自営業者の債務、70%(約720兆ウォン)分の返済にリスクあり・・『民間債務に支えられる経済』の今日この頃

旧ブログの頃から書いてきた記憶がありますが、韓国語には「回して防ぐ(ドリョマッキ)」という慣用表現があります。日本で言えば自転車操業のことです。それもそのはず、多重債務者を韓国では「3か所以上の金融機関からローンを組んでいる人」としますが、その数は去年9月時点で452万8000人。金額で618兆2000億ウォンです(ソウル経済2022年11月22日)。回して防ぐは、民間債務に支えられてきた経済において、基本スキルとなっています。第1金融圏(普通の銀行)、第2金融圏(貯蓄銀行など)、第3金融圏(貸付業者)が存在するのも、彼らの『回して防ぐ』あってこそのものです。

もちろん、3か所以上から借りたからといって452万8千人全員の返済能力に問題があるという意味ではありません。ただ、普通の銀行を意味する第1金融圏では借りられなかった人たちも多く、第1金融圏以外から借りた人たちの場合は、すでに去年9月時点で延滞率が8%を超えていました。ちなみに、金利引き上げが本格化したのは10月からです。さて、そんな中、中央日報が、「債務のある自営業者の約6割が、『回して防ぐ』もできなくなっている」という分かりやすい題の記事を載せました。自営業者の債務は、1020兆ウォンとされています。

 

中央銀行が国会企画財政委員会ヤンギョンスク「共に民主党」議員に提出した資料によると、去年末時点で、自営業者貸し出し規模は1019兆8000億ウォンでした。ちなみに、同年9月末データで初めて1000兆ウォンを超え(1014兆2000億ウォン)ました。この数値の算出は、『個人事業者用ローン』を組んだ人たちを自営業者とみて、その個人事業者用ローン671兆7000億ウォンに、その人たちが別に組んでいるローンの分、家計債務348兆1000億ウォンを合わせたものです。自営業者の債務を家計債務と完全に別のものとして集計するデータもありますが、この場合は家計債務まで一定部分考えたものになります。この中の約6割が、もうこれ以上ローンを組むことができない、すなわち『回して防ぐ』ができない人たちである、とのことでして。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・昨年、ローンを受けた自営業者307万人のうち、約56.4%の173万人は、家計債務でローンを組んだ金融会社の数、そして個人事業者ローンの数の合計が、3つ以上だった。10人のうち約6人は、事実上、もはや追加で融資を受けるのが難しい多重債務者だという話だ。ローン額基準では、全体の自営業者債務の70.6%、金額で720兆3000億ウォン分が、多重債務だった。彼らの1人当たりの平均ローン額は昨年10~12期基準で4億2000万ウォンと推定された。一時的に資金をなんとかしようとしても、状況は変わらず、債務で債務を返済する流れが持続しているという意味だ。

債務で新型コロナの期間を耐えたものの、金利引き上げにより、利子負担はさらに大きくなった。韓銀の分析によると、ローン金利が0.25%ポイント高くなった場合、総利子額は1兆9000億ウォン、1人当たりの平均年利子は60万ウォン増えるという。特に多重債務者の場合、ならば、2021年8月以降、最近まで基準金利引き上げ幅(3%ポイント)だけローンの金利が上がったと仮定しても、利息は908万ウォン以上増えたと分析された・・

 

・・問題は、彼らが韓国金融の「弱い輪」で今後の金融市場の不良雷管になる恐れが大きいという点だ。 高金利に景気鈍化で売上が減った自営業者らは元金と利子返済を時折できず延滞の可能性が大きくなるためだ。 さらに、コロナ以後に行われた各種政府支援の効果が消えれば、自営業者ローンの不良リスク率はさらに大きくなるという分析が出る・・・・金融当局は2020年4月から新型コロナ対策として小商工人・自営業者を対象に融資満期延長と利息返済猶予措置を施行してきた。当初、2020年末までに施行する予定だったが、新型コロナが長期化し、今年9月まで延長した状態だ(中央日報)・・>>

第2金融圏、第3金融圏が「新規ローンを事実上中断している」というニュースは、すでに去年の秋あたりから流れていて、本ブログでも何度か取り上げました。資金調達費用の上昇、回収できないリスクの増加などで、上限金利20%では、貸しても利益が残せなくなったからです。繰り返しになりますが、単に「3ヶ所以上」だから問題があるというわけではありません。『もっとも弱い環の原則』。鎖がいくら丈夫に見えても、もっとも弱い環(リンク)のところで切れてしまうため、鎖の強度はもっとも弱い環の強度で決まります。『回して防ぐ』は、彼ら弱い環のサバイバルスキルです。それが機能しなくなったとき、どうなるのか・・と、そういう話でした。

 

 

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