韓国メディア「事実上『返せない』債務がどんどん増えている」

韓国銀行が、家計や自営業の債務関連などでその脆弱さを指摘する報告書を出したこともあり、久しぶりに家計、自営業の債務関連記事が一気に増えました。本エントリーはヘラルド経済東亜日報MBCをソース記事にしています。いろいろ大変な数値が出てきますが、それらの記事の中、個人的に特に気になったのは、青年関連です。脆弱借主(多重債務者など)の中、青年層とされる20~30代が「銀行でない機関(貯蓄銀行と言いますが、実は銀行ではありません)」から借りた債務が急増、2019年に比べると5割以上も増加している、とのことでして。

青年関連は、ちょうどこの前BMWとかベンツとか、高価ブランド品の話をしたばかりだから、というのもあります。また、これは記事に書いてあることではありませんが、青年層の多重債務者となると、貯蓄銀行で借りることができただけでラッキーです。本ブログの読者さんならご存知でしょうけど、韓国は普通の銀行を「第1金融圏」、貯蓄銀行などを「第2金融圏」、合法の貸付(貸金)業者を「第3金融圏」とします。第1は金利が低いけど借りるのが難しく、第2、第3は金利は高いけどその分ハードルが低いです。家計債務がGDPを超える、GDP比家計債務が世界1位(機関によっては3位)の「債務的にG1」ならではの構造です。多重債務の20~30代なら、貯蓄銀行で借りるのも難しいでしょう。そんな中、貸金大手が撤収することになって・・第3でも借りられないなら、残るはサグミュン(私的な金融)、サチェ(私的な債券)とよばれる違法金融業者だけです。以下、各紙、<<~>>で引用してみます。特に、ヘラルド経済の最後の一行は重みがあります。

 

<<・・「最高金利19.99%」の貯蓄銀行で、低所得・低信用の20代、30代の脆弱借主の青年層が借りた債務が、2019年末より1.5倍増えたことが分かった。60~70世代の老年層脆弱借主も、貯蓄銀行での融資が同じ期間1.3倍以上に増えた。金利と物価が同時に上がり、新型コロナ対策などで小規模自営業が倒れる間、雇用を見つけるのが難しい青年層と老年層が、ノンバンクの高金利融資商品で生活を続けたものと解釈される。問題は、景気低迷が続き、「返済できない借金」が増えている点だ・・

・・青年層脆弱借主たちが貯蓄銀行から受けたローンの規模は、2019年末比51.6%急上昇し、増加幅が最も大きかった。 銀行など第1金融圏で融資を受けられなかった青年たちが、金利の高い貯蓄銀行を訪れたものとみられる。青年層の次には60~70代の脆弱車主の貯蓄銀行ローン規模も急増した。60~70代脆弱借主ローン増加率は36.2%で、全体増加率32.5%を上回った。脆弱借主とは、低信用・低所得・多重債務の借主を意味する。最高金利が20%に迫るほどの高金利商品を扱う貯蓄銀行で、所得が少なく、信用も低い脆弱借主への貸出規模が急増したのは、事実上、『利子も負けない借金がそれだけ増加した』のと同じだ(ヘラルド経済)・・>>

 

こんな中、第3金融圏最大手「ラッシュアンドキャッシュ」が、親企業が貯蓄銀行を引受したことで、事業をたたむことになりました。予定より6ヶ月前倒しで、今年年末に。ここからは東亜日報です。 <<・・問題は、貸付業者が融資を減らし、低信用者が合法的に急銭(※急に必要な資金)を調達するのがますます難しくなるということだ。ラッシュアンドキャッシュの顧客を他の貸付業社が吸収するのも容易ではない。ある貸付業界関係者は、「こちらの利用者はリスクが高く、不実化(不良化)の可能性が高い顧客であり、他の企業が彼らの融資需要を吸収するには限界がある」とし、「貸付業界全体が萎縮し、低信用者融資がますます困難になるだろう 」と分析した・・>>

 

この前、自営業ピンチをエントリーしたばかりですが・・家計債務関連でも、やはり大して変わっていないようです。なんというか、大変ですね。大金だけが動いているわけではありません。例の「ブランド品ほしい」関連でもありますが、MBCによると、たとえば「限定版スニーカー買いたい」と願っている青少年層をメインターゲットにした年利7300%のサグミュン業者が捕まった、とのことでして。

<<・・お金を借りるのが難しい青年たちをターゲットにするサグミュンが増えています。10万ウォン、20万ウォンが必要な青少年たちが騙されることが多くなっています。手数料は元金の20%、期間は3日。10万ウォン程度を一週間以内に返す条件で貸す、いわゆる「代理入金」広告です。通常、貸出金の20~50%を手数料で要求されます。限定版スニーカーを買おうとしたある青年は、ここに電話して4日間10万ウォンを借りました。元金10万ウォンに手数料4万ウォンまで加えて14万ウォン。しかし、一日遅れて入金すると、業者は時間当たり2千ウォンの『遅刻費用』をつけて合計20万ウォンを受け取りました。年利で見ると7300%です(MBC)・・>> 

20日のブランドエントリーと繋げてみると、「強く」「正しく」見せるために7300%の利率が必要なのでしょうか。もうダークファンタジー世界としか言いようがありません。今日の更新はこれだけです。次の更新は、明日の11時頃になります。

 

 

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