ソウル市、中位所得(所得中央値)の人が資産、所得、ローンなどで『買える』家は3%だけ

韓国の場合、分譲の過程・・というかシステムがユニークすぎで、いつも説明に困ります。日本もそうですが、マンションなどを建設してから売るのが普通だし、完成したからと言ってそれらがすべて売れるとは限りません。言い換えれば、未分譲とされる物件は常に存在します。だから、未分譲がある程度あるからといってそれを問題として指摘する人はそういません。一気に増えたりと何かリスクのある動きがあるならともかく、です。しかし、韓国では工事が始まる前に家を買うシステムが一般的です。不動産投資熱風により、「ここにマンション団地作るっす。きっと値上がりするっす」としておけば、「買う」はともかく、「買える権利」であり分譲権を手に入れるため、大勢の人たちが集まり、抽選は基本です。

マンション建設プロジェクトそのものが、そういうシステムを前提にして資金を用意します。よく取り上げるプロジェクトファイナンスが代表的です。何も始まっていない状態で資金を借りたので、自己資本に余裕のない建設会社、または施行社(そのプロジェクトを総括する会社)からすると、とりあえずマンション団地建設費用のほぼ全額が債務です。少量の未分譲でも、まさに生き残れるかどうかがかかっています。このような異世界っぷりにより、未分譲、特に竣工後未分譲は、韓国不動産市場において大きな問題になります。記事によっては、「5万戸超えただけでも、市場が機能していないと見る」「5万戸超えたとき、李明博政権では政府が多数買い入れて賃貸住宅として利用した」などの内容も。

 

実は2019年~2020年あたりにも未分譲の増加を指摘する声がありましたが、新型コロナ対策などいろいろあって金利が下げられ、そのような声は消えました。本ブログもそうですが、去年12月あたりから、また未分譲がニュースになりました。たとえば、去年12月13日のマネートゥデイの記事によると、去年10月末基準で、未分譲(マンションだけでなく、世帯数で)が4万7217戸になりました。数だけで見るとパッとしませんが、これは、1年前の約3倍です。先も書きましたが、市場関係者たちが見るリスクは5万戸からです。記事は、未申告の分もあるので、実際は6万世帯は超えているだろう、としています。

 

未分譲の数は、会社側の発表がそのまま集計されます。でも、先も書きましたが、未分譲そのものが『えっ?売れない家ってあるの?』な状態だったので、未分譲があると発表しただけでも大きな価格下落要因になります。だから、発表しない数もかなりあるのではないか、と言われています。実際、東亜日報が、「発表されたデータでは、竣工後未分譲は一つもない」はずのマンション団地に訪れたところ、目視しただけで未分譲は多く、調べてみたら70戸が未分譲でした。このマンション団地関連で、周辺には小学校の建設まで予定されていたのに、竣工から4年経ったのにまだ小学校工事は始まってもいない、とも。記事には書いてませんが、多分、プロジェクト段階では「小学校建設予定!」となっていたはずでしょう。

 

で、今日、4月3日。複数のメディアが記事にしていますが、「1月基準で、未分譲が75,359戸」という発表がありました。3ヶ月で結構増えました。このままだと、10万戸を超えるかもしれない、とも。ソースはアイニュース24など、です。私が知っている限りだと、すでに最高記録を超えています。各メディアの記事によると、「いまこそ買い時!」とする声もどんどん強くなっているけど、いまのところ価格が反騰する動きは見えておらず、一部で『取り引きが増えた!』とする記事も出ているものの、また別のメディアは、「それ、政府や自治体が(賃貸住宅として使う、などで)買い取ったもの」との記事も出しています。

そもそも、まだまだバブルボブル状態のようでして。ソウル市の場合、中位所得の人が買える家は、3%にすぎないとのことです。こちらは、マネーSの記事です。中位所得というのは、所得の中央値のことで、たとえばある集団に100人がいるとして、その100人を所得の順で1列に並べたとすると、ちょうど中央(50人目)に立っている人の所得が、中位所得になります。国によって異なるかもしれませんが、最近の韓国では、世帯構成員の人数によって(1人世帯、2人世帯、といったふうに)集計していると聞きます。この中位所得を調べ、それを基準に福祉政策を決めるためです。だから記事で言う中位所得の人というのが詳しくどのような立ち位置なのかはよく分かりませんが、中位所得の人(※5人以上の会社で働いている常用勤労者のみ)が、資産、所得、そして組めるローンの限度などを分析したところ、ソウル市で買える家は、3%だけである、と。3%だと、マンションは買えないでしょう。2012年には、30%を超えていました。こんな状態で「買い時」と言われましても。

 

 

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