韓国メディアが見た日台半導体協力・・「日本と台湾が積み上げてきた『恩』について語られたとき、日台の関係者たちは涙をうかべていた」

半導体関連記事がまた急に増えました。目新しい内容はこれといってありませんが、やはり日本・米国・台湾の半導体協力に関する記事が多く、気のせいか、日本と台湾の協力を論ずる記事が目立ちます。中には、TSMCは米国のスタンス(補助金などに条件が多い)に完全には同調しないでおり、米国よりは日本との協力を望んでいるという記事もありました。ほどの差はあれど、概ね、日台協力をもっと重く見る必要がある、危機感が足りない、とする内容は各記事に共通していました。その中でも、東亜日報系列の『新東亜』というメディアの記事をピックアップしたいと思います。こちらは3月30日の記事ですが、記者さんが日本まで来て取材したもので、他の記事よりユニークな内容です。

記事は、日本、米国、台湾の半導体協力は、韓国側が考えているよりずっと本格的に進んでいるとします。記事によると、TSMCが熊本に工場を作るという話が初めて出てきたのは2020年頃。公式発表されたのが2021年、工場から半導体が量産される時点は2024年。工場の公式発表があってから、20社以上の日本企業が熊本への新規進出、または既存インフラの増強を発表。ソニーの場合スマートフォン用イメージセンサー工場を2024年に着工すると発表。経済産業省が2ナノチップ生産のための米国との先端半導体協業プロジェクトを発表したのが2022年5月、日米共同研究センターLSTCを2023年に設立すると発表されたのが2022年7月、2022年11月「ラピダス」設立。すでに法人登録は2022年8月にできていた、とも。

 

記事は、取材の際に聞いた話として、LSTCはすでに日米で2020年から会議を続けてきたとし、『いったい、どれだけ大勢の日米の関係者が、どれだけ会って会議をしたのか、想像もできない』としています。ラピダスがヨーロッパ最大の半導体研究所「IMEC」との協力を発表したのが2022年12月、IBMとの2ナノ研究・開発を発表したのが2023年1月。記事は、特に日本と台湾の協力は、想像を超えていると書いています。そして、去年6月、つくば市にオープンしたTSMC研究センターの開所式での、あるエピソードを紹介しています。以下、<<~>>が引用部分です。

<<・・日本の(※米国以外に)もう一つの友軍は、台湾だ。現場で感じた日本と台湾の間の半導体協力は、想像以上のものだった・・・・台湾と日本の友好的関係は、半導体競争において光を放っている。グローバルファウンドリ最高企業TSMCは熊本工場に続き、昨年6月、茨城県つくば市に次世代半導体技術を共同研究する研究開発センターを設立した。TSMCは技術移転にすごく慎重な会社で、他の国に研究センターを作ったこと自体が初めてだ。「魏哲家」最高経営者は開所式で、「日本と台湾は世界半導体サプライチェーンで重要なつながりがある」とし「この研究所で結ぶ協力関係がさらに革新につながると確信する」と話した。この日の開所式では、日本と台湾の人的関係がどれほど強いかを示す象徴的なことがあった。TSMCとの産学協力を導いている黒田忠広東京大学教授の演説だった。以下、イベントに参加した日本の半導体企業関係者の言葉だ。

 

「黒田教授は、過去、日本が台湾のある田舎の村に、洪水と干ばつを備えるためにダムを建てたという話をしてくれました。そのダムで土地が豊かになり、いまは台湾を代表する穀倉地帯になったという話です。台湾の関係者たちは、この内容をよく知っている、という表情でした。黒田教授は『それから80年余りが過ぎた今日、台湾会社であるTSMCが日本に来て先端パッケージ研究センターの起工式をするとは、実に感慨深いこと』、『農業の根幹だったダム建設同様、デジタル/AI社会の核心である半導体関連研究開発施設が日本に入る。日本は恩を重視する国だ。台湾も同じであり、長い間、共にしてきた日台両国がもう半導体でつながっている』と話しました。台湾と日本の出席者の中には、涙を浮かべる人もいました」

日本政府が190億円を支援する研究所では、半導体後工程(ウェハーカット後の製品化)に強みを持つ日本の素材・部品・装備企業との共同研究が推進される。これまで半導体業界の技術進化はチップをどれだけ小さくするかという微細化がカギだったが、最近では、後工程技術も非常に重要になっている。チップが分子より小さい10ナノサイズになり、これを製品化する後工程技術が半導体性能を左右しているからだ。日本の素材装備企業は、後工程分野で実に大きなな影響力を持っている(新東亜)・・>>

 

記事には「東京都茨城県つくば市」という初めて見る表記もありますが、それはともかくして・・このように、日米台半導体協力は、いまのところ、早いスピードで、技術的交流、人的交流、そして心的交流もまた、順調に進んでいるようです。だからといって油断していいわけではないでしょうけど。数年後、良い知らせが届くことを願います。

 

 

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