イスラエル・ハマス事態、地上軍投入の話もあるし、せめて民間人の犠牲が増えないことを願うばかりです。この前「北朝鮮の長射程砲1万6000発」エントリーもそうですが、(※未読の方は、よろしければセットでお読みください)今回のハマス事態で、軍事専門家による北朝鮮関連の記事・寄稿も増えてきました。文在寅政権が北朝鮮と結んだ(2018年9月南北首脳会談)南北軍事分野合意書、通称9・19合意が、もし北朝鮮が今回のハマスのような戦略を取った場合、なによりの障害物になる、とも。9・19合意の内容の中でももっとも有名なのが、「非武装地帯をはじめとする対峙地域での軍事的敵対関係の終息」です。
中には、「朝鮮半島全地域で実質的な戦争リスクをなくす」という内容もあって、個人的にびっくりしました。「実質的戦争リスク(リスクの要因、原因など)」は、北朝鮮が在韓米軍を迂回的に表現するフレーズだからです。どっちがリスクなんだよ、と。この合意により、非武装地帯は飛行禁止区域とされました。2018年10月13日朝鮮日報は、米軍の同意も得ず、軍事境界線南北10~40km地域が、飛行禁止、すなわち偵察や情報収集もできなくなった、と報じています。
韓国軍の無人偵察機のほとんどは、探知可能距離が10km~20kmなので、この軍事合意により、事実上、使えなくなってしまいました。ちなみに、射程にもよりますが、合意対象範囲内では射撃訓練もできなくなっています。いまこれがどこまで守られているかはわかりませんが、まだ919合意は破棄できないでいます(与党・野党が対立しています)。とりあえず、さすがムンたん、といったところです。以下、2018年の朝鮮日報と、今日の中央日報の記事を<<~>>で引用してみます。中央日報の記事は、韓国国家戦略研究院というシンクタンクのバンジョングァン氏が書いたもので、氏は少将出身です。
<<・・南北軍事合意により、軍事境界線の南北に10〜40㎞以内が飛行禁止区域に設定された。このエリアでの空中偵察を禁止することにしたのだ。北朝鮮は休戦線付近に100万人を超える兵力と1100門の長射程砲など火力のほとんどを配置している。このような北朝鮮軍の挑発の兆候を事前に捕捉するために、私たちの軍は無人偵察機を導入したが、それらほとんどの検出距離が10〜20㎞であるため、事実上使えなくなってしまった。従来のRF-16偵察機などの探知距離も制限を受けることになった。それらの情報がなければ、精密打撃兵器システムも意味がない。侵略を防ぎ、平和を守るためには、まずなにより北朝鮮軍の動向をリアルタイムに把握しなければならない。これが難しくなったのだ(朝鮮日報2018年10月13日)・・>>
<<・・わが国民の大半が移動する名節(※旧暦1月1日ソル、旧暦8月15日チュソクなど)連休に北朝鮮軍が動けば、奇襲効果は最大化されるだろう。攻撃は非対称的に始まるだろう。首都圏に向けた340門の長射程砲で時間当たり約1万6000発を発射できる。約20万人の特殊作戦兵力が、AN-2(※軍用複葉機)、ホバークラフトなどに乗って韓国の後方に入ってくることもできる。韓国軍500MDと同様のヘリコプター(1980年代に80余機が密輸されており、韓国軍標識である)、民間同好会でも活用する動力パラグライダーなどは、識別をさらに難しくするだろう・・
・・北朝鮮軍の兵力は128万人に達する。 レーニンは「量はそれ自体で質を含んでいる」と述べた。開戦初期、ダメージを甘受して兵力を集中すれば、接境地域の一部を占領することもできる。核兵器及び占領地域住民を人質にして交渉を要求する可能性もある。このようなシナリオは単なる想像ではなく、情報機関や専門家グループでもその可能性を認めている。私たちの対策はどうか。 まず、「情報」で失敗しないことが重要だ。偵察衛星を含む高度な情報資産は必要だが、技術への過度な自信は危険だ。もっと基礎的な手段によって破られるからだ。9・19軍事合意の「飛行禁止区域」は、接境地域情報収集を不可能にした。北朝鮮の意図は善良なものだと前提したのだ。しかし、意図はいつでも変わることができる。だから情報は相手の能力を中心に判断しなければならない(中央日報)・・>>
とはいえ、「大統領」だけの問題でもないでしょう。こういうのは。2018年当時、韓国では南北首脳会談で盛り上がっていましたし、朝鮮半島平和ムードに日本も乗り遅れてはならないとか、そんな記事も結構出ていました。この軍事合意も、朝鮮戦争以降の最大の成果だとか、そういう流れになって、文大統領の支持率もかなり上がったと記憶しています。
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