスになったのではないか、と報じられています。このように、多くのまさかシリーズが、実現(?)しました。これだけの壮大な予言(?)が1~2年間でいくつも的中するとは、ノストラダムスさんもびっくりです。

 

そんな中、もう一つ、さほどメジャーなフレーズではありませんでしたが、「(まさかそんなことはないだろうけど)このままだと韓電債(ハンジョンチェ、韓国電力公社の債券)が100兆ウォンを超えるのではないか」というのがありました。年間赤字30兆ウォン超えの会社が、いくらなんでも債券100兆ウォンまではいかないだろう、と。ですが、もう75兆ウォンを突破しており、今年になってからだけでも7兆6千億ウォン分を発行しています。このままだと、今年の年末あたりには100兆ウォンを本当に超える可能性が高い、とのことでして。ナムド日報という全羅道地域のローカルメディアが指摘しています。個人的に、結構重要なニュースだと思いますが、ソース記事と、電子新聞など一部のネットメディア以外には、関連記事が見当たりません。

 

別に、ちゃんと売れるなら、債券100兆ウォンでも200兆ウォンでもいいかもしれません(微妙)。でも、去年の秋~冬あたりに何度かエントリーしましたが、「ハンジョンチェ」は、各企業の資金流動性において大きな『壁』になります。江原道(カンウォンド)レゴランド自体以降、いまでも社債市場の動きは元気がありません。そんな中、ハンジョンチェは政府保証が付いているので、債券を購入する人たちにとっては最優先ターゲットになります。その分、他の会社の債権が売れなくなるわけです。そんな中、これだけの規模の債券を発行し・ま・く・る・と、他の会社の場合、同じぐらい高いランクの債券でもない場合、どんどん資金確保(債券販売)が難しくなります。一部のメディアが、ハンジョンチェを『ブラックホール』と書く所以でもあります。

電気料金を原価よりも安くしたため、電力公社の去年の赤字規模は約32兆6千億ウォン。今年1月の電気料金値上げも、「順次、上げる」とする前提のもと、予想の数分の1にすぎませんでした。夏が来る前にもっと大幅に上げないと、もはや公社だけの問題ではない、というのが専門家たちの見解ですが・・さて、ユン政権、早ければ明日に電気料金・ガス料金の値上げを発表する、と言われています。今このタイミングで発表できる値上げは、そう大幅にはできないでしょう・・なにを言っても「首脳会談の結果だ」とか言われそうですし。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・今月、電力公社の累積会社債発行額が75兆ウォンに迫ったと見られる。このような傾向であれば、今年末の社債発行額が100兆ウォンを突破すると見られる。現在、原料費に追いつかない電気料金の引き上げにより、電気を売れば売るほど赤字になる「逆マージン」構造を、会社債で補っている。エネルギー専門家たちは、夏季が来る前の、4~6月期中には電気料金を引き上げておく必要があると見ている。29日、エネルギー業界によると、24日基準、累積ハンジョンチェは74兆5798億ウォンだ。これは長期的に償還すべき債券金額で、今年だけで長期債7兆6千100億ウォンを発行した。このままなら、今年ハンジョンチェを約30兆ウォン追加発行しなければならず、年末には累積ハンジョンチェが100兆ウォンを突破するという懸念が出ている・・

・・国会は昨年、法を改正し、公社の会社債発行限度を「資本金・積立金」の最大6倍まで拡大したことがある。だが、現状なら、これさえも来年でまた限度額になるというのがエネルギー専門家たちの分析だ。公社の資本金・積立金の最大6倍を適用すれば約120兆ウォンまで会社債を発行できると言われている。この場合、今年までは限度内で会社債を発行することができる。しかし、この状態が続くと、来年にはまたできなくなる、というの(ナムド日報)・・>>

 

電気料金関連でもう一つお伝えしますと、いま、『発電が少ない地域ほど、電気料金を高く設定する』案が動いています。早ければ、来年5月から施行される、とも。首都圏地域は発電が少ないにもかかわらず、電力消費は大きいので、基本的に首都圏のほうが電気料金が高くなります(日本の場合は電力会社がいくつかありますから地域ごとに料金が異なったりしますけど、韓国の場合は事実上電力公社1社体制です)。この場合、首都圏に住む人たち、特にソウルでの反発が大きいのでは・・と言われています。

また、サムスン電子は、ヨンインという地域(首都圏です)に300兆ウォンを投資して大規模半導体施設(工場など)を作り、日本企業も誘致すると発表したばかりですが・・何かの特例条項が無いままこの「首都圏は電気料金を高く設定する」法律が施行されると、その半導体工場などの電気料金は『今と比べて、天文学レベルで上昇するだろう(SBS Biz3月24日、原文のまま)』、との予想も出ています。 最後に告知ですが、明日30日(木曜)は、1日休むことになりました。桜をもう少し見てみたくなって・・申し訳ございませんが、次の更新は31日(金曜)の11時頃になります。

 

 

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