韓国の経済メディアに、失われた30年という表現、アベノミクス、そして最近の日本経済の動きに関して、珍しい記事がありました。マネートゥデイというメディアで、韓国外国語大学の「融合日本地域学部」イチャンミン教授の見解がメインです。「珍しい」とした時点で読者の方々もお気づきでしょうけど、「日本に対する認識には、根拠の無いものが多い」、という趣旨です。たとえば、2年前、ついに日本に逆転できたという話が増えたけど、実はそれは(2020年4~6月期、新型コロナなどの経済影響が強く現れたときに)日本側から「自分への戒め」として出てきた言葉なのに、それをそのまま信じて、そんな話が流行ってしまった、というのです。
細かくは、「よくデジタル化が遅れているとかいうけどそれは公共部門での話で、それも新型コロナなどをきっかけに流れが変わっている」、「失われた30年というけど、実際に経済がダメージを受けたのは10年間で、そのおかげで体質そのものが改善された」、「アベノミクスはいわゆる『低温好況(家計からするとパッとしないけど、決して不況ではない状態を維持できた)』」、「日本の新型コロナ対策は、世界的に高い評価を受けた」などなど、多くの話が出てきますが、本エントリーでは「失われた◯年」の部分をメインで引用してみます。以下、<<~>>が引用部部となります。
<<・・2年前の2021年、「韓日逆転」という言葉が流行した。実は日本が自ら警戒心を持つためにそんな話をしたわけだが、韓国ではいよいよ韓国が日本よりも豊かに暮らす国になり、経済回復の見通しがない日本は今後ずっと私たちを見上げるだろうという、甘い言葉が溢れ出した。そんな日本とはあえて経済協力のようなこともする必要がない、とも。ところが、わずか2年経ったいま、日本の経済成長率が25年ぶりに私たちを追い越すというニュースに、再び「韓日逆転」が話題になったりする・・
・・(※日本に対する認識には、いろいろ根拠の乏しい見解が多いとしながら、以下、イ教授の見解)私たちが日本経済を話すときに失われた30年とよく言うけど、それはただのレトリックだと思います。時期を分けて見る必要があります・・本当に失われた期間もあるけど、資産市場のバブルが消えたものの実物経済にこれといった打撃はなく、アベノミックスのような、実験、構造変化と回復の期間もあります。日本の失われた時間を30年まで延長することは、アベノミックスにより雇用、投資、消費など民間部門などが全く良くならなかったという話ですが、これは事実とは異なります。私は、この時がそれまでの日本経済の体質が変わる期間だったと思います。
日本経済において本当に失われた時期は、1997年の東アジア通貨危機から2011年の東日本大震災の前後までです。レトリックではなく、本当にデフレが発生しました。グローバル金融危機から抜け出すことも前の2011年には東日本大震災が起きました。10年以上の期間、需要と供給の両方がダメージを受けました。政治的にも、小泉首相以来6年間で6人の首相が変わりました。2010年代に入ると、東芝の粉飾会計、三菱自動車の燃費問題など企業のモラルヘザード問題が続きました・・・・一方、同時期にトヨタ、ソニー、日立などの企業は世代交代をしたり、主力事業を変え始めました。リーダーシップと組織文化が変わり、企業は変革できました。
青木昌彦スタンフォード大学教授は、古い構造が新しいパラダイムに変わるには、一世代、すなわち30年かかると言いました。なぜなら、人が変わらなければならないからです。結局、この言葉が正しかったようです。2010年代に構造変化に成功した企業は、2020年代に入って成果が出ており、成功しなかった企業は引き続き淘汰されています。完全な体質改善に成功したソニーや日立など企業の実績向上が、今や日本経済の回復をリードしています。
2020年、日本の4~6月期の経済成長率がマイナス7.9%を記録しました。(※しかし)私たちは注目しませんでしたが、新型コロナパンデミックの状況で、ロックダウンせずに最小限の経済的な活動を営んで回復しながら、亡くなった方や集中治療を必要とする患者を管理する日本モデルは、当時、世界的に高い評価を受けました。そして、新型コロナ関連の重点措置を昨年すべて終え、日本経済は回復傾向に転換し始めました。その頃に就任した岸田首相は、経済政策に「総供給」を重要視します。「Modern Supply-Side Economics」(MSSE・現代供給重視経済学)という新しい供給経済学の政策とよく似ています。 例えば、低所得層の養育費負担を軽減し、彼らが労働供給を増やすことができるようにしたり、先端産業に関連した社会間接資本(SOC)インフラ投資を増やすなど、政府が積極的な産業政策を通じて総供給に影響を与える政策です(マネートゥデイ)・・>>
記事は、まだ様子見の期間が必要かもしれないけど、一貫して「日本経済は構造変化を経て、もう回復期に入ろうとしている」としています。特に、最近、賃金と物価が上がる現象に注目しています。物価が上がることそのものに慣れていない世代もあるけど、それは結局は経済において良い影響を及ぼすだろう、という趣旨です。日本経済、特にアベノミクス関連で肯定的な評価を出すのは、韓国メディアではとてもめずらしいことです。 さて、ここでまた告知ですが・・月曜からこんな告知で申し訳ございませんが、今日~明日、また更新を休むことになりました。伊勢参りしてきたばかりですが、なかなか良い条件でツアーが出ていたので、ちょっと群馬県のほうに行ってまいります。次の更新は、27日(水曜日)の朝11時頃になります。
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