変わらない、「高価ブランド」を「自分の強さ」「正しい自分」とする風潮

コスパという言葉が当たり前のようになっている昨今。コスパを「安いのがいい」という意味にする人たちもいますが、個人的にコストパフォーマンスとは、安いか高いかではなく、自分なりのものの価値判断に関わる単語であると思っており、好感が持てます。相応の価値を求めて高級、または高性能の製品を購入するのは何も問題ありませんし、それらは必然的に『高価』になるので、それもまたコストパフォーマンスの一環だと見ることもできるでしょう。でも、本ブログで取り上げている時点で、本エントリーはそんな話ではありません。

大して高収入でもないのに、『高価ブランド品』を、妙な理由で購入してしまう人たちもいます。これ、もはや韓国では社会問題です。1月のエントリーでも、ブランド品を持っているとSNSに写真を投稿するためにブランド品の「ボックス」だけを数万円で購入する人たちがいる・・と書いたことがありますが、今日、国民日報が同じテーマのシリーズ記事(ソースにしたのは記事1記事2です)を載せました。いくつかの記事に分かれていますが、基本的に、高価ブランド品を『私の強さ』『正しい(あるべき?)私』と思う人たちが多い、というのです。以下、各記事を読んで気になった部分を紹介します。

 

まず「代名詞」となっているのが輸入車、ベンツやBMWです。印象的だったのは、輸入中古車を販売するある人の話。1ヶ月に1~2件はかならず「無理して購入する」青年が来るので、メンテナンスなどにかなりお金がかかるを説明しながら、「あんたね、これ乗ってもね、そう『強く』は見えないよ」と、買うなと説得するといいます。でも、相手は聞こうとせずそのまま購入、1年後にはまた売りに出す、とのことでして。しかも、売る方はまだマシです。記事によると、車が高価であればあるほど、価格が下がったあとに売っても債務を返済できなくなるので、売りにすら出さない人も多いと指摘しています。全部割賦で1億ウォンの輸入車を買うと、3ヶ月延滞するためで返済金は1000万ウォンに達するそうです。

 

しかし、私が記事でもっとも気になったのは、「強い」という単語です。輸入車に乗るのが、「強く見える」からでしょうか。強いという概念を根本的に間違っているような気がします。RPGの高価装備じゃあるまいし。輸入車ディーラーたちは、すでに10年以上前から「家を買えないから良い車を追い求める人が増えたな」と思っていた、との記述もあります。ワンルーム、コシウォン(考試院)に住みながら輸入セダンを買う人たちのことは、もはや話のネタにすらならない、とも。別記事には、母の金で数十万円のブランド品を買った人の話が出てきます。彼は、初めて高価ブランド品を買ったとき、『やっと正しい自分が見えた』と話しています。それから、母の金でものすごい高価ブランド品を買っている、と。同じく、『正しい』の意味を間違っているとしか思えません。さらに、『正しい』を『あるべき』にしてみると、ブランド品だけでなく、いままで本ブログで書いてきた韓国社会の根本的な考え方にピッタリマッチする気がします。

記事(この文章は輸入車関連ですが、趣旨的に高価ブランド品全般的にも適用できそうです)は、「すでに青年層を中心に、高価ブランド品は「スペック(その人の性能)」となっているため、この風潮は簡単には変わらないだろう、としています。無理をして購入し、そのためにランチに困ることがあっても、『高価ブランド品を持っていない』という理由で見下されるよりはまだマシだ、と思っている人たちが多い、と。ここからは<<~>>で引用してみます。

 

<<・・高級品を中心とした消費傾向の中では、自分と他人に対する妙な視覚差が発見される。高価ブランド品購入経験のある65人を対象にアンケート調査を行った。回答者は、本人が高級品を購入した場合には『私の満足感のために買ったもの』と回答(64.6%)したが、他人が高級品を購入した場合については『周辺の視線を意識して買ったもの』と回答(70.8%) した。自分の満足と他人の視線は、実はそこまで区別されるものでもない。現代社会を「消費社会」と規定したキム・ギョンジャ、カトリック大学消費学科教授は、「自分の満足で消費したとする場合にも、『じゃ、なぜ満足するのか』と尋ねれば、『他人のこと木にせずに済むし、堂々とできるから』という返事しか出てこない」と話した(国民日報)・・>>

 

 

おかげさまで、新刊が発売中です!今回は、マンションを買わないと『貴族』になれないと信じられている、不思議な社会の話です。詳しくは、新刊・準新刊紹介エントリーを御覧ください。経済専門書ではありませんが、ブログに思いのままに書けなかったその不思議な「心理」も含めて、自分なりに率直に書き上げました。以下の「お知らせ」から、ぜひ御覧ください。ありがとうございます

・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。

   ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2023年3月1日)からですが、<韓国の借金経済(扶桑社新書)>です。本書は経済専門書ではありませんが、家計債務問題の現状を現すデータとともに、「なぜ、マンションを買えば貴族になれるのか」たる社会心理を、自分なりに考察した本です。・新刊として、文在寅政権の任期末と尹錫悦政権の政策を並べ、対日、対米、対中、対北においてどんな政策を取っているのかを考察した<尹錫悦大統領の仮面 (扶桑社新書)>、帰化を進めている私の率直な気持ちを書いた<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>も発売中です。・刊・準新刊の詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・ンシアリーはツイッターをやっています。ほとんどは更新告知ですが、たまに写真などを載せたりもします ・当に、本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。