サムスン電子・SKハイニックスの中国輸出関連(中国工場への装備搬入)猶予措置が延長され、すでに各社に非公式に伝達されたというニュースがありました。元ソースはファイナンシャル・タイムズの報道で、まだ公式発表があったわけではありませんが、これはかなり意外です。「へぇ、こうなったか」と思う事案はいくつかありましたが、ここまで「うわ、これは意外だな」と思ったのは久しぶりです。意外なのは、内容よりも、タイミングです。すでに通知済みなら、なんでこの件を米韓首脳会談で話さなかったのか、と。
前にもお伝えしましたが、今回のユン大統領の訪米において、公式でもっとも話題になったのは核共有で、非公式(民間専門家など)でもっとも話題になったのは「1年猶予措置」でした。前者については「それは核共有ではありません」と米国側から公式発言があったりしたし、猶予についてなにか話があったなら、大統領室側が米韓首脳会談関連で本件に言及しなかったはずがありません。具体的には話さなかったとしても、少なくとも「ふっ、いろいろ話しているさ(きらっ)」という話はあったはずでは。以下、まずCBSノーカットニュースから該当部分を引用して、それから曇った私見を述べてみたいと思います。やはり「日本効果(グループA関連の話があったのは米韓首脳会談の後です)」か、それとも、例のマイクロン社関連で、政府レベルの確答があったのか、などです。以下、<<~>>が引用部分となります。
<<・・サムスン電子とSKハイニックスが、当面した懸案の一つである米国の対中半導体機器輸出関連猶予措置が、延長されるのと見られる。ファイナンシャルタイムズ(FT)は3日(現地時間)「米国が中国との競争の中、韓国の半導体企業に支援を送った」というタイトルの記事でこのように報道した。報道内容を見ると、米国はサムスン電子とSKハイニックスに非公式メッセージを送り、半導体機器を中国に持ち込めるようにしたことが分かった。中国は韓国企業のメモリ半導体生産基地として機能している。 サムスン電子の工場は全NAND生産の40%を担当し、SKハイニックスの中国工場はDRAM生産の40%、NAND生産の20%を引き受けている。 両企業ともパッケージング工場も稼働中だ(CBSノーカットニュース)・・>>
延長が何年分なのかについてソース記事では確認できませんでしたが、朝鮮日報など一部のメディアは「1年」としています。同じ措置を得ていたTSMCがどうなったかも記事で確認できませんでしたが、TSMC「だけ」猶予が延長されないとも思えません。公式発表待ち、といったところでしょうか。さて、この件、単純にタイミング的に考えると、やはり日韓関係改善の動きが影響を及ぼしたのではないか、という見方ができます。例の100年前発言(訪米直後にワシントン・ポストで公開されました)、グループA関連のニュース、シャトル外交の再開、などなどです。
そういうのが、ある種のノルマクリアーと認められたのではないか、と。次は、マイクロン社関連の話も気になります。本ブログでもエントリーしましたが、米国はユン政権に、「もし中国政府がマイクロン社に何かの措置を行い、マイクロン社の半導体生産が減少した場合、その不足分の穴埋めをしないように」と要求しました。この件において、ユン政権が、米国側にとって望ましい形で返事をしたのではないか、と。その返事が、米韓首脳会談には間に合わなかった、と。
最後に、これがもっとも「心の曇った」見方になりますが、補助金関連で「猶予しても大して変わらない」という結論になったのではないか、という見方ができます。ソウル大学材料工学部ファンチョルソン教授などが一貫してこの主張をしています。昨日も電子新聞というネットメディアとのインタビューで、(韓国側メディアに載っているものとしては珍しい主張ですが)「半導体法に、補助金の条件として『中国工場の生産量アップグレードは、ウェハー基準で5%まで』という条項があり、猶予措置の意味が無くなった」と話しています。
教授は「メモリ半導体は8GB・16GBの生産コストが異なるが、販売価格は大きな差がなく、大量生産で収益を出すしかない状態になっている」、「米国政府が半導体補助金支給を前提として提示した『(中国など一部国家での)半導体生産量拡大は5%まで』を守るには、国内企業としては利益の減少・赤字を受け入れなければならない」と指摘しています。それでは、今日もこれだけで恐縮ですが、皆様、良きゴールデンウィークを。次の更新は明日(5日)の11時頃になります。
※ここから追記です。本題とは離れますが、7日に予定されている日韓首脳会談、今回も共同宣言は『難しい』というニュースがありました。4日16時時点の情報ですので『無し確定』ではないでしょうけど・・事前調整がうまくいってない気がします。また、一部のメディアから、「処理水関連が議題になる可能性が高い」と報じています。この件、いままでは「首脳会談の議題にはならない、なったこともない」というスタンスだったので、いままでとはちょっと異なるスタンスです。もうちょっと様子見して、明日詳しくお伝えします。
おかげさまで、新刊が発売中です!今回は、マンションを買わないと『貴族』になれないと信じられている、不思議な社会の話です。詳しくは、新刊・準新刊紹介エントリーを御覧ください。経済専門書ではありませんが、ブログに思いのままに書けなかったその不思議な「心理」も含めて、自分なりに率直に書き上げました。以下の「お知らせ」から、ぜひ御覧ください。ありがとうございます!
本エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2023年3月1日)からですが、<韓国の借金経済(扶桑社新書)>です。本書は経済専門書ではありませんが、家計債務問題の現状を現すデータとともに、「なぜ、マンションを買えば貴族になれるのか」たる社会心理を、自分なりに考察した本です。・準新刊として、文在寅政権の任期末と尹錫悦政権の政策を並べ、対日、対米、対中、対北においてどんな政策を取っているのかを考察した<尹錫悦大統領の仮面 (扶桑社新書)>、帰化を進めている私の率直な気持ちを書いた<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>も発売中です。・新刊・準新刊の詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。 ・本当に、本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。