これから1年の間(来年上半期まで)、契約期間が終わる傳貰(ジョンセ)保証金が、約30兆円規模だとする記事がありました。ソースは文化日報です。これは大家が入居者に『返す』ことを前提にした預り金であり、これ、ちゃんと返せるのかという懸念が提起されています。契約延長もあるので30兆円を一気に返すことにはならないでしょうけど、なんというか、もう限界かな、な気もします。本ブログだけでなく、韓国関連ブログや書籍において定番メニューである「傳貰(ジョンセ)」システム。もともとはある程度のまとまった金額のジョンセ保証金を大家に『預けて』、家を借りる制度。そう、経済成長や不動産市場などが正常的に機能していた頃には、そこそこうまく機能していました。
しかし、不動産投資などのために、入居者から預かった金を使うのが「スタンダード」になっている今、ジョンセ価格と家の価格がほぼ同じ、さらには『借りるより買うほうが安い』価格の物件まで出てくるようになり、この保証金をどうするのかが、経済、金融的に大きなイシューとなっています。大家からすると「預り金」となるジョンセ保証金。入居者が退去するときに返さないといけませんが、その金額が詳しくどれくらいの規模なのかは、集計がありません。政府からすると「個人の取り引き」だからです。1000兆ウォン(約100兆円)は軽く超えるだろう、と言われているだけです。ただ、ある程度の推算はできます。
ジョンセ契約は概ね2年契約になるので、2年前の契約のときに動いたお金(全てが把握できるわけではないでしょうけど)を調べると、大まかな数字は分かります。もちろん2年経ったからって退去すると決まっているわけではないので、延長する人も大勢いるでしょう。ただ、この推定値が大きければ、その分、大家が入居者に返すべき金額も大きくなると見るのが一般的です。それに、入居者が出ていくときには、新しい入居者からジョンセ保証金を預かって、それで前の入居者の分を返すのが『普通』になっている昨今。ジョンセ価格が大幅に下落しているので、新しい入居者が見つかったとしても、前の入居者から預かった分を全額返すのは難しくなります。
わかりやすく言えば、Aさんから1億ウォン預かって家を貸したけど、その1億は投機などに使ってしまいました。2年後、Aさんは、もう引っ越すから1億返してくださいと言っています。大家は、新しい入居者Bさんから1億ウォンをジョンセ保証金として預からないと、その分が返せません。でも、ジョンセ保証金価格が下がっています。ジョンセ価格は住宅公示価格の影響を受けますが、その公示価格が18.1%も下がっています。これについては3月25日のエントリーも参考にしてください。仮定として、Bさんの保証金は8000万ウォンだったとします。この場合、2000万ウォンをどうするのか。そういう記事です。個人的に前から「なんとか歯車は回っているものの、少しでもズレると、一気に止まるぞ」と思っていた案件でもありますし、以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・今年下半期から来年上半期までの1年の間に契約が満了するジョンセ保証金総額が、マンション228兆ウォンを含めて300兆ウォンを超え、最大規模になると分析された。ジョンセ価格の下落に伴う問題が現実化し、預り金が返せなくなるのではないかという懸念が大きくなりつつある。19日、不動産情報分析会社ジクバンによると、「今年下半期に契約が終了(契約期間2年基準)」となる2021年下半期の全国住宅ジョンセ取引総額は、149兆800億ウォンと集計された。「2024年に契約期間が終わる」昨年上半期のジョンセ取引総額は153兆900億ウォンと調査された。つまり、今後1年間、契約が満了する保証金の総額が302兆1700億ウォンに達する。これは去る2011年集計が始まってから最も大きい金額だ。また、今年1~3月期住宅担保ローン750兆2000億ウォンの40.3%、家計信用1835兆9000億ウォンの16.3%に該当する(文化日報)・・>>
金額が大きすぎで感覚がおかしくなりそうではありますが・・率直に言って、ジョンセ保証金が住宅価格の3分の2を超えた時点で、この制度は意味をなくしていたと思っています。もし今回のピンチを乗り越えることがあったとしても、そう長くは続けられないでしょう。引用部分にはありませんが、記事に意見を出している専門家たちも概ね似たような主張で、関連シンクタンクの人は、マンションの場合は2年前(ジョンセ契約時点)より13.5%もジョンセ価格が下落した状況であり、これだと保証金(預り金)未返還リスクが大きくなる、と指摘しています。今年の下半期に住宅価格が明らかに上昇するのを期待するしかない、という声もありますが・・はてさて。
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